第28話 村に帰るのはレベル15になったあとで
もう夕方になった。
ダンジョン内は明るいといっても、疲れが出てきているので今日最後のダンジョン攻略だ。
その最後、俺は池の前に来ていた。
最初に巨大蛙と戦った場所だ。
調べてなかった場所――それは池の中である。
迷路で左手法が通用しないのは縦方向に移動がある場合。
このダンジョンは平面の移動しかなかったが、唯一、縦方向に移動できる場所がこの池だ。
たぶん、池の底が別の場所に繋がっているのだ。
「では、私が先に見てきます」
「待て、アム! 思いっきりが良すぎる」
アムがいつの間にか下着姿になっていた。
既に二度も裸姿を見ているとはいえ、突然のその姿にドキっとするが、それよりあまり危険なことをアムにさせられない。
「俺が先に――」
「カエル程度なら水の中でも負けることはありません。地図を見ることができるのはご主人様だけです。ご主人様に不測の事態が起きたとき私一人では知りようがありませんが、ご主人様でしたら地図で様子を確認することもステータスで現状を把握することもできるのでは?」
……確かにその通りだ。
自己犠牲の精神ではなく、リスクマネジメントを考えての行動となると口が出せなくなる。
彼女が三叉の槍を持って池の中に入る。
六周もしてるだけあって、槍術レベルの上がっているし、レベルも7に上がっている。
推奨レベル10のダンジョンだが、基礎能力が優れているアムなら池の中でも大丈夫だろう。
アムが池の中に飛び込む。
地図を確認する。
アムが池の中に飛び込んだことで、魔物が二種類の行動に分かれた。
アムから逃げる魔物と近付く魔物だ。
アムに近付く魔物はアムより速い。
赤い点とアムを示す青い点が重なった。
戦いが始まったのか。
ここからだと戦いの様子がわからない。
池の中を凝視する。
血っ!?
池から赤い何かが浮かんできた。
まさかアムの身になにか――とステータスを確認するが、アムの体力は減っていない。
地図でも彼女を示す色が移動を始めた。
一度水面に上がってこないのか。
凄い肺活量だな。
ってあれ!?
地図からアムの反応が消えた?
いや、違う。
別の階層に行ったんだ。
地図を見ると、地下二階層が追加されている。
地図の達成率も98%に増えている。
そして、地図はさらに拡張し、念願の百パーセント達成。
アムが一階層に移動し、水面に上がってきた。
「アム、大丈夫か?」
「はい。まだまだ潜れます」
「凄い肺活量だな」
アムがそう言って水から上がったのでタオルを差し出す。
尻尾がすっかり小さくなってしまった。
「途中、ビッグトードとの戦闘になりましたが問題ありませんでした。それと、池の底に宝箱がありました」
隠しマップには宝箱があることがある。というか大抵ある。
だから宝箱があると聞いても驚かなかった。
隠しマップの宝箱の中身は固定。
何が入っているかは予め決まっている。
「中身は?」
「こちらです」
アムが持ってきたのは三本の薬瓶だった。
鑑定で調べる。
「これは……万能薬か」
「万能薬?」
「どんな状態異常でも治す薬だよ」
「どんな状態異常でも――病気でもということですか!?」
「ああ」
「それは凄い薬なのでは?」
ゲームだと割と普通の薬。
錬金工房がだと四種類の店売りの薬を組み合わせることで量産できるからレアというイメージはなかった。
強力万能薬や神の雫と違って体力回復効果もないしな。
でも、この世界だと、病気や呪いなんかも簡単に治してしまうのだから、凄い薬扱いされても仕方がない。
「じゃあ、一本はポットクールに売って、もう二本はポーションと同じように一本ずつ持つか」
「やめておきましょう。恐らく値段がつかないうえに、ご主人様が持っていることが知られたら騒ぎになります。ここぞという時に使った方がいいです」
「……それほどか」
まぁ、日本でも、「ガンを一瞬で治す薬」ってのが限定販売されたら、その値段は天井知らずになるだろうな。
万能薬――恐ろしい薬を見つけたのかもしれない。
そして、今日のダンジョン探索は終わり、翌日、さらに二回ダンジョン探索をして俺たちは一度村に戻ることにした。
