第105話 注目されるのはアムとミスラのあとで

 米作りは村人とポチに任せることにして、俺たちは出発前にウサピーの店で掘り出し物を見ることにした。

 掘り出し物は週替わりの商品が店に並び、中にはそこでしか手に入らないレアアイテムも存在する。

 とりあえず売り物を確認。


―――――――――――――――――――――

錆びたメダル:50イリス

丸い石:5イリス

埋蔵センサー:25000イリス

福引補助券:500イリス

ガラクタ:10イリス

錬金術レシピ:500イリス

―――――――――――――――――――――


 本来は5枠しかないんだけど、ロボットシリーズの恩恵で6枠になっている。

 未所持の場合出る確率が非常に高いとはいえ、埋蔵センサーがいきなり出たのはありがたい。

 埋蔵センサーは埋まっているお宝の場所を調べるための道具で、穴を掘るを使って道具を探すのに非常に重要なアイテムだ。

 全部買いたいがお金が足りないので、砂金などの換金アイテムを全部売ってお金に換え、改めて購入した。


 全部購入して、埋蔵センサー以外は棚に保存した。

 一緒に買い物にきていたアムがポイントカードを俺に渡してくれたので、それを使用する。

 ポイントカードは商店で買い物時に使えるもので、初回購入時に自動的に貰える。

 500イリスで1ポイント貯まり、ポイントに応じて景品がもらえる。

 昨日、アムは保存食1万イリス分購入していたので、その時に貰ったのだろう。

 ポイントカードを受け取り、錬金術レシピの解読をし、いらないものは棚に入れる。

 ちなみに、錬金術レシピの中身は植物回復薬――畑の傷ついた作物やハリーを治療するための薬だった。


 改めて、アムとミスラと一緒にトランクル王国に向かった。

 アムは聖女衣装ではなく、最初に会った剣士風の衣装だ。

 回復魔法も使えないのに聖女の姿で冒険者ギルドに行くのは悪目立ちするからな。


「そういや、ミスラって元々あの街に住んでたのか?」

「……ん、半年だけ。悪魔と戦うときは人のいない死の大地の周辺でって決めてたからあそこに引っ越した」


 誰にも迷惑を掛けない場所といったら、死の大地の周辺ってなるのか。

 そこに住んでいる人からしたらいい迷惑だけど、まぁ何もない荒野とかいっぱいあるから場所さえ選べば大丈夫か。

 死の大地の中央は結界があって入れないらしい――俺は何故かそこから出てきたんだけど、もう一度行けば入ることはできるのだろうか?

 まぁ、行く用事はないけど。


「じゃあ、半年間でCランクにまで上がったのか?」

「……冒険者ギルドのランクは同じ国内ならどこでも同じ。それに、攻撃魔法が使えるなら最初からDランクで登録できる」

「え? そうなのか……それを知ってれば冒険者ギルドに登録してすぐにダンジョンに入れたわけか」


 全員がFランクスタートってわけじゃないんだな。

 だったらミスラを雇わなくても冒険者ギルドに登録して、ダンジョンに行くことはできたわけか。

 いや、でもそうしたらミスラに出会えなかったんだから、結果的によかったのか。


 国境門に来た。

 衛兵が数人、詰め所にいて寛いでいた。

 滅多に人が来ないのだろう。

 歩いて来た俺を見つけて立ち上がって尋ねた。


「入国目的は?」

「冒険者ギルドに冒険者登録しようと思って西のガモンの村から来ました」

「同じ理由です」

「……ミスラはこの国の民」


 ミスラだけ、ちゃっかり市民証を見せる。


「そうか。じゃあ二人分の入国税として――」


 と言ったところで、別の衛兵が慌てて来て何か囁く。


「通ってよし」


 とお金を払わずに入国を許可された。

 さっき慌てて来た衛兵、そういえば以前、俺に法外な関税を吹っ掛けようとした奴だな。

 クリオネル侯爵家の手紙の事を覚えていたのだろう。

 虎の威を借る狐みたいだが、通行税も取られず余計な出費を抑えられてよかった。

 しっかりと質問されたら、アイテム欄の中に冒険者ギルドで売りたい魔物の死骸とか大量にあるから、関税を支払う必要があっただろう。

 国境を越えて町に入った。


 ここでも衛兵は俺のことを覚えていたらしい。侯爵家の影響はそれほどまでに大きいのだろう。

 町に入った俺たちは、ポットクール商会は今頃大忙しだろうから邪魔をしたらダメなので真っすぐ冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドの中に入ると、こちらに注目が向く。

 目立ってるな。

 俺の強者のオーラか?

 と思ったら――


「エルフか、珍しいな。魔術師だったらうちのパーティに誘いたいな」

「バカ、あれはハーフエルフだよ。Cランクのミスラだ。最近見掛けなかったが帰ってきたんだな」

「妖狐族、初めて見た。昔、神に仕えていたっていう凄腕の獣人の種族だろ?」

「ああ。ミスラと組んだんだろうな。Cランクの魔術師ミスラと妖狐族……もしかしたらこの町で初めてのBランクパーティになるかもしれないぞ」

「真ん中の男はなんだ?」

「さぁ?」


 ……注目はアムとミスラに向けられていた。

 わかってる。

 見た目だけだったら俺もさえない男だもんな。

 ミスラ、やっぱり名前の知られている冒険者だったんだな。

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