第138話 二周目のボスは謎解きのあとで
アルラウネとオークたちは一瞬で倒した。
オークたちはアルラウネを守ろうと必死になって戦っていたが、魅了状態にあるのだろうな。
とりあえずオーク肉は村人たちに人気なので大量にゲットできたのはお土産として嬉しい。
完全制覇ボーナスの金色宝箱と初踏破ボーナスの銀色宝箱、そして今回は昇格無しの茶色宝箱三つ。
宝箱の中身を確認する前に――
「さて、これでトンプソンの依頼は達成だな」
とドロップアイテムを確認するために道具欄を開いた。
追加されていたアイテムは豚肉と……代替肉?
あぁ、大豆ミートみたいな植物由来の肉ってことね。
普通、代替肉ってヴィーガンやベジタリアンの人向けに作られた肉ってイメージだけど、魔物の肉って彼ら的に食べていいものなのだろうか?
そもそも、この世界では需要があるのか?
ファンタジーで肉を食べないって言ったらエルフがそういうイメージだけど、ハーフエルフのミスラは普通に肉を食べる。
まぁ、植物性のタンパク質はダイエット効果があるって言ってたし、ベジタリアンやヴィーガンでなくても健康志向で食べる人もいるよな。
「って、これのどこが薬で苦しむ人を助ける素材だよ!」
トンプソンの話と全然違うじゃないか。
てか、落とすのは癒し草って草のはずだろ?
「……トーカ様、こっちじゃない?」
「え?」
よく見ると、さっきの戦いでアルラウネの周囲には葉っぱが何枚も落ちていた。
アルラウネの葉だ。
鑑定してみると、
【癒し草:特定の状態異常を治療する薬の素材となる葉。体力は回復しない】
とあった。
あ、そっか。
魔物が落とすって言っていたからドロップアイテムのことだとばかり思っていたが、考えてみればこの世界の人間は魔物を倒しても勝手に道具欄にドロップアイテムが入ったりしない。
普通「魔物が落とす」と言ったら文字通り周囲に落ちているもののことなのか。
ということでトンプソンの依頼は改めて達成と。
「ご主人様、宝箱を開けましょう!」
「……魔導書」
アムとミスラが金色宝箱の前でスタンバっていた。
ぶれないね、君たち。
さて、俺も中身を確認するか。
「御開帳!」
宝箱を開ける。
中に入っていたのは一冊の本だ。
本といえば、魔導書や技術書が多いが、今回は――
【犬でもわかる技術書(建築)】
だった。
「ポチ用の技術書だな。これがあればポチが建築の能力を得られる」
「……? ポチはいまでも建築できる」
ミスラが不思議そうに言う。
確かに、数日で家などの建物を作ったり、人間以上の建築技能の持ち主だ。
「ああ。普通の建物とかなら作れるな。ただ、レベル5以上の施設を作るには、この建築の技能が必要になってくるものもあるんだ。それに、施設を作る速度も速くなる」
「ポチさんが馬車の中で退屈しなくて済みますね」
「そうだな」
ということで、これは当たりっと。
さて、銀色宝箱は――また紙か。
「これは――?」
「型紙の破片だな。四つ集めると完成して、一つの型紙になる。それを服屋に渡すことで、アバター衣装が完成する」
「当たりですか?」
「こっちは微妙」
型紙は福引所で結構手に入る。
そもそも、蒼剣のアバター衣装はそこまで効果の高いものではない。
あくまでおまけ的なものだし、なのに型紙を集めてから服を作るのに結構な費用と時間が必要になる。
って、いや、待てよ?
衣装の中には可愛いものや結構際どいものも多い。
アムやミスラがそれを着てくれるというのなら、それはもう当たりではないだろうか?
彼女たちに合法的にコスプレしてもらえるんだぞ?(※合意の元、彼女にコスプレをしてもらうのはそもそも違法ではありません)
むしろ当たりじゃないか!
「いや、考えてみれば今回のように服を傷つける敵が現れないとも限らない。それに寒い場所や暑い場所、その場所に応じた服をいつでも簡単に着替えることができるアバター衣装ってのは便利だよな。うん、当たりだ」
「そうですか、よかったです。では、二周目行きましょう」
「いや、揺り戻しのねじ巻きを使う前に、拠点クエストを達成したい。星露草って草を手に入れたいんだ」
「……星露草。聞いたことがない」
「ああ、俺も知らないが、推奨レベルとかタイミングとかを考えると、このダンジョンで見つかる可能性が高い。それを探してからボスを倒して脱出しよう」
ここのダンジョンの入り口部分は扉の内側なので、システムで脱出しても誰かに見られることはない。
なので、まずは星露草探しだ。
なに、地図はほとんど完成している。
直ぐに見つかるさ。
「見つからない!」
なんでだ?
手書きの地図を凝視する。
転移陣はほぼ全て総当たりで確認した。
全部の部屋に行っているはずだ。
星露草が見つからないだけなら、魔物の激レアドロップアイテムや、そもそもこのダンジョンで手に入る素材ではない可能性もあるのだが、地図の踏破率も100%になっていないのがおかしい。
どこかに隠しマップがあるのは間違いないのだが。
「今回は池もありませんしね」
以前、水辺のダンジョンでは池の中に隠しマップがあり、そこに隠し宝箱があった。
だが、今回はそういう場所も見つからない。
「ミスラも魔導書ばかり読んでないで考えてくれ」
「……ん、魔導書じゃない。さっき拾った本」
「え? じゃあポチの技術書?」
「……あっちは読めなかった。そうじゃなくてもう一冊のほう」
「もう一冊……あぁ、あれか」
そういや、アルラウネが本を持ってたな。
あれを拾ってたのか。
「何が書いてあるんだ?」
「……このダンジョンに生えている植物に関する本。興味深い」
「植物の……そこに星露草の情報は書いてないかっ!?」
「……ん、探してみる」
ミスラが本をパラパラと捲る。
それで読めるのか? と思ったら、単語だけを抜き出して探すくらいはできるとのこと。
そして――
「……あった」
「本当か?」
「星露草――特別なアルラウネの葉っぱのことらしい」
「特別なアルラウネ?」
オークの姿のアルラウネってだけでも十分特別な気がする。
てことは、アルラウネのレアドロップアイテムか?
「……星が巡った先に現れるスターアルラウネが落とす幻の草――って書いてある」
「スターアルラウネ? ってことはさっきのアルラウネじゃないのか」
あれはスターアルラウネじゃなくて、ブターアルラウネだもんな。
「アルラウネのアドバンスモンスターでしょうか?」
「いや、ボスモンスターにアドモンがいるなんて聞いたことがないし、なによりオークがいるんだからアドモンを出すのは不可能だ」
アドバンスモンスターを出すには、同じ魔物を倒し続ける必要があり、その間、他の魔物を倒してしまったら討伐数がリセットされてしまう。
「たぶん、このダンジョンにはボス部屋が二つあるんだ。もう一つの隠し部屋にスターアルラウネが現れる」
ヒントは星が巡った先……か。
蒼剣に限らず、これまで様々なゲームをしてきた俺がそのヒントから辿り着いた答えは――
「そういうことか! ボス部屋に行くぞ!」
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