第140話 宝箱を開けるのは再びドロップアイテムを確認したあとで
いや、正直言ってスターアルラウネは強敵だったと思う。
まず、天井から当たるスポットライト。
俺が思わず攻撃を仕掛けてしまったのも、あれは俺たちが良く使うスポットライトと同じでタゲを集めやすくする効果があるのだろう。その証拠に、最初に魔法攻撃を仕掛けたあと、ミスラがいつもより前に出ていた。
その歌には状態異常を誘発する効果があり、一瞬体が動かなくなるアクシデントがあった。
歌による状態異常は専用の能力を持つか耳栓を装備していないと防ぎようがない。
動けないときに足下から出る蔦や、鋭い葉っぱを飛ばして攻撃してくるものだから、ミスラが攻撃されたら軽い怪我では済まなかった。幸い、こちらもスポットライトを使っていたので狙われたのは俺とアムだったが。
体力が半分を下回ったら、仲間が現れた。
現れた敵はこのダンジョンに出てきた多くの魔物たちだ。
さらに、一度完全に倒したと思ったら、復活したのだ。
あれは、上位職業「アイドルスター」の職業能力「アンコール」の効果だと思う。
アンコールの効果は死亡判定時に一度だけ生き返ることができるという能力だ。
とはいえ、レベルによる地力の差を埋められるほどの能力ではなく、完全勝利した。
その証拠に、初踏破ボーナスに加え、完全制覇ボーナスも手に入った。
しかも、今回は一個金宝箱への昇格を確認。
「同じダンジョンでも違うボス部屋なら、完全制覇ボーナスと初踏破ボーナスも手に入るんですね。早速宝箱を――」
「待て待て。先にドロップアイテムの確認な」
今回の狙いが正しければ星露草があるはず――
【スターのサインA】
……取り出してみる。
色紙に何かそれっぽいサインがあった。
【スターのサイン:スターアルラウネが書いたと思われるサイン。欲しい魔物は数知れず】
っているかっ!
サイン色紙を投げ捨てたくなったが、ゲーマーの
てか、Aってなんだ?
こんなふざけたアイテムが他にもあるのか?
なんだよ、星露草はどこだよ!
「……トーカ様、今回もこれじゃない?」
「え?」
ミスラが示す場所――スターアルラウネの周りには葉っぱが何枚か落ちていた。
【星露草:特定の先天性の病気を治すための薬の素材となる草】
……あ、本当だ。
ドロップアイテムがあまりにもひどかったので前回と同じく見逃してしまった。
とりあえず、これを回収して、トンプソンに納品しよう。
「宝箱を開けましょうか」
「だな。さて、何が出るか……」
気を取り直して金色宝箱を開ける。
出てきたのは――
「高級ペットフード……五つ」
「ポチさんのおやつですか?」
「……ハズレ?」
「ああ、ハズレだ。しかし、ポチのおやつではない。ペット用のご飯だよ。ペットの好感度が上がりやすくなるが、時間を掛ければ普通の餌でも上がるからな」
「……パトラッシュのご飯?」
「ああ、そうだな。パトラッシュ……パトラッシュ?」
「……そう。前に拾った白犬。パトラッシュって名付けた」
そういえば森のダンジョンの宝箱から白犬を拾ったことがあった。
あの時、ミスラは名付けを拒否し、結局悪魔騒動が解決するまで名付けを保留することにしていたが、すっかり忘れていた。
「あの犬ってどうなったんだ?」
「ご主人様、気付いていなかったのですか? 村のみんなで飼ってますよ」
「……ん。人気者」
全然知らなかった。
村長なのに村の中にいる時間が短いのが悪いんだ。
時間があったらほとんどダンジョンに行ってるから。
「ていうか、パトラッシュって名前にしたのか。誰が名付けたんだ?」
フランダース地方のあれのイメ―ジしか出てこないぞ。
冬のアントワープ聖母大聖堂に行ったら危なそうな名前だ。
もっとも、俺はその話を詳しく知らないので、なんであの犬があんなことになるのか正しくは理解していないんだけど。
「……ミスラが付けた。悪魔を倒したあとに」
「意味を知ってて言ってるのか?」
「……ん。
「語源の方じゃなくて……いや、まぁいいか。じゃあ、これはパトラッシュにお土産な」
まったく無駄になるよりはいいだろう。
次の宝箱に期待だ。
「ご主人様、次は私に開けさせてください」
「ああ、じゃあ頼む」
俺ばかり開けるのも悪いしな。
アムに出番を譲った。
宝箱を開けると、出てきたのは――
「太陽のクッキーですね。三枚入ってます」
「ああ。まぁ、悪くはないか」
大当たりってわけじゃないが、便利なアイテムだ。
試練の塔の入場券が手に入ったときに使わせてもらおう。
銀色宝箱から謎の卵が出た。
牧場レベル2になったら従魔となる魔物を孵化させることができる卵だ。
これで二個目だな。
「揺り戻しのねじ巻きを使いますか?」
「そうだな……あのおっさんアルラウネを見るのはオークアルラウネを見るよりも辛いんだが――」
ここまで来て二周目行かずに帰るのはやっぱり勿体ないよな。
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