第255話 緊急事態の報告は帰還のあとで
とりあえず、今回の霜月の件はクレームということで問い合わせからアイリス様にお伝えしておこう。
問い合わせをしたら、今回は直ぐに連絡があった。
『近況事態であすすぐに拠点に戻ってくだあし』
……凄い、誤字だらけだ。
それでも緊急事態だということは直ぐにわかる。
拠点に戻れ……か。
さすがに無視することはできない。
ここまで来て、ダンジョンクリアはお預けか。
みんなに伝えても反対意見は出なかった。
帰還チケットを使い、拠点に戻る。
アイリス様がリビングで待っていた。
ポチ、ミケ、ウサピーの三人も一緒にいる。
アムたちがその場に跪いた。
相手はこの世界の神様だからな、当然の反応だ。
「遊佐紀さん、お待ちしておりました。皆さんもどうぞ椅子にお掛けください」
アイリス様がそう言ったことにより、皆が立ち、椅子に座る。
「それで、アイリス様。緊急事態というのは?」
「こちらをご覧ください」
アイリス様が一冊の本を取り出す。
と同時に俺が動いてそれを奪い取ろうとしたが、アイリス様がさっと避け、俺は壁に激突した。
「ご主人様、何をなさってるのですか!?」
「勇者様、女神様に対してその行動は流石にどうかと思います」
「……ん、魔導書でもなさそうだし」
「その本はなんなのですか?」
壁に激突した俺は頭を摩りながら言う。
アイリス様が持っている本――それは――
「『聖剣の蒼い大地攻略ガイド~ガルディアスカタログ~』ですよね! 俺に見せてください」
ゲームの発売から一カ月後に販売されるはずだった本だ。
聖剣の蒼い大地の公式攻略本は全部で四種類。
うち一種類はゲーム会社ではなく、ゲーム情報誌から出ている簡易攻略本。
問題は残りの三種類。
『聖剣の蒼い大地攻略ガイド~ガルディアスでの歩き方~』
マップの細かい情報や現れる魔物の情報、宝箱の情報などが書かれている。
『聖剣の蒼い大地攻略ガイド~ガルディアスでの戦い方~』
こちらは魔物の詳しい情報。出現場所、戦い方や弱点、ドロップアイテムなどが書かれている。
『聖剣の蒼い大地攻略ガイド~ガルディアスカタログ~』
最後にアイリス様が持っている攻略本には内に登場する全てのアイテムの情報が記されている。
俺も全て買うつもりでいたのだが、その前にこっちの世界に召喚されてしまった。
もう手に入らないと思っていた本が、目の前にある。
絶対に手に入れたい。
殺してでも奪い取る――とまでは言わないけれど、そのくらいの気持ちだ。
「ごめんなさい、遊佐紀様。ゲーム機を渡せないのと同様、地球の品をお渡しすることはできません。もしもトーカ様がその手に触れたらその瞬間、燃え尽きてしまいます」
「ぐぅぅ」
本に触れないのは辛い。
しかし、蒼剣の設定資料集が燃え尽きてしまうのはもっと辛い。
「ならば凝視させてください」
俺はじっと攻略本を見る。
すると、アイリス様は開いた。
「このマニュアルのロボット兵器についてもこの通り記されています」
おぉ、開いた!
凄い! ロボット兵器シリーズが全種類揃ってる。
ロボット兵器シリーズは虹色宝箱からしか出ない上に、確率も低いから四種類しか手に入らなかったんだよな。
まさか、全種類拝むことができるとは。
うわ、神無月かっけぇぇぇぇえっ! アイリス様より神様っぽいぞ。神無って書いてるのに。
如月って幽霊みたいな外見なんだな。あれか? 如月駅あたりを意識してるのか?
「遊佐紀様。興奮しているところ悪いのですが、こちらの説明をお読みください」
「すみません。ええと――」
ロボット兵器の説明。
先史文明時代の兵器だとか、ゲームシステムのアイテム説明欄に書かれていたことが書かれてい……ん?
『超圧縮核燃料により動いている』
なに、この設定?
ゲームにはそんな設定はなかったが。
核燃料――つまり、ロボット兵器は原子力エネルギーで動いているのか。
そんな設定があったのか。
って、これ、かなりヤバくないか?
もしも暴発するようなことがあったらどうなる?
「遊佐紀様が危惧していることはわかります。もしも霜月が暴走した場合、その破壊力は地球で運用されている最大火力の核兵器の十倍以上が想定されています」
「十倍以上っ!?」
それってもしも都市部で爆発したらどうなるか。
くそっ、あの時に倒しておけば。
いや、下手に衝撃を与えたら暴発していたかもしれない。
そう思うとあの時はあれでよかった。
「アイリス様、それならロボット兵器になんでバックアップ機能なんて搭載したのですか!? 死ねば終わりのこの世界では、敵対モードなんて設定しなかったのに」
「そのことなのですが、私にはバックアップデータの復元なんて設定をした覚えがないのです。そもそも、私は虹色宝箱からロボット兵器は排出されない設定にしていました。とても危険ですからね」
「え? だったら――」
「はい。何者かによって介入されたのでしょう。恐らく、邪神によって――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます