第252話 お宝探しは採取のあとで

 十六階層にやってきた。

 宝の地図の範囲はここからだ。

 宝の地図に描かれている地形の場所は現在のマップには表示されていない。

 なので、探索しないといけない。

 結構奥深くまで来たので、カイザーたちに追いつかれることもないだろう。


「バラバラに捜しますか?」

「いや、一応上級ダンジョンだからな。全員で廻ろう」


 リーナの防御力は昔のミスラを彷彿させるほどに紙装甲だからな。

 それに、石化毒を使うバジリスクなども出るからな。

 一応、全員万能薬は携帯しているけれど、それでも危険であるには変わりない。


「今回は踏破率100パーセント目指したりはしない。マップが8割埋まったら次の階層に行く」


 地図は踏破率80パーセントくらいまでは結構順調良く埋まっていくんだけど、100パーセントを目指そうと思ったら、80パーセントまで埋めるまでと同じくらいの労力が必要になる。隠し通路などがあるダンジョンなら95パーセント以上埋めてからが本番だとも言われている。

 16階層、17階層、18階層をそれぞれ80パーセント埋めて、それでも宝の地図の該当箇所が見つからなければ次は戻りながらさらに地図を埋めていく感じにする。

 反対意見は特になかった。

 

「お、採取ポイント発見! やっぱり脇道に逸れたら結構面白いものがあるな」


 薬草が結構生えている。

 このレベルの薬草だとやっぱりいまの錬金工房のレベルだと調合できないので、採取しても今すぐ使えないんだけど、やっぱり取っておきたい。

 俺って、モンスターハンターでもとりあえず集められる素材は全部集めるタイプだったからな。


「みんなで採取するぞ」

「私もですか?」

「俺の仲間になったら、採取とか採掘、伐採でも強くなるんだ。大変だと思うがやってみて」


 ということで全員で採取。

 俺は結構すんなり採取できる。採取技能レベルを上げてるからな。

 逆に採取技能ほぼゼロのリーナとハスティアは苦労していた。

 蒼剣のゲーム内でも、技能レベルが推奨値より低いと採取に時間がかかるからな。一応、その分の技能経験値が多いんだけど、やっぱり効率を考えると推奨レベルの採取が一番だけど、何事も経験だ。

 採取中に気持ち悪い巨大ムカデの魔物に襲われたりしたけれど、無事採取終了。


「……こんな草、ダンジョンの中に生えてるんですね」

「もしかしたら俺が一緒だからかもしれないな」


 蒼剣でも見たことのある薬草だ。

 俺と一緒だからボス部屋で毎回ボスが出現するように、俺がいるからダンジョンに薬草が生えているのかも。


「トーカ様、この薬草は何に使えるんですか?」

「ステータスを一時的に上昇させる薬の持続時間を上げる補助用の薬草だな」

「ステータスを上昇というと、ブースト薬ですか?」

「ああ。あとは継続的に体力を回復させるポーションの持続時間も増える」


 どちらにせよ、今は使えないが、棚に保存していたら腐る事もないので採取しておく。

 俺とアムは採取技能レベルに変化はなかったがミスラがレベル1増えていて、リーナとハスティアは技能が生えていた。


「力がついた気がします。なるほど、これが勇者様の鍛錬法なんですね」


 上がった数値は1だけなんだけど、武人のハスティアは微妙な違いに気付いたようだ。

 鍛錬に関して真面目な彼女が、今後採取を訓練に入れるかもしれない。

 今度、採掘や伐採も教えてやろう。


 採取を終えて探索を続ける。

 またさっきのムカデに襲われた。

 昆虫系や多足類の魔物は結構多い。毒持ちも多いので結構面倒だったりする。

 バラして素材として売れるそうだけれど、さすがに巨大な虫の解体は嫌なので、回収してそのままウサピーに売ることにする。

 なお、ドロップアイテムとして猛毒液という名前を聞くだけでもかなりヤバいアイテムが道具欄に追加されている。

 結局、十六階層の地図踏破率が80パーセントになっても宝の地図に該当する場所が見つからなかったので十七階層に。ここでも見つからないので十八階層にと移動する。

 このまま十八階層で見つからなかったら厄介だなーと思っていたら――


「ご主人様、この地形」

「ああ、正解だな。場所的にこの角の向こうだ」


 宝の地図に描かれた場所と同じ場所が見つかった。

 地図の場所に行く。

 そこにあったのは茶色宝箱だった。


「茶色宝箱、ハズレですね」


 ハスティアが言うが――


「逆だ! 宝の地図で茶色宝箱は――」


 と俺が説明するまでもなく、どこからともなく白い煙が噴き出る。

 何も知らないハスティアとリーナは武器を構えて警戒するが――


「来る」

「来ます!」

「……来たっ!」


 三度目の俺たちはそれを待った。

 煙が晴れる。

 そこにあったのは、虹色宝箱だった。


「四分の一引っ張った!」

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