第12話 ダンジョン探索はポーションを売ったあとで
アムを買い取るためにポットクールの一週間を買い取った俺は、早速――
「それで、このポーション。傷だらけのアムを一瞬にして治したんですよ。鑑定を持っているあなたならこの価値わかるでしょ?」
ポットクールと商談していた。
あんな啖呵を切っておいて――って思うかもしれないが、俺はポットクールの商売人としての考えそのものは認めている。
鑑定スキルを持っているから物の価値を正しく判断でき、それでいてこの村の中で一番金を持っている。
俺が商売をする相手はポットクールしかいないのだ。
「ええ、魔法薬は貴重ですからね。なるほど……わかりました。一本1000イリスで買い取りしましょう」
物の相場を知らない俺は、後ろにいた村長を見る。
村長は頷いた。
買い叩いたりしていない、相場通りの値段らしい。
それを聞いて俺は、
「さっき勉強してくれるって仰ってましたよね! ならもう一声!」
値上げ交渉した。
「わかりました。1200イリスです。運ぶときのリスクを考えるとこれ以上は上げれません」
「ありがとうございます。じゃあ、これからも買い取り頼みますね」
ポーションはもう一本あるが、万が一を考えると今は売れない。
さて、次に。
「……聖者様」
村長が俺に何か言いたそうにしている。
「わかってます。村としては仕方のなかったことだと。とりあえず一週間稼げましたので、みんなはお金に換えられる作物を育ててください。俺が祈祷した畑なら高品質のものが早く育ちます。魚を取って来てくれたらポチが燻製にしてくれますので、それも売れるでしょう」
「わかりました! みんな、急げ!」
村長の命令で、村人たちが一斉に仕事に取り掛かる。
「それと、このあたりにゴブリンの巣以外に弱い魔物がいっぱいいる場所はありますか?」
「それだったら、北のダンジョンだな」
「そんなところがあったんですかっ! そのダンジョンは迷宮型ですか? それとも巣窟型ですか?」
「迷宮型だ。もっとも、財宝などはほとんど出ないし、弱い魔物しか出ないぞ?」
弱い魔物しか出ない――それはむしろ好都合だ。
「案内を頼めますか?」
「任せておけ!」
くそっ、そんな場所があるなら先に言ってくれよ。
聞かなかったし、必要だとも言わなかったんだが。
道具欄をポーションだけにして、保存食のスナックバー数本とポチのお弁当、水二リットルを鞄に入れる。
俺は村長の案内でそのダンジョンに向かった。
ダンジョンはゴブリンのいるダンジョンより遠い。
村長はアムほど足も速くないので、到着したときには昼過ぎになっていた。
見たところ地下に続く洞窟のようだが、中は明るい。
マップを確認すると、ダンジョンを示すマークがついていて、中の様子はここからだとわからない。
ただの洞窟じゃないのは確定だな。
「じゃあ、村長さん。行ってきます」
「待て待て、俺を一人で置いていくのか!?」
「え? でも魔物もここまで出なかったし一人で戻れますよね?」
スキンヘッドのおっさんが寂しがっても萌えたりしないぞ?
「頼むよ、聖者様。俺もつれていってくれ。荷物持ちくらいはできるぞ?」
「収納能力があるから必要ありません」
「だったら、肩でも揉むからよ」
「凝ってないから必要ありません。わかりました。でも、俺の指示には従ってくださいね」
「わかった。絶対に従う」
おっさんは何度も頷いた。
こんなことならパーティ登録してくればよかった。
そう思いながらダンジョンに入る。
マップを確認すると、ダンジョン専用マップに切り替わった。
魔物の気配がいくつかする。
ただし、全部薄い赤、つまり弱い魔物ばかりだ。
とりあえず魔物のいる方向に向かう。
最初に見つけたのは子犬くらいの芋虫だ。
「グリーンキャタピラーだ。解体して得られる糸は安いが売りものになります」
「じゃあ倒しますね」
蒼剣にはいなかった魔物だ。
蒼木の槍で倒す。
一撃だ。
ドロップアイテムに「糸」、お金は4イリスか。
「聖者様、死体はそのままでいいのか?」
「さすがに運べませんよ。解体する時間も勿体ないので」
「だったら、何故ここに?」
「いろいろあるんです」
俺はそう言ってさらに魔物のいる場所に向かった。
いたのは大蝙蝠(大きな蝙蝠)、いたちもぐら(いたちのようなもぐらのような魔物)、そしてスライムだった。
スライムを倒してポーションが出たのは嬉しいが、それ以外は目ぼしいドロップアイテムはない。
「聖者様、あれはクレイゴーレムだ。このダンジョンではボスの次に強い魔物だ」
「ええ、そのようですね」
現れたのは、一メートルくらいの土人形
マップの色は普通の赤、つまり俺と同レベルの魔物ってことだ。
とりあえず、鞄の中に入れてある、釣りで手に入れた丸い石を投げる。
すると、丸い石は砕け、クレイゴーレムの動きが止まった。
この丸い石、ゲーム内にも登場するアイテムで、相手に投げて命中すると、スタン――相手を一時的に動けなくする効果がある。
クレイゴーレムが動けない隙に、俺は槍でその頭を突いた。
一撃で倒せない。
クレイゴーレムが動き出し、大きく振りかぶる。
俺はさらに前に出た。
次の攻撃で倒せなかったら、間違いなくクレイゴーレムの拳が俺に当たる。
結果、賭けは俺に軍配が上がり、クレイゴーレムの攻撃が当たることはなく、倒すことができた。
「ふぅ」
ステータスを確認する。
―――――――――――――――――――――
名前:トーカ
種族:ヒューム
職業:無し
レベル:8
体力59/59
魔力:115/115
攻撃:84+4
防御:20+2
俊敏:19
運:11
装備:無し
特殊能力:聖剣召喚 共通言語
戦闘能力:投石
回復能力:自動回復
生産能力:天の恵み
戦闘技能:剣術(レベル12)短剣術(レベル2)槍術(レベル1)
生産技能:採掘(レベル5)伐採(レベル7)採取(レベル6)農業(レベル5)釣り(レベル5)
一般技能:瞑想(レベル10)疾走(レベル1)
称号:無し
―――――――――――――――――――――
レベルが8に上がった。
槍術技能レベルが1上がり、攻撃が4増えた。
さらに、蒼木の槍のレベルも2に上がっている。
実戦は技能の成長も早いな。
そして、ドロップアイテムの確認もする。
すると、見つけた。
蒼の石――蒼石の斧に進化するための条件が整った。
蒼の石を取り出し、蒼石の斧を解放する。
まぁ、斧は攻撃力は高いが俊敏が下がるので今は使わないが、斧術の技能レベルを上げると、攻撃が3増えるだけでなく隠しステータスの
さらにダンジョンの奥に進むと、ボス部屋があった。
地図にもちゃんとボス部屋のマークがついていて、中には俺と同レベルの魔物が。
ゲームだと、同レベルっていうのは、倒すのにちょうどいい魔物って意味の言葉だ。
だから、余程の事がない限り勝てる。
さて、これがゲームと同じ仕様なら、きっとこの奥にはあれがあるはずだ。
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