第158話 霧の中の捜索は地面からの襲撃のあとで

 地面が揺れた。

 地下からの魔物に対しては騎士達も不慣れなようだ。

 このままだったら騎士隊が危ない。

 だったら――


「アム!」

「はい!」

「「スポットライト」」


 俺とアムに光が差し込む。

 スポットライトはタゲを集める。

 光を浴びて注目を浴びるからという理由なのだが、その効果は目の見えない魔物や、そもそも地上の光を感知することのできない地下の魔物にも効果がある。

 

 敵がこちらに集まってきた。

 地面の下から魔物が出てくるタイミングはブラックモールやホワイトモールとの戦いで慣れている。

 特にブラックモールはアドモンのホワイトモールを出すために何十匹も倒してきた。

 出てくるタイミングは同じだ。

 振動が一度止んだ――次の瞬間。


――いまだっ!


 俺とアムが跳ぶと、俺たちがいた地面ごと飲み込むように現れたのは、超巨大なミミズのような魔物だった。

 っ超巨大っていってもでかすぎるだろ!

 象すら呑み込むんじゃないか!?


「ダイダラワーム!?」


 アムが叫ぶ。

 ダイダラワーム……蒼剣にも出てきた魔物だ。

 その巨体な魔物は動くことで地形をも変えると言われる。


「ファイアボール!」


 俺はダイダラワームの口の中に火の玉を投げ込んだ。

 口の中で爆発し、顔(?)の部分が弾けた。

 しかし、まだ動いている。

 凄い生命力だ。

 さらに俺たちを狙って第二、第三と続々とダイダラワームが出てきた。

 騎士達が現れたダイダラワームに攻撃を始める中、俺たちもできる限り戦う。


「黒鉄の大剣!」


 黒鉄の剣のレベルを上げて最近ようやく解放された黒鉄の大剣を装備する。

 大剣技能レベルも黒鉄の大剣そのもののレベルも低いが、巨大な敵には巨大な剣で戦うもんだろ!

 その証拠にアムも大剣(マグロ)に持ち替えて戦っている。


「アクセルターン!」


 回転しながら大剣を振り回して攻撃をする。

 ダイダラワームを輪切りにしてやった。

 そして――


「辻斬り!」


 アムが盗賊職業レベル6で覚えた辻斬りを使うと十字にダイダラワームが斬られた。

 しかし、アムによって十字に斬られたダイダラワームはまだ生きている。

 しぶとい生命力だ。


「うわぁぁぁっ!」


 騎士の一人がダイダラワームに呑み込まれた。

 他にも何人かがダイダラワームに丸のみにされる。そして、騎士達を丸のみにしたダイダラワームは無傷の仲間とともに去っていき、まだ生きている傷ついたダイダラワームは地上に完全に姿を現した。


「いまだ! 全員突撃!」


 騎士達がダイダラワームに剣を突き刺す。

 ダイダラワームの身体から赤い血が噴き出した。

 ダイダラワームが暴れ、剣を突き刺していた騎士たちが吹き飛ばされた。

 誰もいないのを確認し、俺はすかさず魔法を唱える。


「サンダーボルト!」


 雷が騎士たちが突き刺した剣を伝ってダイダラワームの体内に流れた。

 結果、倒れたダイダラワームは四体、逃げられたのは六体か。

 強くないんだが、この並外れた生命力は厄介だな。


「隊長! 直ぐに仲間を助けに行きましょう!」


 騎士の一人が仲間を助けるために穴の中の突撃を進言するが――


「待て! 穴に入っての深追いは許可できない!」

「しかし、隊長!」

「命令だ」

「くっ」


 俺も反対だ。

 穴の中はダイダラワームのテリトリーといってもいい。

 そんな場所で襲われたら、それこそ一巻の終わりだ。


「君達、助力感謝する。初手で君達が敵を引き付けてくれなかったら、犠牲はもっと出ただろう。礼を言う」

「いえ……」

「それと、前言を撤回するようで申し訳ないが、我々の作戦に協力を願いたい。無論、謝礼は出す。誠に情けない話だが、我々は人との戦いには慣れているが、魔物との戦いにおいては不慣れな部隊なのだ」


 そんな感じがする。

 ここにいる全員、武器は剣か槍か弓矢だ。

 どれも人間相手には有効だが、さっきのような巨大な魔物やゴーレムといった特殊な魔物を相手にはできそうにない。


「魔術師はいないのですか? トーラ国は魔法の研究と魔術師の育成に力を入れていると聞きましたが――

「魔術師殿はこんな辺境まで来ないさ。戦争でもない限り、彼らが中央から出ることはない」


 と隊長さんは悪態を吐くように言う。

 いろいろと確執があるのだろう。

 とにかく、ポチを助けるための人員はこちらも必要なので、隊長さんの申し出を快く受けた。

 

「ところで一つ聞きたいのだが」

「はい」

「なんで、彼女は魚を武器にしているのだ?」


 と隊長さんはアムが持っているマグロを見て尋ねた。

 何と答えればいいのだろうか?

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