第2話 叩き潰された林檎
猫はこの街では太古の時代から神だった。そもそもこの街では人間が住みつく以前から猫たちが生活と文化の覇権を握っており、笛も吹いたし土器も作った。その1500年あとに、迷惑なことに川から壺が流れてきてその中に小さい人間のつがいが入っていた。小さい人間のつがいは見た目は精霊のように可愛いかもしれないが、頭が悪いしいろいろ迷惑だった。その危険に気づいた大猫が勇敢な足で、壺が着陸したUFOのように陸で蓋を開けた瞬間に人間を踏み潰そうとしたが、つがいは物凄いスピードで叫びながら森に逃げた。そこから復讐の歴史が連綿と繋がり、一人きりになった少女の困った父親が誕生することになる。あの壺がすべての悪の源流なのだ。あんな壺なんて流れてこなければよかった。人間が考えて信仰している神はすべて偽善者だが、人間によると、その神が川に壺を流したらしいと森に保存されてあった羊皮紙に書いてあった。だが本物の神は猫であり、少女の父親のjgwdpmlzzという狂った悪が誕生するならば人間の考えている神は悪だ。少女の母親はしかし、人間であるにもかかわらず、赤ん坊の頃から猫に好かれた。母親は極度の人間嫌いにだけ備わる不思議な眼をした異常な美人だったが、最初はシロバナニガナという植物に森で求婚され、シロバナニガナを笑いながら粉々にすり潰し、次に、庭のハシバミの実が恥ずかしさから赤面してすべて落下し、それを笑いながら燃やし、台所の林檎までが色めき立ったので林檎を棒で笑いながら叩き潰した。悪魔のような悪戯というか怒りに共感した小猫たちが、理由はわからないが籠いっぱいに入っていたのにすべて叩き潰された林檎を、布巾と塵取りで丁寧に掃除した。
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