第139話 スターとの戦いは星を巡ったあとで
ボス部屋にやってきたが、当然そこにはアルラウネもオークもいない。
オークの血の跡も綺麗に無くなっていた。
魔物の死体などは放っておくとダンジョンが吸収するらしいからな。
「じゃあ揺り戻しのねじ巻きを使うぞ。
俺が揺り戻しのねじ巻きのゼンマイを巻く。
すると、針が逆回転を始め、一周回ったときボスが復活する。
「通常のアルラウネですね」
「……オークも以前と一緒」
「こいつを普通のアルラウネって呼びたくないけど、スターアルラウネじゃないのは確かだな」
オークアルラウネを普通のアルラウネと呼びたくない。
とりあえず、このボスには用がないので速攻で倒す。
格下のボスなので見せ場とかそういうのは一切ない。
倒した結果、宝箱が三つ――銀色宝箱二つと茶色宝箱一つ。
うん、結構いい。
中身は道具枠拡張の巻物とスパイクシールドだ。
スパイクシールドはダメージを軽減するだけではなく、相手にも反射ダメージを与える盾で、シールドバッシュなどの盾技のダメージも跳ね上がる攻撃用の盾だ。
「盾……アム、使うか?」
「いえ、盾はあまり得意ではありません」
「そうなのか?」
器用になんでも使いこなしているから盾も普通に扱えるものだと思った。
そういえば、アムが盾を使っているところを見たことがないな。
「はい。攻撃は避けるものと教わって、母も使っていませんでしたので」
「そうだけど、避けられない攻撃もあるだろ? ほら、サクラトレントの花吹雪みたいな広範囲攻撃とか」
「全てを防ぐことはできませんが、致命傷を避けて避けることは可能です。母ならあの程度全て避けていました」
アムの母ちゃん、何者なんだよっ!?
絶対、Aランク相当の冒険者だろ。
そんなに強いのなら、なんで借金返せなかったんだ?
気になるな。
まぁ、盾が苦手だというなら、村人たちの装備にするか、棚の肥やしだな。
いまは手乗り倉庫の中に入れておこう。
「……トーカ様。スターアルラウネは? わかったんじゃないの?」
「ん? ああ、とりあえず茶色宝箱を開けて脱出してからな」
中に入っていたのはハイポーションだったので、それを手に入れてダンジョンから脱出。
次の瞬間、俺たちはダンジョン入り口の階段の踊り場にいた。
「じゃあ、もう一回潜るぞ」
階段を下りてダンジョンに入る。
「……トーカ様、どういうこと?」
「ああ、解説させてもらう。キーワードは星は巡る――だ。星ってのは同じように見えて、季節ごとにその姿を変えていく。夏には夏の星座が、冬には冬の星座があるようにな。だから、ダンジョン内でそれを再現する」
「……っ!? 花の季節」
「そういうことだと思う。サクラトレントは春の花、ユキハナカマキリは冬の魔物だろ?」
ミスラが本を捲って、俺の考えに当てはめて、魔物の季節を考える。
「……殺人バチが活発に行動するのは夏、ラフレンキノコは秋のキノコ」
そして、これまで通ってきた部屋にいた魔物にそれぞれ季節を当てはめる。
そして春夏秋冬春夏秋冬と順番に転移陣を使ていく。
実際、ゲームにおいて季節の順番に巡っていくというのはたまに見かけるシチュエーションだからな。
たぶん、アルラウネが植物の本を持っていたのは、そのヒントの役割があったのだろう。
「凄いですね。その順番で廻れば、ボス部屋に辿り着くまでに全ての部屋を通ることができるんですね」
「同じ場所を繰り返し通ることもなく……な」
さて、ということで改めて転移を始める。
ラフレンキノコのいる部屋は俺とミスラが先に入って倒してから消臭剤を使って部屋の臭いを消してからアムが入ることで安全に通行。
そして――
「正解だったな」
ボス部屋の前の安全地帯に辿り着いたが、その部屋の形がさっきまでのボス部屋前の安全地帯と違った。
その証拠に――
『ピピピピピピピピピピピ』
部屋に入ったと同時に、埋蔵センサーが鳴り響いていたから。
中を掘ってみると、塔のミニチュアが現れた。
「この塔、傾いてますね」
「……欠陥品?」
「いや、これはそういうものだ」
コレクターアイテム、中世七不思議シリーズの一つ、ピサの斜塔のミニチュアだ。
ストーンヘンジのミニチュアに続いて二個目だな。
思わぬコレクターアイテムが見つかったところで、ボス部屋に行く。
俺の予想が正しければ、スターアルラウネがいるはずだ。
スターか。
今度は俺は期待しない。
どうせ、オークジェネラルとか、オークキングとかのアルラウネだろう。
「じゃあ、行くぞ」
通路を通り、ボス部屋に入る。
中にいたのは――
さっきのアルラウネの花の部分は桃色一色だったのに、今度のスターアルラウネは花の部分が赤と白の二色になっている。
そして、スポットライトが当たっていて、いまにも歌い出しそうな雰囲気だ。
そして一番の懸念材料だった特徴を改めてみる。
下半身は花、そして上半身は人間の――
「おっさんじゃねぇかっ!」
予想の斜め上の展開に俺はソニックブームで攻撃を仕掛けた。
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