第262話 武道大会に行くのは変装のあとで
停まっていた馬車は満員で乗る事ができなかったが、次の馬車が午後にもやってくるそうだ。
チケット制らしく、人数分予約しておく。
かなり窮屈そうなので、アムたちが痴漢に遭わないか心配だ。
女性だけの馬車なんてものがあったら彼女たちにはそっちに乗ってほしいが、日本の女性専用車両のようなものはこの町にはないらしい。
ただ、走って行くには少し遠いし、こいつに乗っていくのは目立ちすぎるからな。
ノワールの控えている自分の影を見て思った。
馬車が出るまで少し時間がある。
仮眠を取りたいが、それよりも情報を集めないとな。
俺は町の布告を見に行った。
町の中央広場に掲示板があって、そこに羊皮紙が張り出されている。
国から発行されている正式な書類はこの羊皮紙が使われるらしい。
そこに書かれていたのは武道大会の概要だった。
武道大会は二週間後らしい。
「参加費無料。冒険者ランクが15以上、傭兵ランク20以上なら予選出場可能。それ以外の人は戦闘テストで一定の成績を修めれば予選に出場可能……冒険者ランク? あれ? 俺ってCランクだよな? なんで数字なんだ?」
「トウロニア帝国の冒険者のランクは数字で評価されています。冒険者ランク15はだいたいトランデル王国のCランクですね」
ハスティアが説明する。
他のところを見る。
賞金……優勝賞金1億イリス。
これは確かに凄いな。
衛兵十人分の一生分の給料相当らしい。
そして、準優勝でも1000万イリス、ベスト4で100万イリス、ベスト8で50万イリス、ベスト16で20万イリス、決勝トーナメント出場で10万イリスか。
10万イリスでも、衛兵の年収くらいの額、そこそこの大きさの武道大会の優勝賞金額くらいだな。
しかも、ベスト4まで行ったら、騎士として認められることがあるという。
なるほど、力自慢が集まるっていうのもわかる。
ちなみに、予選からの出場枠は14らしいので、既に2人は埋まっているのだろう。
あ、決勝出場者の名前も書いてるな。
えっと――
「黒騎士とイレブン」
……こいつら。
「黒騎士ってのは皇帝ですよね。イレブンは誰でしょうか?」
「霜月だよ、絶対に」
「そうなのですか?」
「ああ。イレブンは11、霜月は11月って意味だからな……」
武道大会に皇帝とロボット兵器が出場するのかよ。
たぶん、他の人は黒騎士が皇帝ってのは知らないだろうな。
でも、何の目的で?
でも、霜月と戦えるってことは、ここで機能停止に追い込めるかもしれない。
「俺たちも出場するぞ」
参加規程では魔法使いも出場できるそうだし、国外の人間も可能だとある。
まぁ、Cランク以上の人間が出れるっていうのなら、俺たち四人なら余裕で試験も突破できるだろう。
予選でどのくらいの奴が来るかはわからないが、今の俺は蒼剣の表のラスボスと戦うことくらいはできる強さになっている。
簡単に負けることはないだろう。
ただ、最低限変装をしておかないと、カイザーに見つかって失格とか言われたら困る。
「変装するか――」
カイザーは黒騎士だからこっちは白騎士とか?
真っ白な甲冑。
うん、よさそうだ。
早速武器屋に行ってみる。
「ああ、全身白の鎧だぁ? 見ればわかるだろ、んなもんねぇよ」
うん、そんな予感がした。
武器屋に行ったんだけど、甲冑どころか装備類がほとんどなかった。
武道大会に備えてみんな買っていったんだという。
これは完全に出遅れた。
「どうなさいます?」
うーん、全身鎧以外での変装。
「……郵便局ってあるか? 荷物を受け取る場所みたいなのが」
「郵便ギルドなら大きな町なら一つはあると思います」
町の人に聞いたところ、町の入り口付近にある交易所が郵便ギルドを兼ねているらしい。
そこに行った。
「すみません、こちらで荷物の受け取りができると聞いたんですが」
「はい。お名前を伺ってもよろしいですか?」
「トーカです」
「トーカ様……いいえ、そのような荷物は――」
と受付の人が言ったところで奥にいる事務員らしき人が――
「ん? おーい、これじゃないか? めっちゃ大きい荷物だが――トーカさん宛ての荷物……って、こんなんあったか?」
「あぁ、それですそれです!」
俺はそう言ってウサピーに用意してもらった偽造身分証を提出し、サインを書いて巨大段ボールを受け取った。
いやぁ、無事手に入ってよかった。
俺はその箱を持って脇道に入った。
「ご主人様、その荷物は?」
「課金アイテムだよ」
通常、課金アイテムは居宅に届くのだが、郵便局でも受け取りできる。
イベントなどで居宅に帰れないときの救済措置だ。
もしかしたらと思ったけれど、無事適応されたみたいでよかった。
俺はその箱を開けた。
アム達の表情が変わる。
うん、言いたいことはわかる。
でも、これだったら身バレの心配はないだろ?
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