第45話 街のダンジョン探索は一泊したあとで
俺はさらに小樽を取り出す。
「おや、聖者様は収納の能力持ちでしたか。羨ましいですね」
「(収納能力じゃないけど)便利な能力で助かってます」
嘘をつかないように気をつける。
取り出した酒も全部一樽5000イリスで買い取ってもらった。
十樽で5万イリス。金貨一枚が1000イリスなので、金貨で五十枚だ。
ゾニックは複雑そうな表情をしている。
一日で作った酒がこんな大金になるんだから彼がそう思うのも当然そうなる――
「なぁ、聖者様。それだけ酒を売って、俺たちの分は残るのか?」
じゃなくて、そっちの問題だったか。
大丈夫だ。大樽はお風呂の三杯くらい大きいから、かなりの量が入るし、毎日作ることができる。
村人がさらに増えても飲み切れない量の酒ができる……あ、ミケが一匹で飲んでしまいそうだが。
「それで、他に売りたいものとは?」
「とりあえず、ボロボロの剣300本」
俺は纏めてボロボロの剣を300本取り出す。
剣の山が出来上がった。
アルフレッドは笑顔のまま固まった。
ゴブリンを倒したらいっぱい手に入ったからなぁ。
「それとリザードマンの剣500本」
ボロボロの剣とは別に、リザードマンを500本
さらに剣の山ができた。
「あと、これは魔法の腕輪と指輪130個――あ、これは付属されている効果一覧ね。紙に纏めてかいてきたから」
これもゴブリンが落としたものの中で、俺が使うことのないものだ。
「あと、宝石もいくつか……ルビーとエメラルドとサファイア。こっちは値段を見てもらって買い取ってもらうか決める」
「宝石……って、なんですか、この品質と大きさは!? このような宝石見たことが……全て10万イリスは下回りません」
そうなのか?
宝石って結構手に入るから、金塊よりは価値がない。
ゲームだと売っても5000ドラゴぐらいだったけれど。
「聖者様。こちらの宝石は時間はかかりますが王都でオークションにかけることをお勧めいたします。ルビーとサファイヤの最低落札価格は10万イリスからで、私の予測だと全て50万イリスは超えると思われます。特にこのエメラルドの宝石は色、透明度、重さ。どれをとっても一級品でこれほどのものとなると、魔力触媒としての価値も高くその値段は予想がつきません。最低落札額は50万イリスにしましょう」
「お任せしてもいいですか? 手数料はお支払いしますので」
「もちろんです。お任せください。必ず入札談合は阻止してみせます」
最低額でも十分な気がするが、任せてよさそうだ。
宝石類はまだ予備があるのだが、今回は様子見ということで一種類ずつの渡した。
リザードマンの剣は一本100イリスで、ボロボロの剣でも10イリスで買い取ってくれた。
武器の需要が高まっているらしい。
それと、アクセサリーについてだが、これはポットクールが帰ってきて、彼の鑑定によって値段を決めるので商会預かりとなった。
虚実看破で俺の鑑定が嘘をついていないのはわかるが、数が数だけに商会としても正式に鑑定が必要となるらしい。
今回の俺の査定結果は以下の通り。
酒:5万イリス(うちミケの取り分は4万イリス)。
リザードマンの剣500本:5万イリス。
ボロボロの剣300本:3000イリス。
宝石類:オークション待ち(最低落札額70万イリス)
装飾品:査定待ち(予想額約2万イリス)
また、急ぎ宝石の宝石の預かり証と預かり金を貰った。
預かり金はいわば宝石を預かるときに支払う担保のようなもので、最低落札額の7割、49万イリスを貰った。
隣でゾニックが固まっている。
まぁ、十万イリスとか聞いたことがないであろう額の話が飛び交っていたらそうなるのも無理はないか。
えっと、合計で59万3000イリスか。
金も入ったことだし、この町で一万イリスくらいで泊まって美味しい飯が食べられる宿がないかと尋ねたところ、アルフレッドにそのような宿はないと教えられた。
この規模の町だと宿の数もそれほど多くなく、一番の高級宿でも食事つきで一泊3000イリス程度らしい。
なので、その宿を利用することにすると、紹介状を書いてもらった。
「聖者様、よく平然としてられるな。そんな金貨見たことがないぞ」
「まぁ、金なんて使わなければ食べられない置物みたいなものだからな。じゃあ、宿に行こうか」
「ああ、俺も一緒でいいのか?」
「もちろんだ。ゾニックだけ野宿をさせる聖者がどこにいるんだよ」
「ありがたいよ。聖者様が荷物を運んでくれたおかげで楽ができたとはいえ、四日連続野宿になるのは嫌だからな」
ということで、教えてもらった宿に行った。
宿に入って紹介状を見せると、すんなりと宿泊する許可を貰った。
俺とアムの二人部屋、ゾニックは一人部屋と分かれているあたり、アルフレッドの気遣いがうかがえる。
できればツインベッドでなく、ダブルベッドの方がよかったが。
ただ、隣がゾニックの部屋なのと、壁が薄そうなのでやっぱり夜のあれは自重することになった。
翌朝、俺とアムはダンジョンに向かった。
内側にある高い城壁につけられた重そうな鉄の扉は手前に開くようになっていて、やはり内側からの魔物を警戒して作られていることが見てうかがえる。
ただ、扉は開きっぱなしになっていて、特に検問があったりはしない。
すんなり扉の向こう側に行くことができた。
ただし、扉を越えると雰囲気がガラリと変わる。
強そうな人が多い。
ダンジョン目当てだろうか。
「ダンジョンって人気なんだな」
「ここのダンジョンにはウィル・オ・ウィスプが出るので」
「ウィル・オ・ウィスプ? 火の玉みたいな魔物だよな……なんでそれが出たら人気なんだ?」
「ウィル・オ・ウィスプは倒すと霊魂石を落とします。霊魂石は魔石の一種で、様々な魔道具を動かす道具として使われるので高く売れます」
ドロップアイテム目当てってことか。
ん? あの子たちは何してるんだ?
着ている服などを見るとお金持ちの子供には見えない。
スラム街に棲んでる孤児だろうか?
道の端で子供たちがじっとしていた。
すると、冒険者らしき男が財布を取り出し、付き添いらしい大人にお金を渡す。
お金を受け取ると、小さな子供が彼についていった。
「ダンジョンの案内人として雇ったのか? それとも荷物持ちか?」
「いえ、おそらくウィル・オ・ウィスプをおびき寄せるために使うのです。ウィル・オ・ウィスプは洗礼前に死んだ子供の魂だと言われ、同じような年齢の子供に群がると言われています」
「子供の魂……倒すのが嫌になるんだが」
「あくまで伝承です。単純に弱そうな子供を狙っているだけだろうと母は言っていました」
子供を囮に使うってことだ。
それを聞くと子供が不憫に思えて止めたくなるが、それを止めるとあの子たちはお金を稼ぐ手段を失う。
それは彼らにとって死活問題になるだろう。
根本的な解決方法が見つからないな。
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