第77話 光魔法を落とし込むのは魔導書を集めたあとで
俺の部屋の窓際に盆栽キングを飾り、再度、霧吹きで水を掛けてあげる。
心なしか、隣にいるハリーも友達ができてうれしそうにしている。
部屋に緑ができるのは気持ちのいいものだ。
と思ったらポチに持っていかれた。
「盆栽キングさんは外で育てないといけないのです」
とのことらしい。そういえば、盆栽キングは設置型アイテムの中でも、庭に設置するアイテムだったっけ。
そして、霧吹きとは別に、ジョウロで水を撒いてあげていた。
ゲームでは無理だったが、盆栽キングに天の恵みを使ったらどうなるんだろう?
ポチに提案したら、「盆栽キングさんがただの松になるのですが、いいのですか?」と言われたのでそっとしておくことにした。
そうだよね、育たないといけないのは盆栽じゃなくて、キノコの方だもんね。
「ハリーと違って盆栽キングさんは繊細なのです。普段の世話はポチがするのですよ」
「……うん、頼むよ」
ポチが優秀過ぎた。
まぁ、せっかくの盆栽キングが枯れてしまうよりは遥かにいい。
「あるじ様、期限が切れた未報告の拠点クエストが溜まってるのです。精算済ませるのです」
「終了している未報告? あぁ、人食いオレンジ?」
「そうなのです。12回達成してるのです」
「おぉ、なかなかいったな」
スライムを使ったドロップ集め、うまくいったようだ。
といっても、これで種、240個分なのに、たった12ポイント。
さすが弱クエスト、裏技使ってもショボいでやんの。
期限が切れたってことは、もう人食いオレンジの種のクエストが終わったのか。
「それと、新しいクエストが二つ発行されたのです」
「よし、見せてくれ」
これまでのパターンからして、一つは弱クエスト、一つは強クエストだろう。
とわくわくしながらクエストを確認する。
―――――――――――――――――――――
ジャイアントゴーレム破壊:1ポイント
推奨レベル:30
ジャイアントゴーレムの核を10個破壊する
―――――――――――――――――――――
さすが弱クエスト。今度はドロップに関係なく破壊なのだし、十匹破壊と思えば楽に思えるかもしれない。
しかし、ジャイアントゴーレムは、蒼剣ではダンジョンボスでしか出てこない。
こっちの世界でもそうなのだとしたら、つまりダンジョン10周してようやく1ポイントということになる。
まぁ、弱クエストだしな。
とりあえず、ゴーレムのいるダンジョンが近くにあるのだろう。
話を聞いて、次はそこでレベル上げをしよう。
それに、弱クエストはおまけ。
やっぱり強クエストを受けてこそだろ――ともう一枚を確認する。
―――――――――――――――――――――
中級悪魔撃退:666円
推奨レベル45
達成条件:中級悪魔ジルクを撃破
備考:ミスラさんを助けてあげてくださいね
―――――――――――――――――――――
これ、拠点クエストじゃない。
アイリス様からのクエストだ。
推奨レベル45って、まだ10以上足りないのか。
でも、666円って、ネタに走ってません?
ヨハネの黙示録ですか?
もっと高くてもいいと思うんだけど。
「マスター、666円はこの世界において非常に価値のある値段なのです。だから今回は大盤振る舞いなのです」
「……そうだよな」
通常の手段だと課金はできない。
666円でもDLCで言えば、ゴールド福引券6枚分以上の価値がある。
本来、ゲームにおいて電子マネーが貰えることなんてまずないのだ。
それを貰って安いって文句は言えないよな。
どれだけレベルを上げればいいかわかっていなかったが、一つの指針ができたわけだし、これはアイリス様に頼まれなくても成し遂げようとしていたことなんだ。
このことを夕食時に二人にも伝える。
「さっき、女神アイリス様から連絡が来た。ミスラを狙ってる悪魔は中級悪魔のジルクって名前らしい。討伐推奨レベルは40だ」
「レベル40ですか」
「……全然足りない。ジルクというのもたぶん仮の名。本当の名ではない」
そうだよな。俺がレベル30、アムが17、ミスラに至ってはまだ15だ。
仮の名というのは、悪魔は本当の名、真名を知ると相手を強制的に従えることができるらしい。
いくらアイリス様でも本当の名前を教えてくれるようなことはしないだろう……とのこと。
いや、アイリス様ならうっかり教えてしまってる可能性はあるか。
「安心しろ。最悪、残り一日で一気にレベルを上げることは可能だ。アムはライトソードがある。物理攻撃に耐性がある悪魔だとしても、光属性を持つ剣ならダメージを与えることができる。それより、ミスラ。光属性の魔法はライトアローしか使えないが、なんというか、『光よ顕現せよ』みたいな感じで光属性の魔法を使えたりしないのか?」
「……難しい。光の魔法の技術は教会が独占している。伝手がない」
魔法の独占なんてのがあるのか。
いや、魔法とはこの世界では軍事技術の一種だ。
兵器の製造法と同じく、どこかの組織が独占しているなんて普通か。
つまり、光魔法の基礎がないから、この世界の魔法体系に落とし込むことができない。なので、ライトアローは使えても、この世界の魔法で表現できないってことか。
「……光属性の魔導書が集まれば使えるようになるかもしれない。トーカ様、魔導書捜ししたい」
「こればかりは運だからな。じゃあ雷魔法や回復魔法も?」
「……回復魔法や補助魔法も教会が独占している。雷魔法はトランクル王国の北、トーラ国が独占している魔法。ようやく囚らえた魔術師から少しずつ情報を引き出すことができたが、トランクル王国では使える人間はいない」
「トーラの人間って口が堅いんだな。魔術の使い方を黙ってるなんて」
「……違う、契約魔法により言えない。強力な魔法だから喋れば死ぬ」
「だったら、どうやって情報を引き出し……って、殺されてるのか」
だから、少しずつってことなのか。
契約魔法、恐ろしい。
「ミスラ、お前の契約魔法、俺の秘密を喋るなってやつだけど……それ、解除したほうがいいか?」
「……大丈夫、強い呪いじゃない。ミスラの場合、契約を破ったら首が絞まって苦しいだけ。アムと一緒」
そういえば、アムの奴隷契約も命令を無視しても、その命令が犯罪だった場合、司法機関に逃げ込めば解除できるって教わったっけ。
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