第25話 ゴブリンキング退治は水辺のダンジョン探索のあとで-2

 水辺のダンジョンの攻略は進む。

 アムの言っていた通り、魔物の数が多い。

 空飛ぶ魚――スカイフィッシュが現れたときは流石は異世界だと感動した。

 ドロップアイテムは刺し身だった。

 家に帰ったら醤油があるから生で食べられるのなら食べたいが……大丈夫か?

 ここにあるの全部淡水だが、そもそもスカイフィッシュって、淡水魚とか海水魚とかそういう区分で分けられない。

 鑑定したらわかるか?

 いや、ポチに尋ねるのが一番だ。料理の専門家であり、そして日本の文化にも理解がある。

 スカイフィッシュの死体も収納する。こっちも殺したばかりの新鮮な魚だから、生で食べられるかもしれないが、アムが言うには焼き魚にしたら美味しいそうだ。

 それと、ドロップアイテムでもう一つ嬉しいことが。

 リザードマンを倒したとき、紅の石を手に入れた。

 これで、聖剣を紅石の剣に変化できる。

 紅石の剣はまだレベル1なので、レベル5に上げた蒼木の剣には攻撃力は劣るもののレベルが上がれば強くなるし、なにより火属性の力がある。

 水属性の魔物が多いこのダンジョンでは火属性の攻撃手段は便利だ。ダメージが五割くらい上乗せされるからな。


 地図は8割くらい埋まり、ボス部屋の前に来た。


「ボスの反応が二体……アム、誰がいるか知ってるか?」

「ソードリザードマンですね。剣を持っているリザードマンで、通常個体より大きく、そして素早いです」

「ゴブリンキングよりは弱いと思うが、アム、ポーションはいつでも『つかう』準備をしておいてくれ。昨日ダンジョンに潜ってわかったと思うが、あんなものいくらでも手に入る」

「わかりました」


 俺とアムはそう言ってボス部屋に続く通路に入った。

 手前の扉が閉まり奥の扉が開く。

 中にいたのはアムの言う通り剣を持っているリザードマンが二体。

 色も通常のリザードマンが緑色なのに対し、こちらは深緑色と少し異なる。

 なにより三割増しくらい大きい。

 事前の話し合いの通り、二人でそれぞれ一体のリザードマンを担当する。

 ソードリザードマンの推奨レベルはマップの敵の色から計算して8~16。

 アムのレベルはまだ6なので少し荷が重いかもしれない。

 俺が急いで倒してアムの加勢をしないといけない。


「ファイアボールっ!」


 火の魔法を使い目の前のソードリザードマンに先制攻撃を食らわせる。

 ソードリザードマンは腕で目を守りながらもファイアボールを受けた。

 ダメージは受けているが、怯む様子はない。

 さすがはボスだ。

 紅石の剣とソードリザードマンの剣が重なる。

 鍔迫り合いだ。

 力は俺がやや優勢だが、完全に押し切れない。

 向かい合うソードリザードマンの口から小さな舌が一瞬出た。

 それが合図だったのかはわからないが、次の瞬間、急にソードリザードマンの剣の力が弱まり、その胸に浅く切り込みをいれたが、同時に俺の腹に激痛が走った。

 力比べでは勝てないと判断し、俺の剣を逸らしたのか。

 俺は急ぎ、ポーションを「つかう」。

 ポーションを飲むのではなく、道具欄から使うを選択することで、クールタイムは発生するが一瞬で体力が回復する。

 実際、戦闘中にポーションを取り出して飲んだり患部に掛ける時間などないが、この方法だと魔法のように回復できるから便利だ。

 そして、次は油断しないと俺は再び剣を振るう。

 鍔迫り合いになったが、さっきのソードリザードマンの浅い傷のおかげか、俺の剣が完全に押し切った。

 ソードリザードマンの剣が地面に落ちた直後、俺はその首を切り裂いた。

 返り血が俺にかかるが、気にしている余裕はない。

 ちょうどアムも先ほどと俺と同じように鍔迫り合いを繰り広げていた。

 力ではアムの方が不利のようだ。

 そして、先ほどと逆のことが起きた。

 アムが力を抜いてソードリザードマンがバランスを崩す。

 アムの肩に傷をつけたが、ソードリザードマンに鋭い一撃を与える。

 ただ、攻撃力と防御力の差のせいか、お互いのダメージは拮抗していた。

 ポーションを使ったのか、アムの傷が治る。

 睨み合う両者。

 俺は鞄の中から石を取り出してソードリザードマンに投げつけた。

 アムに集中していたソードリザードマンは突然の投石に対応できずに右目に命中。

 その隙をアムが見逃すはずがなく、彼女の剣がソードリザードマンの胸を貫き、絶命させた。


「ご主人様、御助力感謝します」

「お疲れ、アム。俺の助けは必要なかったかもな」

「いえ、ポーションが無ければ危なかったです。未熟さを痛感しました」

「それは俺も同じだ。未熟だってわかってるから、ダンジョンに来て修行してるんだしな」


 と言ったところで、宝箱が出現した。

 初回クリア報酬の銀色の宝箱と、通常の茶色の宝箱が三つ。

 完全クリアを示す金色の宝箱がない。

 ちょっと時間がかかり過ぎたか。

 ソードリザードマン二体と持っていた剣を収納。

 ソードリザードマンの剣は、やっぱりリザードマンの剣、アムが持っている装備と同じなので持ち帰る必要はない。

 

 続いて宝箱。

 まずは茶色の宝箱を三つ。

 魔力ポーション一本、福引券、鉄塊。

 魔力ポーションと福引券は初出だな。

 魔力を回復させるポーションだ。いまは自動回復能力を使って歩きながら魔力を回復させているが、今後様々な魔法を使えるようになったとき、使うかもしれない。

 福引券は拠点にカジノができたときに使うことができるのがだ、出番はまだまだ先だろう。

 最後に銀色の宝箱を御開帳。

 この瞬間が楽しみなんだよな。

 中に入っていたのは――一枚の紙切れだった。

 それを見て俺は思わず興奮する。


「レアアイテム来たっ!」

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