第25話 パミュルからの願い

 ミリムとは協会の建物内で別れて、俺達は家へと戻るが足取りは重かった。自分が無能なのは判っているから仲間が出来ても、見捨てられいずれは1人になるんだと理解はしていた。

 けど……実際にその時が来ると、こんなにも心苦しい物なのかと打ちのめされた。


 家に着いてハリエットさんに心配を掛けたくないので、何とか気持ちを切り替えようとすると、ハリエットさんが後ろから抱きしめてきた。


「ウォード、無理をしないで良いのよ?」

「えっ、無理なんてしてませんよ?」

「あの時と同じ。初めてウォードを家に招いた時にも、そんな感じに取り繕っていたよ。ずっと一緒に暮らしてきてたから、無理をしてる事くらいは判るのよ?」

「参ったな……何でもお見通りなんですね……」


 少し間をおいてから、俺は想いを打ち明けた。


「判ってたんです。俺からミリムが離れていく事は、パーティーを組み始めた時から判ってました……覚悟も出来てたけど、実際に去って行かれると覚悟をしてても辛いです……」

「それでいいの。全部吐き出したら少しは気が楽になるから」


 ハリエットさんに抱きしめられたまま、俺は声をあげて泣きながら想いの全てを吐き出した……


 ミリムの事が本当に好きだった事、自分には人を惹きつける力がないから、仲間を得ても今回のように失うんじゃないかと思った事、そしてハリエットさんも俺の元を去って行くんじゃないかと思ってる事を伝えた。


「ウォード、ミリムの事があったから、信じてと言っても無理かも知れないけど、私はずっとウォードと一緒に居るからね。それに、お母様も傍に居てくれるでしょ?」

「そうよ、私は命が尽きるまでウォードから離れたりしないわよ」

「ハリエットさん、母さん……ありがとう。想った事を言い切ったら凄く楽になったよ。遅くなっちゃったけご飯の準備をしないとね。今日は僕が作るから2人は待っててね」

「「ありがとう♪」」


 俺は涙を拭いた後に、キッチンへ向かって夕食を作り始めた。ハリエットさんと母さんは2人で何か話してるみたいだけど、料理を作ってる俺の下までは聞こえなかった。


「可哀想なウォード、ミリムはあんなヤツのどこに惹かれたのかしら?」

「私もお母様と同意見です。少し腕が立つ程度でせいぜい2流の下のハンターですよ」

「あまり再会したくはないけど、その時は見返してやりたいわね」

「私とお母様で支えて、ウォードのスタイルが正しかったと思い知らせてやりましょう!」

「そうね、明日からあなたと私でミリムの居ない穴を埋めるわよ♪」

「はい、お母様!」

「それと、お母様じゃなくてパミュルで良いわよ。他人行儀は辞めないとね!」

「はい、パミュルさん♪」

「よろしい!あと1つお願いがあるのよ。今日は一緒に寝て慰めてあげて欲しいの」

「えっと、添い寝という事ですよね?」

「あらあら、その言葉の通りよ。実はねウォードは朝になると1人前の男のモノになるのよ♪」

「えっ!そうなんですか?でも、私で大丈夫でしょうか?」

「それっぽく接してみて反応が無ければ添い寝をすれば良いのよ♪」

「判りました!あっ、最後までする訳じゃないですよね?」

「それはあなたとウォード次第かな(笑)」

「そんな……もし求められたら最後まで……」


 ハリエットは色々な事を想像して顔が熱くなってしまう。そんな時にウォードから声を掛けられたので、驚いて返事の声が上擦ってしまう。


「夕食の用意が出来たよ~!」

「やっ、あっ、すぐ行くね♪」


 ミリムが居なくなって少し寂しい食事になったけど、ハリエットさんの妙なテンションが、俺を元気付けようと頑張ってくれてるんだと感謝しながら食事をとった。

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