第91話 錬金術は錬金工房チュートリアルのあとで

 工房はそれほど大きくない。

 自宅の半分くらいだろうか?

 レベル1の錬金工房だからこの程度か。

 錬金工房のシートが剥がされたが、見るのは外観だけで、中の案内はしないそうだ。

 というのも、工房の中にはいろいろな器材がある上に、狭いからな。


 ということで、現場シートが剥がされた時点でお披露目会は終了。

 ミケを先頭に広場に移動して宴会ムーブとなるらしい。

 なんか、事ある事に宴会をしているな、うちの村。

 まぁ、酒も肉も野菜も大量にあるから食べるだけなら問題ないか。


 改めて俺たちは錬金工房の中に入った。

 玄関に入って部屋が左右二つに分かれている。

 ポチはまず右側の部屋に案内してくれた。

 そこは四つのテーブルがあり、それぞれ錬金術で使うと思われる器材が置かれている。

 スポイト、フラスコや小さな窯――アルコールランプみたいなものもあった。あれで火を出すのだろうか?

 錬金工房というよりかは理科の実験室みたいだと思った。

 上下に動く黒板があれば完璧なのに。


「ここは村人たちが働く場所なのです」

「てことは、働く人数は四人ってことか?」

「そうなのです。シフト制にして、六人で交代して働くことになってるのです」


 六人ってことは、三日に一日は休める計算か。

 週休二日以上とは、なんてホワイト企業なんだ!

 と思ったけれど、たぶん休みの日は畑仕事とかあるんだろうな。

 奥に扉が二つあり、一つは休憩室に続いていて、その奥にトイレがあり、もう一つの扉は倉庫になっているらしい。

 予備の器材とかも置いているそうだ。

 なお、ここの器材は持ち出し不可らしい。

 ここは俺たちが使うことは基本ないので、ざっと案内して、反対側の部屋に行く。

 先ほどより広い部屋だ。

 大きな窯やいろいろな試験管。本棚と素材を入れる棚。

 うんうん、こっちも蒼剣で見た通りの錬金工房だな。

 だとすると――


「お、あったあった! 初期錬金レシピ集」


 本棚の中にある初期錬金レシピ集。

 これがあれば、錬金術で使える基礎レシピがわかるはずだ。

 中身は後で確認するとして。


「あるじ、使い方を説明するのです。まずはこれをどうぞなのです」


 ポチが大きな宝石(ルビー)と銅の腕輪を俺に渡した。

 言うなればチュートリアルだ。

 これを窯に入れてグルグルかき混ぜると、窯が爆発。

 そこから俺の手の中に銅の腕輪が飛び出してきた。

 熱した窯の中で混ぜられたのに熱くない。

 そして、銅の腕輪は、銅の腕輪(火属性)になっていた。

 このように、装備品に属性を持たせることができる。

 火属性の装備品ひとつでも火耐性がつく。

 ついでに、この一回で技能に【錬金】が生えて、魔力が2増えた。 

 錬金技能は魔力が増えるだけでなく、高難度の調合が可能になり、大成功(品質が上がったり、生産個数が増える)の確率が増えるので錬金術をするには必須の技能だ。


 次にポチは魔力水の入った瓶と乾燥させた薬草を俺に渡し、薬草と魔力水の中身だけを錬金窯に入れさせた。

 混ぜると、ポーションができて、自動的に薬が瓶の中に入る。


 俺は棚に行き、レシピを出す。

 錬金工房の棚と自宅の棚は共通管理されていて、自宅の棚に入れていたものをここで取り出すことも可能だ。


「ポチ、レシピの解読をしたいんだが」

「レシピをここの机に置くのです」

「わかった」


 解読用の机があり、そこにレシピを持っていくことで解読し、レシピを修得できる。

 初期状態だとポーションしか作れないからな。


 まず、初心者用レシピ集を解読。


―――――――――――――――――――――

【レベル0】

魔力水(水×魔力の欠片)

魔力の欠片(魔力を含む鉱石、宝石類)

【レベル1】

魔力ポーション (魔力弱回復素材×魔力水)

解毒薬(解毒素材×魔力水)

熱さまし薬(解熱素材×魔力水)

【レベル3】

ハイポーション(体力中回復素材×魔力水)

ハイ魔力ポーション(魔力中回復素材×魔力水)

【レベル5】

体力ブースト薬(体力薬)

魔力ブースト薬(魔力薬)

攻撃ブースト薬(攻撃薬)

防御ブースト薬(防御薬)

俊敏ブースト薬(俊敏薬)

―――――――――――――――――――――

 この十二種だな。

 レベルは、その薬を作るのに必要な錬金術の技能レベルだ。

 次に、びっくりピーチを倒したときに獲得したレシピを解読する。

―――――――――――――――――――――

【レベル4】

風邪薬(体力回復素材×熱さまし)

―――――――――――――――――――――

 ああ、風邪薬か。

 蒼剣では、風邪という状態異常はなかったが、クエストアイテムとして納品したり、イベントで使用する機会が多々あった。

 店で売ってない薬だから、薬師の店でお使いイベント報酬としてもらうしかないのだが、それが結構面倒だった。

 そういうときにこの風邪薬のレシピは役立つ。

 それに、結構いい値段で売れる上に、レベルの高い薬なので錬金術の技能レベル上げにも使える。


「じゃあ、ミスラ。試しにこの紅の石で魔力の欠片を作ってみてくれ」


 聖剣解放素材である蒼の石や紅の石は、聖剣解放後もドロップしているため、結構な量がある。

 そのうち一つをミスラに錬金してもらうことにした。


「……錬金の能力がなくてもできるの?」

「ああ、レギュラーメンバーなら全員できるはずだ」

「……やってみる」


 ミスラが蒼の石を窯に入れて、棒でグルグル混ぜる。

 すると、窯の中から紫色の綺麗な石の欠片が四つでてきた。

 魔力の欠片だ。


「……できた」

「ご主人様、私も錬金術をしてみてもいいですか?」

「あ……ええと、アム。大変言いにくいんだが、錬金術は魔力を消費するんだ。だいたい、2のレベル乗。レベル0の魔力の欠片でもMPを1消費する。だからアムが使ったら」

「……魔力枯渇で倒れる」


 ミスラがそう言うと、アムは残念そうな顔をした。

 申し訳ない。

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