第310話 ワグナーに追いつくのは八岐大蛇を倒したあとで
「ラスト一本!」
七本の首を斬り落とした。
これを斬り落としたら勝利だ。
竜が息を吸った。
吐くのブレスは炎か? それとも毒か?
どっちも俺には効かない。
と思ったとき、八岐大蛇が吐き出したのはそのどちらでもなく、咆哮だった。
なっ!? 竜の咆哮だとっ!?
竜の咆哮は相手を一時的に行動不能にする能力だ。
竜の咆哮は八岐大蛇が使う能力ではない。
下手にゲーム知識があるせいで、一瞬反応が遅れてしまう。
そして、俺の眼前にはまたも八岐大蛇の尻尾が迫ってきた。
この尻尾で弾き飛ばされたら再生前に首を落とすのが難しくなる。
マズい。
だが、その尻尾が俺に当たることはなかった。
「がっ」
黒い鎧を着たカイザーが尻尾を受け止めていた。
鎧の一部が砕けている。
肋骨の骨が折れている音が聞こえてきそうだ。
「大丈夫だ……このくらいで俺は死なん」
竜の咆哮の効果が切れた。
もう時間がない。
ここで再生されたらたまったものではない。
「助かった!」
「ぐふっ、俺を踏み台にするな!」
踏み台にされるのはグフじゃなくてドムだけどな!
俺はカイザーの肩を踏み台にして大きく前に跳ぶと、そのまま八岐大蛇の首の最後の一本を斬り落とした。
「よくやった。俺を踏み台にして仕損ずれば貴様を処刑にしていたぞ
「はいはい。ハイポーションでいいだろ。お前はこれを飲んでここで待っていてくれ」
俺はハイポーションの蓋をあけて瓶の口をカイザーの口に突っ込んだ。
虹色宝箱が出た。
百階層の完全踏破ボーナスだ。
だが、俺はそれを開けずに前に進む。
「待て、置いていくな」
「追いかけてくるなら傷を治してからにしろ」
カイザーをその場に置き去りにし、ボス部屋を抜けた。
そこは死闘が繰り広げられていたのだろう。
魔物の死骸が散らばっていた。
一体どこから魔物を取り出したのか?
その魔物の死骸の口の中に人間の腕のようなものがあった。
一瞬アムのものじゃないかと不安になったが、違った。
腕の切り口が人間のものではなく、機械のものだった。
よくわからないケーブルとかが出ている。
これは霜月の腕だ。
ワグナーの死体は見つからない。ワグナーには霜月を連れていく理由があっても、霜月がワグナーを連れていく理由はない。
勝ったのはワグナーの可能性が高いか。
「百階層で終わりってわけじゃないのか」
どうやらまだダンジョンは続くらしい。
だが、次の階層で終わりだろう。
何故だかわかる。
百一階層――そこがこのダンジョンの終着点だ。
俺は階段を下りていった。
そこで待っていたのは――
「もう来たのか」
「待たせたら悪いだろ? ワグナー」
ワグナーに向かってそう言うが、俺の視線はそのワグナーの頭上に向かう。
あれは……召喚石?
巨大な召喚石が部屋の中央に浮かんでいた。
その真下に霜月は――腕と脚をもがれて胴体と頭だけの状態で横たわっていた。
アムもいる。
気を失っているようだが、なんだ?
髪の色がいつもの茶色ではなくて白い?
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