第165話 穴を掘るのは戦いを傍観したあとで
橋代わりのダンジョンを進むと、早速ポイズンスライムが現れた。
紫色の毒々しい色をしている。
それにしても、なんで毒=紫なのだろうか? 茄子とか葡萄とか美味しい紫の野菜や果物も多いし、俺がイメージする毒の食べ物といえば毒キノコやフグなんだけど、どっちも紫ってわけじゃない。
警戒色っていうのなら、黄色とか赤色の方が分かりやすい気がするんだが。
んー、謎だ。
と考えているうちに、弓兵さんが矢でポイズンスライムを射抜いていた。
毒は厄介だけど、耐久値とかはスライムと変わらないらしいのでそれだけでスライムは息絶える。
あぁ、パーティメンバーじゃないからお金もアイテムもドロップしない。経験値も入っていないだろう。
さらに、倒したポイズンスライムを革袋に入れている。
ポイズンスライムの毒性は殺したあとも失われることはないので、矢に塗って使うそうだ。
残念なことにその毒には金属を腐食させる作用があるので、剣に塗って使うことはできないらしい。
「並みの戦士じゃないと進めないって言ってましたけど、矢で倒せるなら余裕ですね。この先にもいますよ。あ、天井のあそこですね」
俺がそう言うと、弓兵さんが射止めてくれる。
楽だけど勿体ないなぁ。
とはいえ、ここまで俺とアムがロック鳥をしとめたり、ダイダラワームを追い払ったりとしているので、出しゃばり過ぎるのもよくないということで倒せる敵は騎士様たちに任せることにした。
「楽か――本来であれば、どこから襲って来るかわからないポイズンスライム相手に、常に警戒しながら移動し、見落として不意を打たれて毒液を浴びてしまえば死をも覚悟しないといけないのだが」
解毒ポーションは持ってきていないけれど、万能薬は在庫があるし、そんなもの使わなくても修道士の職業レベルが上がったことで、アンチポイズンという解毒魔法が使えるようになっている。
だから、毒=死ということはない。
暫くポイズンスライムが続いたので、もしかしたらアドモンと戦えるかと思ったが、次に出てきたのはヌーパールーパーというカエルとイモリの中間のような両生類っぽい魔物が出てきた。
露骨にミスラがガッカリした表情を浮かべているが、俺は安心したよ。
騎士達の前で赤い宝箱が出てきたら絶対におかしいって思われるからな。
ヌーパールーパーとの戦いも騎士に任せる。
連携がとれていて戦い方としては美しいな。
ダイダラワームやロック鳥のときは役に立たなかったが、普通のサイズの魔物相手だと訓練が活かされているのだろう。
大勢の戦いには慣れていないので勉強になるな。
うちの村に指導に来てほしいくらいだ。
地下三階層に辿り着いた。
場所的に、もう川は超えていると思う。
「もうすぐボス部屋でしょうね。ボス部屋は私達だけで戦いましょう」
「だな。宝箱を出るところを見られるわけにはいかない」
さて、なんて言い訳して入ったらいいのか?
《ピ…………ピ…………ピ…………》
突然埋蔵レーダーが鳴ったことで、騎士達が咄嗟に剣を抜く。
驚かせてしまったな。
「なんだ、それは?」
「すみません、えっと、探索用の物で――ちょっと待ってください!」
俺は慌てて走った。
急いで穴を掘って、埋蔵物を回収しよう。
《ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ》
ここだ!
穴を掘る!
大きな穴が空き、中のものを掘り出す。
綺麗な冠だった。
二つの目のような特徴的なその形には見覚えがあるが、念のために鑑定してみる。
【魔女のサークレット:呪われた島に干渉を続ける魔女の意思が封じ込められているサークレットのレプリカ。伝説シリーズの一つ】
伝説シリーズ二個目だな。
「トーカ殿、急に走り出してどうし……なんだこの穴は?」
「ああ、すみません、ちょっと――って」
足下が揺れた。
なんだこれ――って思った次の瞬間、足下が崩れた。
「ご主人様!」
アムの声が響く。
岬の崩落がフラッシュバックする。
一瞬脳裏に死がよぎった。
このまま死ぬのか――そう思ったが、本当に一瞬だけだった。
何故なら、崩落したのはわずか数メートルだけで、肉体的ダメージは何もなかったからだ。
「大丈夫だ。変な場所に出ただけ……で……なんだこれ?」
落ちた先にあったのは横穴だった。
なんでダンジョンの下にこんな穴があるんだ?
真っ暗だから、ここもダンジョンということはないと思うが。
「なんだこれ――壁がねばねばしてる」
もしかして、ポイズンスライムの毒じゃないか?
と不安になって自分の手のねばねば成分を鑑定してみる。
【ダイダラワームの粘液:ダイダラワームが自分の身を護るために周囲に出している粘液。無毒】
よかった、無毒か……って、ダイダラワームの粘液!?
まさか、ここ、ダイダラワームが通った穴なのか!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます