第319話 最後のダンジョン攻略はパーティ分裂のあとで
その日、俺たちはそれぞれダンジョンに向けて出発することになった。
各国の協力のおかげで転移門を設置できたため、ギリギリまでレベル上げすることができた。
ポチから懐中時計を受け取る。
魔王の四肢の回収は四日後の午後二十時に同時に行う。
トーラ王国のダンジョンはミスラとリーナ。後衛のソロはきついが、この二人だったら行けると判断。
リーナがサラマンダーを召喚し、そのサラマンダーに前衛の役割をしてもらう。
「ミスラ、リーナ。そっちは任せた」
「……ん、任せて。ヨユー」
「はい、このダンジョンは四つの中で一番階層が低いですから大丈夫ですよ」
「ああ、二人なら余裕で大丈夫だな。魔法コンビで蹂躙してやれ」
ミスラとリーナが転移門を潜ってトーラ王国のダンジョンに向かった。
トランデル王国のダンジョンはハスティアとメンフィスだ。メンフィスも鍛錬場で強くなったので十分攻略が可能なレベルになっている。
「では、行きましょう、ハスティア様! 久しぶりの二人旅ですね」
「待て、メンフィス。では、行ってまいります。勇者様もご武運を」
「ハスティアの剣術には最初に出会ったときからずっと助けられているな。よろしく頼んだ。メンフィスもサポートを頼む」
ハスティアが頷き、メンフィスが「言われるまでもありません」と言って、メンフィスがハスティアの腕を取り、転移門を潜っていった。
死の大地西部のダンジョンにはカイザーがデクとターニアと三人で攻略する。元々このダンジョンの攻略をする予定だったし、今のレベルなら攻略も可能だろう。
「カイザー、お前とはいろいろあったが、助けてくれて助かる。そっちは任せたぞ」
「貴様、皇帝陛下に対して、なんだそのなれなれしい態度は!? 着ぐるみを着て私を騙していたことはまだ許していない――」
「よせ、ターニア」
ターニアに怒られたが、カイザーが待ったをかける。
「トーカ。俺は皇帝だ。他人の上に立つことを義務付けられている」
「ああ、そうだな」
「ただ、貴様が勇者というのなら、その身分は皇帝に比肩する。この戦いが終わったら対等な友になってくれ」
「お前――真顔でそんな恥ずかしいことを言うなよ」
俺はため息をつき、
「ああ、その時は一緒に酒を酌み交わそう」
と言う。
ターニアが文句を言おうとしたが、デクに取り押さえられていた。
そして、三人はダンジョンの近くの村に転移する。
最後に、ブルグ聖国の攻略は俺が行く。
ヨハルナ様から聞いた話によるとかなり広大なダンジョンな上に、地下十階層より下はほとんど攻略されていないそうなので、フットワークが軽くダンジョンナビも使える俺が適任だ。
それに、ノワールが影の中で待機してくれているから、一人ってわけじゃないしな。
ヨハルナ様もブルグ聖国で準備してくれている。
「じゃあ、行ってくる」
「こっちは俺たちに任せてくれ、町長――いや、勇者様。ゴブリンの時のようなヘマはしない」
副町長のガモンが自警団の連中と一緒に言う。
ポチの予想では、魔王が地上に出てくる時程ではないにせよ、魔物がそろそろ魔王城のダンジョンから溢れてくる。
周辺国の軍も死の大地の結界周辺に展開しているが、その範囲はとても広く、全てをフォローできない。
なので、この町を守るのは彼らの仕事だ。
元々いた自警団だけでなく、魔王城のダンジョンで保護した武道大会の参加者たちも今回の戦いに参加してくれることになった。
「ああ、任せた。町をよろしく頼む」
俺はガモンと手を握り合い、お互いの健闘を祈った。
そして――
「ご主人様……」
「アム、行ってくる」
「はい。お気をつけて」
それ以上の言葉はない。
必要なことは昨日の夜に住ませた。
今生の別れってわけじゃない。たった数日の話だ。
最後に彼女と抱き合い、キスをする。
そして、俺は一人、転移門を潜りブルグ聖国に向かった。
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