第99話 結婚はこの戦いのあとで(?)
悪魔との戦い当日の朝。
俺はミスラと共に目を覚ました。
「おはよう、ミスラ」
「……おはよう、トーカ様」
静かな声でそう言う彼女のその顔は、窓から差し込む朝日で眩く感じる。
化粧を一切しなくても染み一つない白く滑らかな肌は、エルフが持つ特徴らしく、その血を半分持っている彼女にもしっかり引き継がれていた。
昨日までは、ミスラを異性として見ないように努力していたが、一度関係を持ってしまうと改めて認識させられた。
やっぱりミスラはとても可愛いんだよな。
「おはようございます、ご主人様」
「おはよう、アム」
ベッドの反対側にはアムもいた。
彼女がかわいいことは改めてもなにもずっと認識させられている。
昨日、ミスラとの初めてが終わったあとアムを呼びにいき、三人で寝た。
最初からそういう約束をしていたらしい。
寝たといっても深い意味はなく、本当に川の字になって寝ただけだ。
俺が寝ているベッドはダブルベッドだが、二人でも十分持て余すくらいの大きさがある上に、ミスラが小さいので窮屈という感じはしなかった。
悪魔との戦いで緊張して寝られないかなと思ったが、三人ともぐっすり眠れたようだ。
その日の朝、アムとミスラと三人でポチの作ってくれた朝ごはんを食べる。
アムはミーティア衣装で気合いを入れている。闇属性の耐性が上がる装備は欠かせないからな。
他にも在庫の装飾品から闇耐性のある装備、状態異常耐性のある装備を厳選して装備している。
最後の薬の確認。
ポーションと魔力ポーション、万能薬、俊敏ブースト薬に魔力ブースト薬。
調理能力を使って、フルーツ盛り合わせと、ハンバーグを作る。
フルーツ盛り合わせは俺とミスラが食べて魔力の底上げを、ハンバーグはアムが食べて体力の底上げをした。
そして、特に言葉もなく俺たちは家を出て、転移門を通りエルマの村に行くと、そのまま森に向かった。
さすがに村の真ん中で戦うわけにはいかないからな。
森の中のダンジョンに向かう。
慣れ親しんだ道だ。
道中のキノコもほとんど採り終えて、ほとんど生えていない。
俺たちはダンジョンの中に向かう。
悪魔は空を飛ぶことができるらしい。
だったら天井の低いダンジョンの中で戦う方が有利だ。
山のダンジョンも候補に挙がったのだが、あそこのボス部屋は天井が高いし、ジャイアントゴーレム退治で疲れたくない。
ダンジョンの最奥にいるびっくりピーチを倒すと、宝箱が三つ出た。
銀色宝箱が二つあって、中身はドッグフードと酒樽だった。
「ポチとミケにお土産ができたな」
「はい。きっと喜ぶでしょうね」
ここからだと外の様子はわからないが、太陽が沈むまであと一時間ほどある。
俺とミスラは瞑想して精神を落ち着ける。
これで瞑想技能が上がれば儲けものだが、二人とも最近技能レベルが上がったばかりなので上がることはないだろう。
「煩悩を断つ瞑想中に聞くのもなんだが、悪魔を倒したら何をしたい?」
「……三日位徹夜で魔導書を読む」
「ぶれないな」
「……落ち着いたらお父さんとお母さんのお墓に一緒にいってほしい」
「それはもちろん構わないぞ。ていうか、魔導書読む前に墓参りしろよ」
「……二人にミスラの結婚相手を見せてあげたい」
ミスラはそう言ってから、暫くして不思議そうに俺を見た。
「……否定しないの? 『誰が結婚相手だ?』みたいに」
「いや、俺の世界では『この戦いが終わったら結婚するんだ』って台詞は死亡フラグになるんだ。だからそういう話は言ったらダメなんだよ」
さすがにやることやって、結婚を全く考えていないって言ったらウソになる。
でも、先にアムに結婚してからになるな。
俺たちの村では結婚に関する法律はないが、オラクル王国の法律だと奴隷と奴隷以外の結婚は認められていない。
オラクル王国の大きな教会で結婚をするなら、まずはアムを奴隷から解放しないといけない。
ミスラとの結婚を考えるのはそのあとだ。
だから俺は敢えて言う。
俺、この戦いが終わっても結婚はしない。
そう決意したところで、気配が変わった。
俺は立ち上がる。
『三人か。十日間では碌に人を集められなかったか、それとも巻き込む人数を最小限にしたのか』
声が聞こえてきた。
地の底から響くような人ならざる者の不気味な声がダンジョンのボス部屋に響く。
『後者だとしたら愚かだ。三人ごときでどうこうなる我ではないことくら一年前にわかっていたはず。ならば孤独な死を望めばよいものを』
ボス部屋の中央に闇が現れ、その中からそいつは現れた。
赤いタキシードを着た老人のような姿をした存在。
だが、そいつが纏う異様な空気は人からは決して放たれていいものではない。
「……契約の……悪魔。ミスラはあなたを倒す。お父さんの魂を解放させる――それがミスラが自分に刻んだ最初の契約だから!」
彼女はそう言って四元素の杖を構え、
「ライトアロー!」
光の矢を放つ。
それが戦い開始の合図となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます