第107話 ゴーレム査定は倉庫に移動したあとで
「アイアンゴーレムの在庫って、どこにあるんだ? 倉庫でも借りてるのか? それとも表に荷車でも停めてるのか?」
おっさんが訝し気に尋ねる。
どう説明したらいいだろう?
村にあるから後日持ってくる――と伝えればいいか?
それとも宿に置いてあるって言ったら?
「……トーカ様は収納の能力がある」
「おい、ミスラ」
「……大丈夫。他の人には聞こえてないし、この人は情報を漏らしたりしない」
「収納能力持ちか……それが本当なら凄いことだが。ついてこい。裏の倉庫に案内する」
そう言っておっさんは裏口から奥の倉庫に案内してくれた。
結構広い倉庫だ。
大型の魔物とかも置くのだろう。
魔物の素材などが置かれている。
「ここに出せ」
「はい。じゃあ――」
と俺はアイアンゴーレムを道具欄から取り出して置く。
「本物のアイアンゴーレムだな。しかも傷一つない美品。どうやって……いや、冒険者に手の内を聞くのは規約違反か」
「あ、別にいいですよ。ただの雷魔法ですので」
「ただのだとっ!? 雷魔法の使い手なんて滅多にいないぞ。この国内でも五本の指で足りる数しかいないはずだ」
雷魔法って珍しいのか。
「じゃあ、続きを出しますね」
「続き?」
俺は持ってきていた在庫のアイアンゴーレムを取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出す。取り出――
「待て待て待て! どれだけ在庫があるんだよ! ってか、どんな収納能力だよ。限度ってもんがあるだろうが!」
ああ、限度はある。999個だ。
999個越えた分は別枠扱いになる。
今回は100体持ってきたので十分限度の範囲内だ。
「50体ですからまだ半分ですよ? あと、こんなのもあるんですけど」
俺はそう言ってジャイアントゴーレムを取り出す。
いやぁ、アイアンゴーレムもデカイけど、ジャイアントゴーレムは壮観だな。
一体出しただけで倉庫が一気に窮屈に感じられるようになった。
「ジャイアントゴーレムだとっ!? Aランクの魔物じゃねぇかっ! お前、なんてものを狩って来やがるんだ!」
ジャイアントゴーレムってAランクの魔物だったのか。
まぁ、アイアンゴーレムがBランクだから妥当かな?
「こいつもとりあえず20体くらい持ってきました。ジャイアントゴーレムが召喚したミニアイアンゴーレムはもっとあります」
「これはどこで手に入れた?」
「ダンジョンです。三人で倒しました」
「三人って、アムルタートは剣士だろ?」
「ハンマーも使えますから」
アムがそう言ってアイアンハンマーを取り出して振るった。
おっさんは乾いた笑みを浮かべる。
何か大切な物を捨てた男の目をしている。
どこからアイアンハンマーを取り出したのか質問する気もないみたいだ。
暫く動かなかったおっさんも、再起動してジト目で俺に尋ねる。
「……お前ら、ポットクールにこのことは話したのか?」
「ええ、話しました」
「ちっ、ポットクール商会が急に鉄素材の買い付け注文を取り消したのはそういうことか。これだけアイアンゴーレムがあれば間違いなく値崩れを起こすからな。まぁ、国から鉄素材が足りないとせっつかれるよりは遥かにマシか。それで、アイアンゴーレムが100とジャイアントゴーレムが20、ミニアイアンゴーレムは?」
「57体ほど。たぶん、ジャイアントゴーレムのうち一体は体内にミニアイアンゴーレムを内蔵したままなので」
最後に倒したジャイアントゴーレムはミニアイアンゴーレムを召喚する前に倒したから、体内にミニアイアンゴーレムが残ったままのはずだ。
おっさんはアイアンゴーレム、ミニアイアンゴーレム、ジャイアントゴーレムを全部買い取ってくれた。
もちろん、この倉庫に全部入らないが、町の郊外に別の倉庫があり、そちらを使うとのことだ。
それでも全部入りきらず、一部は倉庫の外に置くことになった。
盗まれないか尋ねたところ、
「誰が真昼間からこんな巨大な鉄の塊を運び出すんだ! 気付かれるわ!」
とのこと。仰る通りで。
夜までには見張りの冒険者を派遣し、その後解体して王都や他の町に運んでいくそうだ。
俺に運んでくれないかと打診が来たが、丁重に断った。
めんどくさ……じゃなくて道具に収納する能力についてはあまり知られたくない。
普通の収納能力ではなく、蒼剣のゲームシステムだから、微妙な違いが気付かれる恐れがあるからだ。
買い取りの査定に時間がかかるらしく、支払いは後日となった。
そして俺たちは改めて冒険者ギルドに戻った。
「ほら、二人分の冒険者カードだ」
「これ、Cランクになってますよ?」
「アイアンゴーレムはBランク相当の魔物だ。それを100体も狩ってきてるんだ。もうCランクでいいだろう」
「試験とかは?」
「いらん。面倒だ」
おっさんはそう言い切った。
なんかやっつけ仕事になってないか?
まぁ、最初からランクを上げてくれるっていうのなら助かるが、大丈夫なのか?
適当な仕事をされて、あとから無効ってなる方が怖い。
「ギルド長とかに話を通した方が――」
「……トーカ様。この人がギルド長のマッコラさん」
「え?」
あぁ、このおっさんがギルド長だったのか。
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