第83話 採掘はストーンゴーレムを倒したあとで
山のダンジョンは三階層からなるらしい。
ガンテツたち村人はこのダンジョンにほとんど寄り付かないが、昔、ダンジョンを訪れた冒険者の記録が残っていたらしい。
最初に出てきたのは石でできたゴーレムだ。
身長一メートルくらいで、ずんぐりむっくり、太った子供のような体格だ。
岩の表面はところどころひび割れていて、岩というよりは荒野って感じがする。
当然、両腕も岩でできているので、あの手で殴られたら痛いだけでは済まない気がする。
レベル25くらいだろうか?
「ストーンゴーレムですね。剣や短剣からの攻撃に耐性がありますが、私たちなら勝てない敵ではありません」
「やっぱりそうか……ストーンゴーレムは高品質のゴーレム石材を落とすからある程度倒しておきたい」
拠点のレベルを上げるときに石材、木材、魔法粘土など素材を要求される。
岩を採掘すると通常の石材は手に入るのだが、ゴーレム石材はストーンゴーレムからしか手に入らない。
それともう一つ――俺はストーンゴーレムの核がどうしても必要だった。
「ご主人様、ここは私が――」
「いや、岩の魔物なら水魔法だ――」
俺はそう言って黒木の杖を取り出す。
「ウォーターガン!」
「……水よ顕現せよ」
俺とミスラの水の魔法が二つ同時にストーンゴーレムにあたると、ストーンゴーレムが水圧に負けて壁にぶつかり、動かなくなった。
「よし、倒したな」
「ストーンゴーレムは水が弱点なんですか?」
「岩系の魔物はだいたい水が苦手だな」
「何故、水が弱点なのでしょうか?」
そう言われたらなんでだ?
だとしても、水でなくても普通に石で殴り続けたって同じことができるはずだ。
「……ゴーレムが動く原因は身体の関節部や核に宿る魔力によるもの。魔力で作られた水はストーンゴーレムのひび割れた岩に染み込みその魔力の流れを阻害させることができる。風魔法や火魔法でも同じことはできるけど、水の方が中に入りやすい」
「そういうことだ」
ミスラの説明に俺が便乗して頷く。
さて、ドロップアイテムの確認と――よし、ゴーレム石材があったな?
これで――聖剣メニューを確認する。
ゴーレム石材のお陰で、聖剣の新たな形態が解放されていた。
俺は早速その武器を取り出してみる。
「ご主人様、それは?」
「ゴーレムツルハシだ。新しい聖剣なんだが、攻撃力は1固定、レベルも1固定。ただし、採掘が可能になる」
これまで採掘スキルは剣で岩を殴るだけだったが、あれではレベル10までしか採掘レベルが上がらない上に、経験値もほとんど手に入らない。しかし、このゴーレムツルハシがあれば、岩や通常鉱脈での採掘が可能になる。
それに――
「と、おあつらえ向きにもう一匹来たな」
先ほどと同じ形のストーンゴーレムがもう一体、こちらに近付いてくる。
「まぁ、見ていてくれ」
俺はそう言うと殴りかかって来るゴーレムの攻撃を躱しながら、その脳天にツルハシを振り下ろした。
ストーンゴーレムは頭が砕ける。
「凄いです、ご主人様。ストーンゴーレムを一撃で倒すなんて――」
「ゴーレムに対しては攻撃力が跳ねあがるゴーレム特化の力があるんだ。だからゴーレムツルハシって言われてる」
ゴーレム以外の敵には使えないので持ち替えるのが面倒で、他の魔物が混じった乱戦には使いにくい。
それに、ストーンゴーレムはよかったが、アイアンゴーレムやさらに上位種のゴーレムだとさすがに一撃で倒すのは難しいだろう。
それでも、使える武器が増えるのはいいことだ。
剣術や槍術の技能はあっても、ツルハシ術は存在しない。これで成長する技術は採掘スキルだけだ。
この点も気を付けないといけない。
なお、ツルハシは何故か折れやすい。
蒼木の剣でも簡単には折れないのに、ツルハシだとだいたい百回に一回くらいの確率で折れる。
一度折れると一時間使えなくなる。
ツルハシ補修キットという道具があれば、再度使えるようになるが、今は持っていない。
なので使いどころを間違えないようにしない……ん?
地図の端にある場所を発見。
「行くぞ、アム、ミスラ。こっちに来てくれ!」
俺はそう言うと、地図に示された場所にたどり着く。
そこは特に何もないように見える。
だが、俺には見えている。
「アム、ミスラ、ちょっと下がっていてくれ」
俺はそう言うとゴーレムツルハシをゴツゴツした岩壁に振り下ろした。
「ご主人様、何をしているのですか?」
「何って、採掘だよ!」
俺ガゴーレムツルハシを振るう。
三回振るったとき、壁から何かが飛び出した。
「……石?」
「鑑定では、鉄鉱石と出ていますね」
「ああ、鉱石だ。ここは採掘ポイントなんだよ」
ツルハシを振るうと一定の確率で鉱石が出るポイントだ。
実はこれまで、ダンジョンの内外問わず、何度か採掘ポイントを見つけてきた。たとえば昨日の坑道にも採掘ポイントがあった。
だが、ゴーレムツルハシが無かったので採掘できずにいたのだ。
「ちょっと待ってくれ。ツルハシが折れたら終わるから」
「折れるのですか?」
「ああ、折れるんだ」
さっき、
折れなかったら俺みたいなやつが無限に採掘するからだ。
ちゃんと数えたわけではなかったが、ツルハシは120回を超えたあたりでポキリと柄の部分かれ折れた。
いやぁ、リアルだとツルハシが折れるとかなりびっくりするな。
柄から先が飛んで誰かに当たる前に、勝手に消えてくれたからよかったけれど。
120回掘って、石材32個、鉄鉱石44個、銀鉱石15個、アンモナイト化石1個手に入れた。
「なんでダンジョンの中に巻貝の化石があるのでしょうか?」
「……生物の死体はダンジョンに吸収されるはず」
いや、俺に言われてもわからないよ。
アンモナイト化石は商店が出来たら高く売れるから、大事にとっておこうな。
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