第311話 瘴気を打ち払うのは氷結させたあとで

 アムの髪の毛が白くなっている。

 白髪?

 にしては何か光っている気がする。


「お前、アムに何をした!?」

「封印が解けかかっている証拠だ。これが妖狐族の本来の姿なのだ」

「本来の姿だって?」

「その通りだ。妖狐族は本来、妖術という魔術とは違う術を使うことができる。だが、その力の全てを魔王様の結界の封印に費やしているため、妖術が一切使えなくなった」


 以前、アムに聞いたことあがった。

 妖狐族だから妖術とか使えるんじゃないかって。

 アムは妖術については何も知らなかった。

 だから、妖術はこの世界には存在しないと思っていたが、まさか、魔王を封印する結界がその妖術だったなんて。

 結界が解けかかっているから、アムに妖術が戻って髪の色が変化した。


 それはつまり、魔王の封印が解けかかっているってことか。

 直ぐにワグナーを倒さなければ。


「サンダーボルト!」


 俺は即座に魔法を放つ。

 魔法がワグナーに直撃した――が、


「なるほど、速い。だが、それだけだ」


 ダメージをほとんど受けていない。

 サンダーボルトは中級魔法の中でも威力は低い。

 ワグナーの言う通り、速いが威力が低い。

 魔力増幅を併用したが、それでもワグナーに致命的なダメージを与えるには至らない。

 やっぱり俺の武器は聖剣ってことか。

 氷帝のバルムンクを取り出す。

 

「お前の魔剣と俺の聖剣、どちらが上か決着をつけるぞ」

「望むところだ。魔王様復活の贄としてくれよう」


 先に動いたのはワグナーだった。

 黒い魔剣で俺に向かって斬りかかって来る。

 俺はそれを氷帝の剣で受け止めた。

 魔剣の黒い闇が氷帝の剣に侵食してくる。

 なんだこれ?

 いままで、黒の魔剣にこんな力はなかった。

 俺は力尽くで黒い魔剣をはねのけて後ろに跳び距離を取る。

 氷帝の剣の一部が黒く染まっていた。

 一度剣を収納し、もう一度出すが黒い部分は消えていない。

 これが全部黒く染まったらその時はどうなることやら。


「結界が解けかかっていることで本来の力を取り戻したのは妖狐族の娘だけではない。私もまた魔王様の信者である力が溢れてきている」 

「なるほど、これも魔王の力の一部ってことか。だが――ディスペル」


 俺は自分の剣に破邪魔法をかけた。

 黒い瘴気が消えうせる。


「これで元通りだな」

「ふっ、それなら今度は一気に瘴気で貴様の剣を取り込んでくれる」

「その剣でか?」


 俺はそう言ってほくそ笑む。

 ワグナーは気付いた。

 自分の剣の切っ先が氷に覆われていることに。


 お前が瘴気で俺の剣を取り込むっていうのなら、俺は氷でお前の剣を取り込んでやる。

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