第251話 戦力強化は宝箱を開けまくったあとで
12階層のボスの金色宝箱の中から立派な金色の槌が出た。
「トールハンマーだな。草薙の剣といい、上級ダンジョンまで来たら伝説級の武器も手に入るな。これはアムの装備と」
「伝説の武器なのですか?」
「ああ、俺たちの世界の雷神様が使っていたっていう伝承のあるハンマーだ」
蒼剣の中では雷の戦士トールが使っていたハンマーとあるけれど、元ネタは北欧神話に登場する雷神トールが使っている戦槌ミョルニルのことだろう。
「ご主人様の世界の神々の槌……雷属性の槌ですか?」
「いや、サンダーボルトと同じで、雷と聖属性の装備だな」
俺の聖剣もだいぶ強化されている。
剣を中心に強化をしている。
炎帝の剣と氷帝の剣が解放された。
炎と氷、両方の剣が手に入った。
いまはこの二種類の剣を鍛えている。
片方だけしか鍛えていないと、たとえば炎帝の剣を鍛えているとき、火に耐性のある敵が相手だと使えない。そういう敵が現れたときのためにも氷帝の剣は必要だ。
炎と氷、両方の耐性を供えている敵は少ないからね。
「……ミスラも新しい杖が欲しい」
「わ、私も欲しいです」
ミスラが遠慮なくとリーナが遠慮して言う。
杖なぁ。
宝箱だと狙って出るものじゃないからな。
ミスリルなどのレア鉱石やドラゴンの素材があるからそれを元に杖を作ればいいんだがいまの鍛冶場だと高レベルの杖は作れないし。
蒼剣だと救済措置として外部委託で武器を作ってもらうという方法があった。
拠点以外の町の鍛冶師に素材を渡して武器を作ってもらうのだ。
もちろん、欠点がある。
まず、費用がかかる。レアな武器ほどコストが跳ね上がる。
自分で作ることができたら無料で作れる武器が、外部委託だと数千万とか数億ドラゴ余裕で飛んだ。
それと、拠点の鍛冶場で起こる大成功とかが発生しない。
しかし、拠点ポイントは他にもいろいろと使いたい。
職業酒場を強化して冒険者ギルドの解放や転職できる職業の種類を増やしたいし、牧場を強化して、以前手に入れたドラゴンの卵を孵化させたい。カジノを強化してゴールド福引券も使いたい。
となると、鍛冶は外部委託という手もありか。
「ハスティア、凄腕の鍛冶師とかって知らないか? ドラゴンの素材を加工できるような」
「ドラゴンの素材を加工……となると、やはりドワーフの里の鍛冶師が一番ですね」
「ドワーフ――ガンテツさんたちに頼めば――」
「いえ、あの村の者たちは種族がドワーフというだけです。同じドワーフでもドワーフの里の鍛冶師は専門の技術と能力を兼ね備え、それにふさわしい設備を持つ鍛冶師です」
「そうなのか。ドワーフの里ってどこにあるんだ?」
「ブルグ聖国の南の山です」
遠いなぁ。
長距離の移動となると、陸上を走るドラゴンか、空を飛ぶドラゴンが益々必要になる。
やはりドラゴンの孵化を優先するか。
しかし、ドラゴンの卵から目当てのドラゴンが生まれる確率を考えると、もう二、三個ドラゴンの卵が欲しい。
「ご主人様、深く考える必要はありません。宝箱から杖を出したらいいのです」
「いや、そう簡単に狙ったものが出ないのが――」
「出るまで回ればいいのです」
アムの目は本気だ。
宝箱廃人の目をしている。
そうだ、俺はいつの間にかその心を忘れていた。
狙っているアイテムの出現率が0でないのなら、出るまで粘るのが廃人ってもんだ。
クナイド教や皇帝や邪神に対抗できる強さが欲しいと思って焦って、効率ばかり考えていた。
そんなのは本来の俺ではない。
「そうだな。うん、その通りだ」
「はい。次に行きましょう! そして、まずは宝の地図に示された宝箱を開けましょう!」
「だな! よし、行こう!」
深く考えるのは辞めだ!
いまは30階層到着を目指す。
願わくば50階層の完全踏破ボーナス虹色宝箱を……あぁ、でも今のレベルだとクリアはできても完全踏破までは難しいかな?
ということで、15階層のボスを倒した。
前にも倒したアイスドラゴンだ。
そこから銀色宝箱が出て、高級ペットフードが入っていた。
ミスラの鞄の中からパトラッシュが出てくる。
「……トーカ様」
「ああ、あげていいぞ」
忘れがちだが、ポチとの連絡係として毎回ミスラの鞄の中に入っている白犬のパトラッシュ。
もちろん、ちゃんとご飯は食べさせているし、運動不足にならないように魔物が出てこないところでは歩かせている。
おしっことかうんこはその辺で適当にするけれど、ダンジョンが勝手に処理してくれるので掃除の必要はない。
もしかして、魔物さえいなかったらダンジョンの中って最高の散歩コースじゃないか?
と思わなくもないが。
危険を伴う戦闘中は道具欄に入ってもらっているのでとても安全だ。
動物虐待とかしてないからな――と言い訳をしておく。
パトラッシュが美味しそうにご飯を食べるので、俺たちも食事にする。
今日はポチが作った料理ではなく、調理レシピによって作ったドラゴンステーキサンドだ。
竜はあんなに硬いのに、ちゃんと下処理して調理すると霜降り肉よりも柔らかくてジューシーな肉になる。
これがとてもうまい。
こんなものばかり食べていたら人間ダメになるっていうくらいに美味い。
それをサンドイッチにしてるのだから、マズイはずがない。
「ドラゴンの肉ってどのくらいの値段なんだろ?」
「そうですね。それこそ部位によります。比較的安価なのは尻尾の部位ですが、それでもステーキにすると一枚で衛兵の給料一月分は消えますね」
うわぁ、ドラゴンの安い肉が既にシャトーブリアンみたいな扱いか。
高級部位ならいくらになるんだろ?
「もちろん、ドラゴンの種類にもよります。今倒したアイスドラゴンの肉は長らく市場に出ていませんから、オークションでの販売になりそうですね。一頭分の肉ともなれば、それこそ数千万イリスの値がつくでしょう。もちろん、何回も出せばそれだけ値下がりしますが」
「ウサピーに五十万イリスで売ったんだが――」
「間違いなく利益を出していますね。でも、彼女の商会の帳簿を確認させてもらいましたが、不審な点はなく彼女は儲けのほとんどを商会と町の運営費に充てていますからミスラ商会に安く卸す分にはいいかと思います」
とリーナが言った。
確かに、俺、町の運営費とか騎士階級になった元自警団たちの給料とかミスラに任せっぱなしだけど、彼女からお金の要求は一切されていない。
となると、彼女に安く売って、損したってことはないわけか。
少しだけ安心し、ドラゴンサンドを食べる。
……うん、やっぱりうまい。
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