第57話 キノコを食べるのは鑑定したあとで
森が見えてきた。
荒地の中に突然森というのも妙な気がするが、トレントがいるというのだから納得だ。
「……トーカ様、大丈夫?」
「何がだ?」
「……さっきのヤンガートレントにまた襲われない?」
なんだ、そのことか。
ミスラの心配は普通の人なら思うことだろう。
「大丈夫だ。ヤンガートレントは通常人を襲わない」
「……昨日襲われたばかり」
「だから、通常だって。昨日のは若い実を取ったからだ。トレントにとって、人間を含んだ自分の木の実を求めてくる生物は、種を各地に広げるために必要な存在だとわかっている。だから、普通は襲わないんだよ。そして、もう一つ。ヤンガートレントには人間の区別がつかないんだ」
他の魔物だったら、見た目、におい、そして発する魔力などで相手の区別がつく。
しかし、トレント系の魔物には人間の区別が一切つかないらしい。
だからこそ、怒らせたら全力で追いかける。
一度見失ってしまったらもう一度森に来たときに区別がつかないから。
これは蒼剣のゲーム内にある魔物図鑑に書かれていたものだ。
そして、その設定は何故かこの世界でも通用する。
ゴブリンやゴブリンキング、その他魔物に関する情報が、蒼剣内に登場する魔物に限れば合致するのだ。
「親父も昔、そう言ってた。あまり知られてない話だと思ってたが、聖者様は物知りなんだな」
「さすがご主人様です」
アムから「さすごしゅ」いただきました。
学校の成績は上の下だが、ゲーム内の知識を競ったクイズイベント(全5000問)を全て暗記した結果、魔物に関する知識にも死角はないのだよ(蒼剣に登場する魔物に限る)。
森の中には薄い赤のマークが点在していた。
これら全部ヤンガートレントだろう。
森の中心部に近付けば、普通の赤、そして一番真ん中には強敵を示す赤が。
「森の中心にはエルダートレントがいるのか……やっぱりトレントの森だな。トレントの森は、普通、植物なんかが育たない環境でもトレントが世話をすることにより、他の植物や動物も育つことができる。だけど、過度にトレントを倒し過ぎるとその世話ができなくなって森の実りが小さくなるんだ」
「……だから昨日、レッサートレントの深追いをしなかったの?」
「そういうこと」
蒼剣内においてもトレントの討伐数に応じて採取ポイントが減るというペナルティがあった。
一応、長時間経過するか、減ったトレントの数だけ畑で種を育て森に還すことで採取ポイントを回復することも増やすこともできるんだが、現実で魔物の栽培はヤバイよなやっぱり。
トレントの森は中心となるトレントの強さにより広さが決まるが、中心にいるのはエルダートレントだから、これ以上森が広がることはないだろう。
ということで、森の中のトレントは無視する。
地図にダンジョンの場所が表示された。
「案内はここまででいいですよ。もうわかりましたので」
「いいのか? 入口まで案内するが」
「はい。ちょっと採取もしていきたいので。ダンジョン探索が終わったら、俺はそのまま自分の村に戻りますから、皆さんによろしくお伝えください」
採取ポイントも一緒に表示されたので、採取していこうと思う。
俺はレベルが上がってもステータスが伸びにくいが、採取によるステータスは大きい。
それに、トレントの森だったらあれが落ちている可能性が高いからな。
「わかった。本当なら俺も採取したいんだが、畑の収穫の方が大変そうだから帰らせてもらうよ。改めて村を救ってくれたこと、感謝する」
レンはそう俺に礼を言って帰って行った。
さて、採取の開始だ。
採取ポイントを移動する。
最初にあったのはキノコ。
ここに生えているキノコは全部同じ大きさ、同じ形、同じ色をしている。
しかしながら、道具欄に入れると、表示が分かれる。
―――――――――――――――――――――
キノコ:5
キノコ:4
キノコ:1
―――――――――――――――――――――
といった感じに。
何故かというと、キノコは鑑定しないと食べてはいけない食べ物だからだ。
鑑定すると「キノコ:食べると体力が回復する」「キノコ:食べると体力が回復するが毒状態になる」「キノコ:食べると体力が回復するが猛毒状態になる」と言った感じに。
今回は収穫できなかったが、中には即死キノコというヤバイキノコもある。
俺が欲しかったのは、今回一個だけ収穫できた猛毒キノコだ。
当然、食べるためではない。
これは今後出てくるであろうボスモンスターに対して非常に有効なアイテム――いや、必須アイテムとなるのだ。
まぁ、出番はまだまだ先だろうから、いまは冷蔵庫に封印となるだろうが。
ちなみに、普通の毒キノコは錬金工房で毒薬の材料に使うだけでなく、解毒ポーションと組み合わせることにより極上キノコにもできる。
ゲーム内だと非常に美味とあるので、錬金工房ができる
そして、次に見つけたのが――
「あった! 蜂の巣だ!」
大きな木の枝に、大きな蜂の巣ができていた。周囲には蜂も飛んでいる。
トレントの森名物蜂の巣!
やっぱりこっちにもあったのか!
「……トーカ様、蜂蜜が好きなの?」
「蜂蜜も好きだが、蜂の巣の一番の特徴は、蜂取りループが使えるんだ」
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