第201話 抜け道を通るのは魔法を覚えたあとで
ディスペルの魔法の効果を説明する。
簡単に言うと、呪いを消し去る魔法だ。
それを聞いたミスラは感動していたが、そこまで嬉しいのか?
呪いを解くって、蒼剣内だとそれほど有効な魔法ではない。
呪いそのものは、動けなくなったり、最大体力が減ったりと悪いことだらけなのだが、呪いを使ってくる敵が現れるのは物語終盤の敵だけで、その頃には耐性装備もそろっていて呪いにかかることが少ない。
さらに万能薬も結構道具欄に残っていて、魔法のクールタイムを考えるのなら、結局そっちで治してしまうことが多い。
「これで呪いで誰かが操られても直ぐに治せますね」
アムがそう言ったことですぐに思い違いに気付く。
そうだよな、仲間だったら万能薬を「使う」ことで治すことができるけれど、仲間以外が呪われていることだってあるもんな。
メンフィスの時だって、万能薬を使えば彼女の呪いは簡単に治るはずなんだけど、抵抗してきて彼女が気絶するまで治療できなかった。
もしもあの時、ディスペルの魔法を使えたら、あんな苦労をせずに済んだわけか。
それに、ゲームだと状態異常しか回復できなかったけれど、ミスラがしっかり魔導書を読みこんで応用できるようになれば、呪われたアイテムとかも解呪できるかもしれない。
「とりあえず、俺とミスラでディスペルの魔法を覚えておくか……よし、これで使えるな」
「……ん。覚えた」
といつも通り話していると、ついていけていない人物が二名。
「あの、トーカ様。いま、魔法を使えるようになったと聞きましたが?」
「魔法ってのは本を読んで簡単に使えるようになるものじゃないだろ?」
アイリーナ様とマックルだ。
この二人がいたんだよな。
「ああ、これって魔法適性がある人間なら簡単に覚えられるんです」
「本当ですか? ……え? あ、本当に覚えられたみたいです」
アイリーナ様はミスラから魔導書を受け取り、軽く読むと、なんとなく魔法を使えるようになったという感覚が伝わってきたのだろう。そう言った。
「なんだと!? 姫殿下、僕にも見せてください」
マックルが魔導書を取ろうとするが――
「な、なんだこれ! どうなっている!?」
マックルが取ろうとしても魔導書にふ触る事ができなかった。手がすり抜けてしまうのだ。
さらに、それなら中を見せてもらおうとアイリーナが開いているページを見ても、マックルには白紙にしか見えない。
悪いなマックル。その魔導書は三人用なんだ――という話ではなく、俺とレギュラーメンバー以外は使うことができないのだ。
でも、アムも使えないわけだし、仲間外れってことはないからな。
メディスンスライムと契約、魔導書と寄り道はあったが、ようやく目的の場所に辿り着く。
「ダンジョンに穴が……これが抜け道ですか」
穴掘り能力で作った穴――これがずっと残っていた。
「どこまで通じてるんだ?」
「こっちは川の向こう。あっちはトーラ王国の岬まで――」
俺は、先日の事件を二人に説明した。
つい先日、ラン島に町を作ったあとでこのダンジョンの通路がどうなっているか調査することにした。
もしもまだ繋がっているのなら、しっかりと整備して海底トンネルという形でトーラ王国に行けるように整備できたらいいなってこっそり考えていたのだ。
結果、トンネルはしっかり繋がっていて崩れていなかった。
トーラ王国にはまだ知らせていない。
騎士隊長さんが伝えているとは思うが、しかしクーデターが起きている現在、この地下道の情報が正しく伝わっているとは考えられない。
ここを通れば、トーラ王国まですぐだ。
持ってきていたランタンに火を灯し、奥に進む。
ダンジョンと違って暗いし歩きにくい。
「なぁ、ここはどのあたりだ?」
「いまは海の真下だ」
地図を確認して言う。
「そうなのか? 天井が崩れてきたら――」
「怖いことを言うな。でも、大丈夫だ。一応ポチに確認してもらったから強度に問題はない」
「ポチって、あのコボルトだろ? なんでコボルトの言葉をそんな風に信用できるんだ?」
「ポチをそんじょそこらのコボルトと一緒にするんじゃねぇ。ポチをバカにしたら怒るぞ」
ただの愚痴や悪態は聞き流していたが、それは言ってはいけない言葉だった。
怒るぞって言いながら、既に怒っていた。
「す、すまん。悪かった」
「俺に謝るんじゃない。心の中でポチに謝れ」
「ごめんなさい」
それでいいんだ。
「あの、もしかして、ポチさんってトーカ様の……正妻なのでしょうか?」
アイリーナ様が恐る恐る尋ねた。
いや、それは違うから。
ポチはポチだろ。
さらに進み、出てきたのは岬の近くの崖の側面だった。
こんなところに入り口があったら絶対にわからない。
本当は獣人の騎士を呑み込んだときにできた入り口もあったはずなのだが、そこは塞がっていた。
俺たちが穴を通って追いかけられないようにしたのだろう。
とにかく、無事にトーラ王国に入る事ができたな。
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