第24話 ゴブリンキング退治は水辺のダンジョン探索のあとで-1

 ゴブリンキング退治の期限まで残り六日。

 俺とアムは水辺のダンジョンに向かっていた。

 昼過ぎにダンジョンに到着したいため、朝早くに出発した。

 朝早く……か。

 昨日、あんなことがあったのに、よく早起きできたものだ。


「アム、大丈夫か? その、体調が悪いとか歩きにくいとか」

「そのようなことはありません。体調は万全です」

「本当のことを絶対に言ってくれよ。」

「本当に万全です」


 嘘じゃない……よな。

 ステータスでも、アムの体力は35/35。

 数値が全てではないが、なんとなくアムの肌がツヤツヤしている気がするし、大丈夫だと信じよう。

 目的の水辺のダンジョンに到着したのは昼過ぎだった。

 水辺のダンジョンは大きな池の近くにある崖の階段を下りたところにあった。

 階段部分は明らかに人工物だが、手入れはあまりされていないようだ。

 マップを確認するも、中は表示されない。

 迷宮型のダンジョンで間違いないな。

 中に入ると、周囲のマップが僅かに解放される。

 敵の表示もあった。

 赤いマークの魔物と薄い赤のマークの魔物がいる。

 赤いマークの魔物といっても、リザードマン討伐の推奨レベルは10なのでレベル10前後の魔物とみて間違いないだろう。

 俺のレベルは12、うん、倒せる。


「アム、魔物のいる方向に行くぞ」

「はい、お伴します」


 水辺のダンジョンは、あちこちに水たまりのようなものがあり、湿気も多く、空気もあまりよくない気がするが、魔物の数は前に行ったダンジョンよりは多そうだ。

 最初に出てきたのは大きなカエルだった。

 皮膚がテカテカしている。

 攻撃としては舌を伸ばすか、その巨体で押しつぶすかの二つに一つ。

 舌を伸ばすって、それで攻撃になるのか? と思うが、舌が接着剤のようになっていて、それで捕らえた獲物を丸のみにするらしい。

 近付きたくない。

 ファイアボールを一発お見舞いする。

 カエルが炎に包まれ、皮膚が黒くなるが、まだ死んでいない。


「倒せないか。行くぞ」

「私も行きます!」


 二人で突撃した。

 俺より足の速いアムがカエルの側面に回り込み、浅い傷を作る。

 カエルはアムを押しつぶそうと上に大きくジャンプをしたが、彼女はすぐに横に飛んで躱す。

 着地した後のカエルは隙だらけで、アムと反対側に回り込んでいた俺にも気付いていない。

 大きく跳んだ俺は、蒼石の斧を生み出し、振り下ろした。

 地図からカエルの反応が消える。

 倒したようだ。

 ドロップアイテムは蛙肉……うん、ドロップじゃなくても目の前に新鮮な死体が転がっているからそれで十分だと思うのだが。


「ご主人様、お疲れ様です」

「アムこそお疲れ。カエルは収納しておく……食べれるのか?」

「はい。蛇肉より癖が少なく美味しいです。運ぶのが面倒なので村で食べられることはありませんでしたが、持ちかえれば皆喜ぶと思います」

「そ、そうか……牛や豚の魔物とかはいたりしないか?」

「中難度のダンジョンでしたら、オークなどの豚型の魔物はいますが、このあたりにはないですね」


 豚といえばオークなのか。

 二足歩行であるく豚だよな?

 あまり食べたくないが……ってことは、牛肉を食べたいといったら、ミノタウロスと戦うのだろうか?

 地図を見ると、近くの池の中に薄い赤のマークがあるのだが、出てこないな。

 スライムのように普段は水の中に身を潜めているのかもしれない。


「ご主人様、どうなさったのですか?」

「ここで釣りをすれば魔物が釣れるのかなって思って」

「魚型の魔物は池の中から出てこないので、釣れると思いますよ。糸を食いちぎられなかったらの話ですが」


 釣り竿は一応持ってきている。


「んー、糸はグリーンキャタピラーのドロップアイテムが十分あるけど、針が少ないからそれは困るな。いっそのこと、ファイアボールを使って池の水を熱湯にしてみる……いや、俺の魔法だと力不足だな」


 池の水を全部抜く――みたいな業者さん来てくれないだろうか?

 雷魔法とかがあれば、電気ショック漁法ができそうなんだが。

 無いものねだりは辞めよう。

 池の中の魔物は諦め、先に進む。

 アムもここに来るのは幼少の頃以来のため地形は覚えていなかったが、マップのお陰で道に迷うことはない。

 途中、リザードマンが出てきた。

 一度に五匹出てきたときはビビったが、戦ってみると大したことはない。

 こいつら、カエルより弱い。 


(お、いまの感覚――たぶんクリティカルが発動したな)


 1.4%の運(装備の効果で+1%、斧術技能で+0.4%)をここで使うのは勿体ない気がするが、クリティカルは発動してみると爽快感が凄い。

 斧術の技能レベルをさらに上げたくなる。

 その快感をもう一度味わいたく、最後のリザードマンは一匹になると逃げだした。

 アムが追いかけようとするが、


「アム、追いかけなくていい」


 というと、アムが剣を鞘に収めた。

 道具欄を確認する。

 トカゲ肉が四つ、そしてトカゲの尻尾が一つ、最後にリザードマンの剣が一本追加されていた。

 剣を持っているリザードマンは一匹もいなかったが、ドロップアイテムとしては存在するのか。

 シミターのような少し曲がった剣だ。


【リザードマンの剣:攻撃+4。リザードマンが持っている剣。どこで手に入れているのかは謎】


 うん、まぁこの程度だよな。


「アム、ボロの剣よりは強いからこっちを使ってみるか?」

「はい、ありがとうございます……これは使えそうですね」


 アムは左手でリザードマンの剣を持つと、振り回した。

 やっぱり器用だな。

 俺にはもったいないくらいの仲間だ。


「ご主人様。これまで使っていた剣ですが、ご主人様からいただいた最初の剣ですので、大切に保管させていただいてもよろしいでしょうか?」


 さらに、こんなことを言うから可愛すぎる。

 もちろん、それはアムにあげたものだから好きにしてくれていい。

――――――――――

次回、ダンジョンボスのお話を今日中に更新予定。

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