第268話 ステンレスはステルスのあとで
小島のダンジョンで釣りを楽しんだ俺たちは、さらに奥に向かっていた。
たぶん、このダンジョンは川を下っていけば近道ができる構造になっているのだろう。
でも、ノワールで飛んで移動するには狭いし、川を凍らせることもできるだろうけれど、無意味に川の魚を殺してしまうのも申し訳ない。
なので、素直に通路を歩いて行く。
通路の壁の下部分に穴が開いている。
たぶん、ここが魔物の巣になっているだろう。
地図を見る限り、向こうに小部屋があるけれど、いまのところ魔物は留守みたいだ。
こういうとき、地図があると便利だな。
本来なら、こういう穴から突然魔物が飛び出してきたら対処が遅れるが、地図があれば魔物がどこにいるかわかるんだから。
お陰で不意打ちされる危険が――本当にないのか?
「みんな、念のために警戒してくれ」
「どうしたのですか、ご主人様」
「思い出したんだ。ダンジョンの中でも厄介な魔物、ステルスクロコダイルってワニの魔物がいるんだ。攻撃するときだけ姿を見せる厄介な敵なんだ」
「ステルスクロコダイル……魔物図鑑で見たことがあります。非常に厄介な魔物ですね」
お、この世界にもいたのか。
蒼剣と繋がり過ぎだな。
もしかして、蒼剣の制作人は元々この世界の人間だったんじゃないだろうか?
と思ったとき、それが見えた。
「――アム、後ろだっ!」
くっ、間に合わない。
俺は手を前に出し、
「サンダーボルト!」
最速の雷魔法を放つ。
感電した青色のワニが痺れて動かなくなったところで、アムがトールハンマーを振り下ろした。
「気配だけでなく臭いも感じませんでした……これがステルスクロコダイルですか」
「ああ。まさか本当にいたとはな――」
思い出してよかった。
蒼剣の知識に感謝だ。
「厄介ですね。魔物の巣がある場所は急いで通過しましょう」
「そうしたいが、ステルスクロコダイルはアドモンがいるんだ」
「「――っ!?」」
「アドモン?」
アムとミスラの目の色が変わったが、ハスティアだけは変わらない。
そういや、ハスティアと一緒にアドモン退治したことなかったか。
ということで、軽く説明をする。
「なるほど、より強い魔物が出てくるわけですね。わかりました」
物分かりがいい。
ということで、このワニの巣の通路でワニ退治だ。
「「「スポットライト!」」」
ミスラを除く三人でスポットライトを使い、ステルスクロコダイルをおびき寄せるだけでなく、
「我が名はハスティア・ジオ・イリア・クリオネル。巣穴に閉じこもってる臆病なワニどもよ、姿を現し私と戦え!」
ハスティアの名乗りが発動した。
身体能力向上だけでなく、敵に狙われやすくなる。
こういった場所では、敵をおびき寄せる効果があるらしい。
その効果があったのか、巣穴の中からそいつらが飛び出してきた。
「……アイスバレット」
ミスラの氷の礫が迫りくるステルスクロコダイルの頭蓋骨を貫いた。
俺も負けじと剣で叩き斬っていく。
アムは次々とトールハンマーでステルスクロコダイルを叩いている。
彼女の姿、まるでワニワニハプニングで遊んでいるみたいだな。
このステルスクロコダイルのアドモンの宝箱にミニゲームボックスが入っていた場合、間違いなくワニワニハプニングのゲームマシンだからな。
って一度に五匹襲い掛かってきた。
壁を背にして戦おうとすると、
「うっ」
壁の隙間から現れたワニに脚を噛まれた。
少し痛い。
と同時にステルスクロコダイルが回転をしようとするが、俺の踏ん張る力の方が強く、簡単に身体を持っていかれたりはしない。
目の前に迫っていた五匹を剣で薙ぎ払い、脚に力を入れて蹴飛ばすようにワニを巣穴から引きずり出す。
「ご主人様っ!」
アムのトールハンマーが俺に噛みついていたステルスクロコダイルの胴体を粉砕した。
「助かった――サンダーボルト!」
とハスティアを囲っていたステルスクロコダイルの一体を攻撃しつつ、俺も武器を黒鉄の槌に持ち替える。
剣よりこっちの方が戦いやすい。
そしてあらかた倒したと思ったところで、そいつが現れた。
「ご主人様、あれは――」
「ステルスクロコダイルのアドモン――ステンレスクロコダイルだ」
通称メタルワニ。
別に経験値がバカ高いわけではないが、金属でできたワニのため、非常に防御力が高い。
アイアンゴーレムなどと違って、ツルハシなどの弱点もない。
「ミスラはサポートに専念。こいつは完全魔法耐性を持ってる」
「……ん」
ミスラが一歩下がる中、俺は黒鉄のハンマーを振り下ろす。
メタルなアレと違って、素早さはあまりないが、ダメージが通ってるか正直わからん。
衝撃は凄いな。
殴られたのに怯む様子もなく、ステンレスクロコダイルは俺に向かって口を開けてその鋭い牙で噛みつこうとしてきた。
「……土よ顕現せよ」
ミスラの魔法により現れた岩がステンレスクロコダイルの口の中に入るも、それをやすやすとかみ砕く。
まるで粉砕機だな。
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