第64話 謝罪は反省のあとで
ヒール、分裂、倒す、ヒール、分裂、倒す。
スライムを倒し続けるのがもはや作業状態だ。
まぁ、それでも入ってくる経験値は微々たるもの。
それに、魔力の問題もある。
ミスラの魔力が早々に尽きかけていた。
彼女のステータスを確認する。
―――――――――――――――――――――
名前:ミスラ
種族:ハーフエルフ
職業:魔術師Lv3
レベル:11
体力:58/58
魔力:13/182
攻撃:36
防御:45
俊敏:48
運:10
装備:四元魔法の杖 魔力のペンダント【魔力+10・呪】 銅の髪飾り【防御+2 魔力+3】銅の腕輪【防御+2 魔力自動回復弱】銅の指輪【防御+1 魔力+4】
習得魔法:四元魔法 契約魔法 ライトアロー サンダーボルト ヒール
戦闘技能:杖術(レベル10)自然魔法(レベル10)身体魔法(レベル5)
一般技能:瞑想(レベル3)
称号:無し
―――――――――――――――――――――
強くなってきてはいるんだが、彼女がどこまで強くなったらいいか、基準がわからないんだよな。
たぶん、ミスラ自信もわかっていないと思う。
ただ、これも蒼剣のゲームと同じなのだが、主人公以外は生産系の技能が身に付かないから、それでレベル上げができないんだよな。
一番手っ取り早く強くする方法は、鍛冶屋と錬金工房を作って装備を整えることだが、拠点ポイントが圧倒的に足りない。
とりあえずゴブリンドロップの装飾品のうち、魔力が上がるものと、魔力の回復速度が上がるものを優先的に装備してもらっている。
武器強化の巻物を使うか?
んー、やっぱり初期装備に使うのは勿体ない準レアアイテムなんだよな。
「……トーカ様、もう一回」
「次がラストな」
「……まだいける」
「ステータス的に限界だ。二回目のヒールは不発になる」
俺はそう言って、彼女にヒールを使わせた。
分裂したスライムをアムが倒す。
これで終わりと。
やっぱり技能のレベルは蜂ループほどの上昇は無理か。
「よし、これで終わりだ」
俺の手の中にいるスライムがほっと安堵の表情を見せたのはたぶん気のせいだろう。
「じゃあ、アム。次は俺がいくから続きを頼む。ミスラは瞑想して魔力を回復させるんだ」
「……わかりました」
「はい。私はまだまだいけます」
ということで、スライム分裂ループ継続。
回復、斬る、回復、斬る、回復、斬るの繰り返し。
俺の技能レベルはミスラより上がりやすいので、こちらは早々に身体魔法レベル11まで上昇する。
「これで限界だな」
「ご主人様。蜂の時は自然魔法の技能レベルが10までしか上がらなかったのに、何故今回は11まで上昇したのですか?」
「いい質問だな。自然魔法、身体魔法の技能レベルが魔法対象のレベルより10以上高いと経験値が入らなくなるんだ。スライムのレベルは1だから、身体魔法レベルが11になった時点で技能経験値が入らなくなる。蜂とか畑の作物は魔物ではない扱いだから、レベル0。つまり、レベル10になった時点で技能経験値が入らなくなる」
これは魔法に限らず、剣術や槍術といった戦闘系のスキルにも言える。
岩を剣で殴り続けても剣術の技能レベルが11になることはない。
「では、ご主人様の持つ農業などの技能経験値は10以上にはならないのですか?」
「普通はそうだ。だが、施設レベルを上げると、その畑での作業での経験値対応レベルが上昇する。レベル1の畑だと農業レベル10までしか技能が上がらないが、レベル2の畑になると農業レベルが20まで上昇するんだ。もちろん、畑に木を植えたら伐採レベル上限にもなる。山に拠点を作れば鉱山の施設を作ることができてそのレベルを上げれば、採掘レベルの上限も上がるし、海に港を作れば港レベルに応じて釣りレベルの上限も上がる。施設はマジで大切なんだ」
「ご主人様、施設にはレベルを上げる施設があるのでしょうか?」
「もちろんだ。鍛錬場だと仲間が戦ってくれてれば鍛錬場で待機してる仲間に経験値が入ってレベルが上がる」
「仲間が戦った経験値をもらうのですか。少し申し訳ない気持ちになりそうですね」
「……魔力の上がる施設はある?」
「鍛錬場レベル2と錬金工房レベル3になったら魔法研究所ができる。まぁ、まだまだ先だな。とりあえず、ドリンクバーの魔力薬がそろそろできてるはずだから、帰って飲めば魔力が上がるぞ」
「……ん、楽しみ」
と俺がスライムを倒しているうちに、ミスラの魔力が四割くらい回復した。
今度はスライムを持つ選手交代ということで、アムがスライムを持ち、俺が技能レベルも聖剣レベルも低い蒼木の短剣を使ってスライムを倒すことになった。
次々にミスラが回復魔法していき、分裂したスライムを俺が倒していく。
最初はスライムの体当たりにビビったものだが、今の防御力だと痛くもかゆくもない。
文字通りダメージゼロだ。
そして、作業が終わり、アムが持っていたスライムを倒して今日の作業は終了。
スライムの死骸は133匹。
ポーションが24本。
それとレアドロップの素材スライムの涙が手に入っていた。
たぶん、それを落としたのは散々利用されたあげくに殺されてしまった最初の一匹の物だと思う。
「……すみません、トーカ様」
「謝罪よりに先に反省しろ」
「……反省してる」
ミスラは魔力枯渇でぶっ倒れた。
二回目は自分で魔力の管理をしながらやってみろと言ったのに、限界までいってしまったようだ。
魔力枯渇のペナルティは、使用した魔法が不発に終わるだけでなく、魔力が二割に回復するまで動けなくなる。動けない間、魔力回復量は瞑想状態と同じ位まで上昇するのだが、それでも長い時間動けないことには違いない。
戦闘中に魔力枯渇で倒れたら無力どころか足手まといにしかならないのだ。
一応、魔力ポーションを使えば動けようになるのだが、彼女には本気で反省してほしいのでそのままでいてもらう。
「ご主人様、代わりましょうか?」
「いや、俺の方が力が強いからこのままでいいよ。適材適所で行こう。アムは周囲の警戒を頼む」
「かしこまりました」
決してミスラを背負って、あるかないかわからないミスラの胸の感触を確かめようとしているんじゃないぞ?
うん、そんなことしなくても、頼めばきっと触らせてくれる……いや、頼まないけどな。
そんな弱みに付け込むような真似はしたくない。
俺にはアムがいるし、この感覚はどちらかといえば妹をおんぶしている兄のような感覚だ。
妹のリンをおんぶしているときもこんな感じだったと思い出す。
よし、煩悩が吹っ飛んだ。
「……ミスラ、エルフよりは胸があるほう」
「知らないよ、エルフの胸なんて」
俺の煩悩を呼び起こそうとするな。
エルフってそんなに小さいのか?
「ご主人様、私も村の女性の中では胸がある方です」
「それは知ってるよ!」
アムまで何言ってるんだ。
煩悩退散煩悩退散。
まだ昼間なんだぞ。
俺は副村長のツルツルな頭を思い出し、なんとか煩悩を押しとどめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます