第259話 ノワール搭乗は出撃メンバー決定のあとで

 シャドードラゴンのノワールも随分と成長した。

 ノワールの横に、大量に置いていたドラゴンの肉は綺麗に骨ごと食べてしまったようだ。

 ついでに、謎の卵からペットとなる魔物が生まれた。

 一匹目はスケルトンバード……骨の鳥の魔物だ。

 なぞたまガチャの中ではハズレの部類だな。

 まぁ、餌の必要がないのはありがたい。牧場の警備をしてもらおう。

 卵から産まれた魔物は首輪をしなくても言うことを聞いてくれるからな

 と牧場に放ったら、ドッグランよろしく走り回っていたパトラッシュに追いかけられていた。

 ペットに追いかけられる魔物って。


「……パトラッシュ、食べたらダメ」


 ミスラに注意されて、パトラッシュが少し悲しそうに鳴く。


「……食べないなら追いかけてもいいから」

「わふ!」


 再びパトラッシュがスケルトンバードを追いかけた。

 あんまり甘やかすなよ。

 そして、二匹目はクレオビークイーン。こっちは当たりだ。

 なぞたまガチャで出る蜂の魔物は五種類いて、その中でも最上位種。

 戦闘には参加できず連れまわすことはできないけれど、牧場に放てば勝手に繁殖して巣を作る。雄がいないのにどうやって繁殖するのかは謎だが、そうすることで定期的に蜂蜜が入手できるようになる。

 クレオビークイーンの巣で手に入るクレオハニーは、蜂蜜の中でも希少性の高い最高級の蜂蜜らしい。

 スケルトンバードの世話と蜂蜜の回収はフィリップに任せることにしよう。

 二匹にもフィリップの言うことをしっかり聞くように言って聞かせた。


 レベルを上げた。

 移動手段も得た。

 帝国に行くための準備が終わった。

 終わってしまった。


「社長、道中必要と思われる地図と身分証、食糧など揃えました。ぴょんどうぞお持ちください。ぴょん」

「ありがとう、ウサピー」

「それと、不必要なものを買い取らせてほしいです。ぴょん」


 ああ、そうだな。

 次いつ商品を持ってこれるかわからないから買い取ってもらうか。

 帝国でいったいどれだけお金を使うかわからないからな。

 さっきシャドードラゴンに食べさせたドラゴンの鱗や魔物素材。あとは――


「ドラゴンのぬいぐるみ……は部屋に飾っておくか」

「300イリスで買い取らせてもらいます。ぴょん」

「300イリスって結構な額だな。いや、クレーンゲーム1回100イリスと思ったらそのくらいか……ちなみに、いくらで売るんだ?」

「うーん、商人の力量次第です。ぴょん。とりあえず別大陸に派遣している部下の誰かに託してみますが、赤字になることはないはずです。ぴょん」


 一体いくらで売れるのか?

 売れたら教えてもらおう。

 ということで準備は終わった。


「じゃあ行くか」

「待ってください。ぴょん。アイリーナ様は残った方がいいです、ぴょん」

「ん?」

「今回、下手をしたら帝国の皇帝と戦いになります。ぴょん。一国の姫であるアイリーナ様が一緒だと外交的に問題になります」


 そう言われてみれば、俺たちは不法入国する予定だし、それにリーナを同行させるのはまずいか。


「覚悟はできています。父も――陛下も納得します」

「いやいや、それで外交状態になったら問題だ。リーナは留守番な」

「……くっ」

「お土産買って帰るから我慢してくれ。そうなるとハスティアも留守番の方がいいのか?」


 勇者マニアであっても、侯爵令嬢だしな。

 こっちも外交上の問題になるだろう。

 

「私は絶対についていきますよ」 

「ああ、大丈夫です。彼女は現在、ブルグ聖国に正式に派遣されていることになっています。ぴょん。ヨハルナ様の命令により勇者とともに行動しているので、外交上の問題になるとすればブルグ聖国との方です。ぴょん。トウロニア帝国とブルグ聖国は既に敵対関係にありますので問題ありません。ぴょん」


 問題ないのか?

 まぁ、ハスティアは止めてもついてくるだろう。

 ということで、今回は四人で行くことになった。


「ご主人様――四人でと仰っていますが、ノワールに四人乗るのは難しいのではありませんか?」


 アムが尋ねる。

 確かに、ノワールの背中に乗ろうと思えば一人、無理して二人が限度。

 四人で乗るのは難しいだろう。

 だが――


「大丈夫だ。ノワール」

「ぎゅる」


 ノワールがうつ伏せになる。

 そして、俺はそのノワールの背中に、乗れなかった。

 背中に乗ろうとしたら身体がその身体の中に入っていくからだ。


「ご主人様っ!?」


 アムが慌てて手を差し出すが、俺はその手を取るとアムをその身に引き寄せた。


「大丈夫だ。俺についてこい」


 そして、俺はノワールの中へと入っていった。

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