第47話 怪しまれるのは能力を見られたあとで
契約魔法は特に俺に何かをするものではなく、あくまでミスラ自身につけるものだった。
首の後ろに指を当て、魔法の詠唱を行う。
それで完了。
アルフレッドの虚実看破を持ってしても、正式に契約が交わされたとのことで、彼女はダンジョン内で知りえた俺の秘密を誰にも話すことができなくなった。
アルフレッドに礼を言い、改めて三人でダンジョンに向かう。
さっきはダンジョンの入り口で止められた俺たちだったが、ミスラが一緒ということでほぼ顔パスで中に入る事ができた。
町に住んでいるDランク以上の冒険者は80名ほどなので、顔はほぼ全員覚えているらしい。
それと、ミスラの扱いだが、レギュラーメンバーではなくゲストメンバーとしてパーティに登録されている。
まぁ、そりゃそうだろうな。
「……ミスラは戦わなくていいの?」
「大丈夫だ。俺たちが戦うからな」
同年代なので、もうそのままタメ口で話すことにした。
そうだと、俺はミスラにステータスを見ていいか確認する。
この世界のCランク冒険者の実力を知っておきたい。
契約魔法でダンジョン内で得た秘密を洩らせないのであれば、この際利用させてもらおう。
勝手にステータスを見てもバレないとは思うのだが、勝手にステータスを見るのは、他人のプライバシーを覗き見するようなものなので許可をもらう。
彼女はステータスそのものを知らないので、それが何か説明した。
「……そのような魔法聞いたことがない」
「まぁ、俺の秘密の能力ってことで」
「……見ていい」
許可を貰ったので、ステータスを確認する。
―――――――――――――――――――――
名前:ミスラ
種族:ハーフエルフ
職業:魔法研究家
レベル:4
体力:23/23
魔力:59/59
攻撃:15
防御:14
俊敏:20
運:10
装備:四元魔法の杖 魔力のペンダント【魔力+10 魔力向上 呪】
習得魔法:四元魔法 契約魔法
称号:無し
―――――――――――――――――――――
レベルは決して高くないし、ステータスも最初に出会ったときのアムより弱い。
魔法が使えるから、ステータスが低くても大丈夫ということかな?
魔力の値は俺ほどではないものの、一番高いし。
あれ? 習得魔法は、俺の場合使える魔法の名前が出てくるのだが、ミスラの場合はなんか違うな。
魔力のペンダントは呪われていて外すことはできない……と。
まぁ、効果は彼女向きだし、外す必要はなさそうだな。
装備の呪いは万能薬では治せないし。
「……能力を数値化……珍しい。でも魔力の揺らぎは感じなかった……魔法ではない……近いのは鑑定?」
「ある人は、この世界の人にはステータスがあるって言ってたから、てっきりみんなステータスについて知ってると思ってたがやっぱり知らないのか」
「……たぶん、存在はしているのだと思う。それでも、ミスラはそれを数値として明確に知ることはできない」
「私も同じです。レベルが上がる。技能を覚える。強くなる。体感的に理解はできますが、それがどの程度のものなのかは数字ではわかりませんね」
ステータスがある世界でも、ステータスを知る術がないってことか。
さらに、四元魔法について聞いてみると、火、水、風、土を四元とし、それにかかわる魔法を使えることができる能力のことらしい。
魔法を唱えるには各属性の魔力に対応した魔石が嵌められた道具が必要で、ミスラの持っている杖がその役割を担っている。
つまり、四元魔法一つで様々な魔法を使うことができるということだ。
何それズルい。
と思っていたら、地図を見ると魔物が近付いてくる。
現れたのは歩く人骨。
「スケルトンですね」
「最初は俺が倒す――サンダーボルト!」
アムが剣を抜くが、俺が最初に一発雷の魔法を放つ。
蒼剣において、サンダーボルトの魔法には雷の他に聖属性の効果も含まれていた。
神の雷ってところか。
なので不死生物への効果は高い。
その証拠の一撃で倒せた。
「さすがです、ご主人様」
アムが剣を鞘にしまって言う。
「……いまのは雷魔法? 珍しい」
「ああ、最近魔導書を手に入れてな」
「……魔導書? それは是非読んでみたい」
ミスラが興味深げ言うが、見せられるものではないと断った。
前にポットクールに売ろうとしたとき、彼の手をすり抜けた。
あれは俺にしか読むことができない本だ。
「……雷属性の魔石の場所がわからない。どこにある? 見てみたい」
「俺の魔法には魔石は必要ないんだ」
「……魔石が必要ない? そんな魔法聞いたことがない」
「俺には他の人に知られたくない能力がいっぱいあるんだ。契約魔法を掛けてもらったのもそれが理由だ」
「……納得できないが、理解はした」
理解してくれて助かる。
ミスラは理解が早いな。
スケルトンのドロップアイテムは細い骨。
錬金術の下級素材だな。
とりあえず道具欄がいっぱいにならないようならこのままでいいだろう。
「あ、この先にまた魔物が二体いるな。今度はそれぞれれ一体ずつ行ってみるか」
「はい」
「……何で魔物がいるってわかるの?」
「ん? あぁ、俺には周辺の地図を見る力があって、魔物とか人のいる場所がわかる能力があるんだ」
「……なにそれ、聞いたことない」
「そういうものだと思ってくれ」
実際、そういうものとしか説明できない。
気配を読むとか言った方がよかったかな?
でも、嘘を吐いても理解してもらえないし。
と、出てきたのはまたスケルトン二体だ。
アムが短剣を抜き、俺は紅石の剣を生み出して戦う。
うん、やっぱり大した強さじゃないな。
地図でも薄い赤だったし。
どうやら俺もだいぶ強くなったようだ。
「よし、行くか……ミスラ、大丈夫か?」
「……………………トーカ、どこから剣を出したの?」
あ、紅石の剣を生み出す瞬間を見られていたか。
こういうときの言い訳は既に考えている。
そう、魔力の剣だ!
「……その剣から魔力を感じない。収納能力を使った様子もない」
こっちから切り出す前に看破された。
もう正直に話そう。
「あぁ……なんていえばいいかな? これも俺の能力なんだ。武器を生み出す能力」
「……また聞いたことがない能力」
「でも、それが事実だ。受け入れてくれ。今日見たことについては詳しく話せないんだ」
そう言ったらミスラは何も言わない。
ただ、後ろから見られているな。
まぁ、今日限りの関係だし、契約魔法で秘密が漏れることはないんだ。
大丈夫だろう。
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