尚、拠点クエストのために集めていたトカゲの尻尾は20本手に入れたが、それ以上集めるのはやめた。
リザードマンが逃げるのを待つとか面倒だったし、逃がすより経験値とお金にした方がいいと思ったからだ。
既に俺のレベルは15に達しているし、アムのレベルも8になった。
普通、こんなに簡単に強くなったりしないとアムは驚いていた。
技能といい、ゲームシステムの力がアムにも作用しているのだろう。
レベル15になったことで、体当たりの能力を取得。
これはタックルした相手にダメージを与え、少し後ろに後退させるという脳筋能力だ。
さらに、イリスも23500イリスまで増えた。
村に戻ると、ハスティアが村人に剣術を教えていた。
彼女は帰ってきた俺を見て、頷く。
「強くなったようだな」
「わかるのですか?」
「ああ。先日会った時と比べ、何やら自信に溢れているようだ」
それはレベルが上がったからではなく、大人としての階段を上ったからなような気がするが、強くなっているのは事実なのでそういうことにしておこう。
ハスティアの村人への剣術指南は一昨日から行われていたようだ。
村人たちも本気で剣の稽古を受けていた。
本来なら畑仕事があるから剣を振る時間なんてなかっただろうけれど、今は畑は常に豊作。
しかも水を撒くだけで村人全員お腹いっぱいになるくらいの作物が採れ、さらに蛇肉も食べ放題状態だからゆとりがでてきたらしい。
それと、前回ゴブリンに村が襲われたとき、何もできなかったことで反省しているのだろう。
「そういえば、聖者様。行商人が聖者様の帰りを待ちわびていたぞ」
ポットクールか。
俺も売りたいものがいっぱいあるからちょうどいい。
アムと二人で向かうことにした。
途中、メンフィスとすれ違う。
その途中、彼女は俺を見て明らかに嫌そうな顔をした。
嫌われるようなことをした覚えがないんだが、俺たちの我儘のせいでハスティアを一週間この村に滞在させることになってしまったから怒っているのだろうか?
あとで詫びの品でも持って行ったほうがいいかもしれない。
そう思いながらポットクールの滞在している家に向かった。
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前回の正解は池の中――上下の移動できる場所はそこしか書いてなかったので。
正解者に拍手!
尚、本編では書くスペースはありませんでしたが、現在ステータスはこちら。
回復魔法を覚えたことで、身体魔法の技能が上がっています。
他にも技能各種が結構上がってます
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名前:トーカ
種族:ヒューム
職業:無し
レベル:15
体力94/94
魔力:160/160
攻撃:130
防御:34
俊敏:33
運:11
装備:鱗の守り【防御+2 Crt+1%】銅の髪飾り【防御+2麻痺耐性・中】
特殊能力:聖剣召喚 共通言語
習得魔法:ファイアボール ヒール
戦闘能力:投石 体当たり
回復能力:自動回復
生産能力:天の恵み 鑑定
戦闘技能:剣術(レベル14)短剣術(レベル2)槍術(レベル4)斧術(レベル4)自然魔法(レベル4)身体魔法(レベル1)
生産技能:採掘(レベル5)伐採(レベル7)採取(レベル6)農業(レベル5)釣り(レベル5)
一般技能:瞑想(レベル11)疾走(レベル1)
称号:無し
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―――――――――――――――――――――
名前:アムルタート
種族:妖狐族
職業:奴隷
レベル:8
体力:55/55
魔力:1/1
攻撃:77
防御:35
俊敏:55
運:20
装備:鋼鉄の剣+3 リザードマンの剣 鱗の守り【防御+2、睡眠耐性・小】ハッピーリング【防御+1、運+5】銅の髪飾り【防御+2毒耐性・小】
生産能力:鑑定
戦闘技能:剣術(レベル5)槍術(レベル3)
称号:称号:神の遣いの従者(闇耐性+1)
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