第5話 眼鏡はやめて

「あれ?お前なんかイケメンじゃん」とあおいは笑った。

大塚の人生で「イケメン」と呼ばれたことがあっただろうか?あるわけがない。


「視力の方は…?」

「0.005だよ。眼鏡だせぇから着けたくねぇの」とあおいはバッグから眼鏡を取り出そうとしたが全力で止めた。

なぜか土屋も焦っている。まさかとは思うが、幼馴染の土屋も素顔を隠しているのかもしれない。


「あんだよいつも!」あおいは不快感を露わにした。

「あおいは眼鏡が驚くほど似合わないでごんす!!」

「そっか?小学ん時から…本当かなー?」あおいは手鏡を取り出し、鏡に押し付けるように顔を近付ける。


大塚も土屋もその鏡になりたい。二人は目を合わせて歯をキラリと輝かせた。


「んで?ここは何部なんだ?」あおいは目を細め、看板を見る。

「や、野球部でごわす!」土屋はとっさに嘘をついたがそんな事あるわけがない。ここはただの「ムッツリ部」だ。

主な部活動はエロ本と女子を観察してムッツリするだけなど言えるわけがない。

小さく盛り上がった股間をパンツ越しに、あおいの右手に握らせる。

「こここ、これがバットです!」これは賭けだ。

「なんだこりゃ。細くて小さいバッドだな。しかもなんか温くてキモい」

「い、今はこれが流行りでごわすよ!これはボールでごわす!」土屋はスボンを脱ぎ、玉を左手に持たせた。

「今はこんなので野球ができるのか?」二人とも恍惚の表情で悦に入っており聞いていない。


「ごちそうさまでした…」、でごわす」

「…?まあいいや。暇だから入ってやるよ」


その日二人はポールを何度も昇り降りした。


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