第96話 ミニゲームは筐体を設置したあとで

 二周目のボール狩りも終わり、俺のレベルは無事に40になった。

 既に太陽のクッキーの効果は切れているのでボス戦を急ぐ必要もなく、30分経過ちょうどにボス部屋に到着しなくてもいい。

 そのため、ミスラはまだ来ていないが、俺とアムは既に到着した。

 そして――


「ご主人様……」

「アム……」


 俺とアムはそわそわしていた。

 理由はわかっている。

 気になるのだ、ミスラが開けた金色宝箱の中身が。


「ご主人様、金色宝箱の中身はなんでしょうか?」

「ミスラの奴、まったく見せずに道具欄に入れたから皆目見当がつかない。試練ダンジョンの入場チケットだったのか、それとも魔導書だったのか。いや、魔導書だったらあいつのことだ、興奮して騒いだだろうから魔導書じゃないと思う。魔導書だったらどんな魔法なのかわかるんだが」

「そうなのですか?」

「ああ。試練のダンジョンの魔導書はだいたい決まっていてな。エスケプの次に入手できるのはたぶんスケープボールだ」

「スケープボール?」

「ボールを召喚する魔法だな。そのボールを囮にするんだ。ちなみに、召喚されたボールは経験値が0だから倒しても意味はない」


 そんな予想を立てていたら、ミスラが来た。


「……お待たせ」

「「宝箱の中身なんだった(なんでしたか)!?」」

「……よくわからない。これ」


 ミスラはそう言って道具欄から取り出したのは――


「ああ、これか」

「箱でしょうか? 名前は――ミニゲームボックス?」


 アムが鑑定して箱の名前を読み上げながら首をかしげる。

 説明も書いてあるのだが、まぁ、この世界の人にはわからないか。


「拠点設置型のアイテムだ。設置すると箱の中身が飛び出してゲームを楽しむことができる。言うなればおもちゃだな」

「……ハズレ?」

「いいや、そうとは限らない。ミニゲームボックスの中にはそれでしか手に入らないアイテムだったりがあるんだ。それに店に設置すれば利益も出る」


 ミニゲームの種類は設置してみるまでわからないので、これはいったん保留だな。

 

「じゃあ、ボス戦の前に穴を掘りに行くか」

「このダンジョンにも穴掘りできる場所があるのですか?」

「ああ。たぶん、試練のダンジョンは二箇所あると思う。どっちもコレクターアイテムだから集めておきたい。一つはロボットシリーズだから、ロボットシリーズが三つになって恩恵もあるしな」


 試練のダンジョンのマップは蒼剣と同じなので、ゲームと同じ場所に落ちているだろう。

 そう思って、移動する。

 部屋の中央。まず、攻略サイト無しだと探知アイテムがなければ見つからない場所だ。

 穴掘りを使う。

 出てきたのは、緑色の丸いボールのようなロボットの模型。

 HELLOという名前のコレクターアイテムだ。

 鑑定によると、【空も飛べるボールの形をしたペットロボットの模型。ロボットシリーズの一つ】となっている。

 これでロボットシリーズが三つになった。


「ロボットシリーズが三つになった報酬はなんですか?」

「商店の掘り出し物枠が増加する」

「掘り出し物?」

「ああ。商店の設備だな。施設ができる前にロボットシリーズが集まることなんてまずなかったから驚いてるよ。じゃあ、次に行くか」


 次は通路の行き止まり。

 蒼剣だとボールを追い詰めるポイントとしてよく使われるのだが、ここに追い詰めるのも結構コツがあって大変なんだよな。

 などと考えながら穴を掘る。

 出てきたのは、水晶玉。

 名前も見た目のまんま、水晶玉で、占いシリーズの一つだ。

 水晶玉も回収してボスを退治する。


 宝箱は三つとも茶色宝箱で、中身は全部経験値薬だった。

 三人のレベルを改めて確認する。 

 俺のレベルは40。アムは24、ミスラは23か。


「ミスラ、レベル20超えたから、その衣装の効果はもうない。脱いでいいぞ」

「……わかった。この服も好きだけど、いつもの服の方がやっぱり落ち着く」


 そう言ってミスラはアバターを解除――最初にあったときのとんがり帽子の魔術師スタイルに戻った。


「私も闇属性の敵と戦う時以外はいつもの服でいいでしょうか?」

「そうだな。それは気分で変えたらいいよ」


 聖女姿のアムも好きだけど、普段のアムも好きだからな。

 俺としてはどっちも好きだ。


 ということで家に帰った俺たちはそのまま風呂に入って寝た。

 翌日、酒場に行くとミケが桃酒を飲んでいた。

 こいつ、いつも何か飲んでるな。

 さすが酔いどれケット・シーだ。


「ミケ、ミニゲームボックスを手に入れたからどこかに設置させてくれ」

「その辺に適当に置くにゃ」


 と言われたので、適当に部屋の奥にミニゲームボックスを置く。

 すると、ミニゲームボックスが割れて、中から巨大なゲーム筐体が出てきた。


「クレーンゲームか!」

「ご主人様、クレーンゲームってのはなんですか?」

「このボタンで上のアームを動かして景品を取るゲームのことだ」


 UFOキャッチャーとも呼ばれる。

 ミニゲームの中でも割とお世話になったものだ。

 アイテムはぬいぐるみとトレジャーボックスの二種類。

 ぬいぐるみは部屋に飾ったり売ったりするだけでなく、ぬいぐるみ士という職業に付けば武器として使用もできる。

 そして、トレジャーボックスはいろいろなアイテムが入っている。

 ダンジョンの宝箱ほどじゃないけれど、開けるときドキドキするんだよな。


「どれ、ひとつやってみるか」

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