第25話 ゾーイは制服を着るのを嫌がった
ザンジバル島から持ち込んだ荷物の整理、買い出しや諸々の雑事がいちだんらくして、いよいよ新生活が始まるという前夜だった。
赤煉瓦の棟に集まって、みんなで夕食を作りながらギンがゾーイに問いかける。
「しつこく聞いて悪いが、とにかくどうしても嫌なんだな?」
「……着ない」
ジャガイモの皮を手際良くむきながら彼女が答える。
ゾーイは制服を着るのを嫌がった。高等部にあたるクラスには制服の着用が義務付けられている。夕食の支度をしながら、ギンが繰り返し問いただしたり理由を聞いても、言を左右にしたり口ごもったりしながらも、頑固に嫌がった。
ミューズの制服は男子生徒は典雅、女子生徒は洗練されて可愛らしく、アレクサンドリア庶民の憧れを引いている。ゾーイの美意識に適わないというわけでもなさそうだが。
基本的にはよくわからないにしても、もごもご話す内容を総合すると、ゾーイの主張は制服を着ると呪われるというものだった。本当にそう思っているのかはともかく、とにかく頑なに嫌がった。
そこまで嫌がられたらもうどうしようもない。ギンが学長に掛け合って特別な許可を得てみよう、ということで話は落ちついた。
ゾーイはレンジから見ても普段は危なっかしいほど素直な娘だけど、たまになにを考えているかわからない神秘の趣を醸しだすことがある。そういえばボブマーリー族長が霊感が強過ぎると心配していたな。
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