第176話 突然の告白はオケラになったあとで
俺たちの村にカジノができた。
本来の予定では、カジノができるのは鍛冶場のあとだったはずだ。
だが、仕方がない。
村の規模が大きくなってきたので、村の発展について会議を開いた。
各村の代表とポチ、ミケ、ウサピーが会議のメンバーだ。
今までは俺の意見を伝えるだけで、皆がそれに賛同してくれていたのだが、トンプソンとウサピーが加わったことでそれに変化が起きた。
「うちはカジノを造るべきだと思うな」
「ウサピーもカジノが必要だと具申します。ぴょん」
娯楽の必要性、金の流れの把握、犯罪の抑止と流動、雇用の獲得よくわからない言葉を並べたてられた。
気付けば、カジノを建てることこそが有効だという雰囲気になっていた。
その後は、それに伴う法整備。
カジノを出入りできる人間、使える金額の制限と話は進んだ。
法律もないこの土地においてカジノを経営するには法が必要なのだ。
会議が終わって一時間もしないうちに、村人たちの間にカジノの話は広がった。
期待する声が多かったのは意外だった。
日本だったら、カジノができるってなったとき反対運動が起きるものだからな。
何故だろう? って思っていたら、ウサピーの奴が反対意見を出しそうな村人のところに事前に出向き、しっかりと説明、根回しをしていたのだ。
結果、カジノ建設はとんとん拍子に進み、お披露目会となった。
カジノは一階建ての小さな建物だ。
そのため、入場制限を設けているが、俺とアム、ミスラだけはオーナー特権で自由に出入りできるようになっている。
今日はプレオープンとして賭けそのものは行わず、カジノ側が用意したチップで遊ぶだけの日になっている。
カジノの施設レベルは1。
遊べるミニゲームは三種類。
スロットマシン、ポーカー、バカラだ。
詳しいルールは省略する。
カジノの施設レベルが上がれば、ルーレット、ビンゴ、闘技場、パチンコやパチスロ、ウサギレースなど遊べるミニゲームが増える。
それと、チップで交換できるアイテムや、チップ交換の限度枚数も。
現在、1チップ10イリスで、購入限度枚数は1000枚。
つまり、チップ50枚持っている状態だと950枚以上のチップを購入できない。
カジノの限定アイテムが欲しければ金ではなくゲームで稼げってことらしい。
ゲームの中だったらセーブ&ロードで確実にチップを増やせるのだが、さすがにそれはできない。
イカサマ抜きの完全な運勝負だ。
ちなみに、その運とステータスの運は関係ない。
リアルラックのことだ。
だから、運が高くても――
「……当たらない」
チップが次々にスロットマシンの中に入って溶けていく。
オーナー特権も機械相手には通用しない。
「悪魔より強いな。だが、ポチよりは弱い」
ハズレ。
カジノに裏技はない。
プレオープンなのでチップの景品交換はできないから別に問題ないはずなのだが悔しい。
一方、俺の隣でスロットを回していたミスラはというと、
「……スロットを観察していた結果、チェリーが揃う確率は1/5、プラムが揃う確率は1/10、ベルが揃う確率は……つまり、確率論的に次揃う確率は――」
ああ、うん。
スロットで当たりが出る確率は一回一回が独立している。
なので、これまでのハズレを計算してそろそろ当たりが出るとか言っている奴はだいたい――
「……おかしい」
ハズレとなる。
スロット組は半数が負けてチップを全部失っている。
さて、カード組の様子はどうかな?
「フルハウスです」
ポーカーに興じていたアムがフルハウスをして場に出ていたチップを総取りしていた。
ステータスの運は関係ないはずなんだが、彼女の脇にはチップが山積みになっていた。
カジノで大勝ちしているのはアム、トンプソン、そしてウサピーの三人か。
勝つべき人は勝っているって感じがするな。
ちなみに、カジノで働いている人間はNPCではなく、ウサピーがどこからともなく連れて来た兎獣人――ワーラビットだ。
「ありがとうございます、トーカ様。我々の一族を受け入れてくれて」
「祖国を追放されて三年。聖者様とウサピー様のお陰で安住の地を見つけました」
「我らワーラビット一同、トーカ様に一生の忠誠を誓います」
とのことらしく、総勢十五名のワーラビットが村に移り住んだ。
半数は人参畑を耕し、残りはミスラ商会とカジノで働くことになった。
ちなみに、ウサピーがワーラビットではなくセールスラビットであることは知っているので、同族だと騙して連れて来たわけではない。
本来はそれでみんなよかったね――で落ち着くはずなんだが。
「見つけました!」
ワーラビットの一人、族長の娘のミツキ・ココ・ルシアが俺に駆け寄ってきた。
俺と同い年の十七歳。
とても脚が長くモデル体型の美人な緑髪のワーラビットだ。
「ミツキさん、今日はどのような御用で――」
「はい! 旦那様、ミツキと結婚してください!」
告白は突然に行われた。
突然にもほどがある。
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