第4話 人里を目指すのは強くなったあとで
スライムを倒した後ステータスを見ると、体力の値が1減っていた。
たった1でこの痛さ――これ、体力がさらに減るようなダメージくらったらどうなるんだ?
痛みに耐えるための技能ってあっただろうか?
考えながらも、俺は起き上がって瞑想をする。
徐々に腹の痛みも消えてきた。
痛みがなくなったところで道具を確認すると、所持金が6イリス増え、そしてポーションが一つ入っていた。
どうやら、魔物を倒すとお金とドロップアイテムが増えるのもゲーム通りらしいな。
スライムが池の外に出てくる気配はない。
本当なら五匹倒したかったが、全部倒せてもレベルが上がるわけではない。
それより、いまは強くなることだ。
そのためにも採取レベルを上げたい。
ここは採取ポイントだ。
採取ポイントは、役に立つもの――薬草や木の実などが落ちている場所のことで、これを手に入れることで採取の技能経験値が増える。
ここで採取ポイントとなりそうな場所は――
(これか?)
赤い花が泉の周りに生えている。
とりあえず、抜いてみる。
これだけでは何の花なのかわからないので、一度道具に収納。こうすることで、採取したものの名前がわかる。
名前は……マナグラス(G)。ゲームだとマナポーションを作るための素材だった。
Gというのは、素材の品質で、最低ランクだ。
採取ランクもそうだが、マナグラスの設定では根っこの部分が薬になるからな。
引っこ抜くとき、その根の大半が千切れてしまったので、こうなるのは仕方ない。
とりあえず、道具袋から鞄を取り出し、鞄の中にマナグラスを入れておく。
今後、調合道具が手に入ったら役に立つだろう。
さらに、泉の近くに生えている木に着目した。
落ちていたのはドングリのような木の実だ。
拾って名前を確認。
ドングラの実(C)。
名前だけだと何かはわからないが、種の一種なのは間違いない。
これはラッキーだ。
後で使うとしよう。
マナグラスとドングラの実を集められるだけ集めた。
ゲームだと一カ所の採取ポイントでアイテムを見つけられるのは一回だけだったが、現実では落ちているだけ集めることができる。
まぁ、その分復活までのクールタイムは限りなく長いだろうが、採取技能はレベル4まで上がり、体力が4増えた。
そして、木の剣で地面に穴をあける。
ツルハシのような道具じゃないので穴を掘るのも一苦労だが、とりあえず小さく掘る。
そこにドングラの実を入れた。
さらに、土を被せ、ペットボトルで池の水を汲んで撒く。
木の実を植える、一日に一度水を撒くの行動は、農業技能の成長に繋がる。
ゲーム内だと、拠点の畑にしか農作業ができなかったため、この農業の技能経験値を上げるのも大変だったが、こっちではどこに種を植えても怒られない。
結果、これもゲームより早く上がる。
農業技能のレベルが3に増え、体力も3増えた。
……これ、植えた実をほじくり返してもう一回植えたら経験値にならないかな?
気になったので試してみた。
何十回とやってもレベルは上がらならなかった。
世の中、そんなに甘くはないらしい。
とりあえず、池の水は澄んでいるがそのまま飲むのは怖いので、服を洗ったり頭を洗ったりするための水として持ち運ぶことにし、池から離れた場所で野宿をすることにした。
スライムは弱いとはいえ、さすがにスライムのいる場所で野宿はできない。
段ボール布団にもだいぶ慣れてきたが、そろそろちゃんとしたお布団で寝たいと思う。
スライムを枕にしたら気持ちいいだろうか?
翌朝、池の近くに行くとまたスライムがいた。
日向ぼっこをしているのか、七匹も寛いでいる。
俺は躊躇せずにスライムを倒した。
昨日みたいなヘマはしない。
そして――
レベルが上がっていた。
―――――――――――――――――――――
名前:トーカ
種族:ヒューム
職業:無し
レベル:2
体力18/18
魔力:73/73
攻撃:56+4
防御:8+2
俊敏:5
運:10
装備:無し
特殊能力:聖剣召喚 共通言語
戦闘能力:投石
戦闘技能:剣術(レベル10)
生産技能:採掘(レベル5)伐採(レベル5)採取(レベル4)農業(レベル3)
一般技能:瞑想(レベル7)疾走(レベル1)
称号:無し
―――――――――――――――――――――
体力が5、それ以外が2増えている感じか。
ゲームの主人公より成長の伸びが悪い……というか、成長率が悪すぎる。
蒼剣の主人公の五分の一くらいしか成長していない。
才能の差か?
俺は技能によるステータス補正で生きるしかないらしい。
だが、能力を取得していた。
石を投げる投石能力――投石によるダメージ上昇と命中補正か。
……うん、まぁ使える……か。
能力は育ててもステータス補正はないのだが、遠距離攻撃できる手段があるのは嬉しい。
さらに、蒼木の剣のレベルも2に上がっている。
ポーションは2つドロップして、合計3つになった。
とりあえず、ペットボトルで水を汲み、昨日植えたドングラの実に水を撒く。
その後は、木に向かっていつも通り伐採のレベル上げ。
たまに落ちてくるドングラの実は昨日と同じように植えて、水を撒く。
時々、スライムが池から出てくることがあるので、それを見かけたら倒す。
夜は昨日の場所で野宿。
そんな生活がさらに暫く続いた。
―――――――――――――――――――――
名前:トーカ
種族:ヒューム
職業:無し
レベル:7
体力49/49
魔力:113/113
攻撃:72+8
防御:18+4
俊敏:15
運:10
装備:無し
特殊能力:聖剣召喚 共通言語
戦闘能力:投石
回復能力:自動回復
生産能力:天の恵みⅠ
戦闘技能:剣術(レベル12)
生産技能:採掘(レベル5)伐採(レベル7)採取(レベル6)農業(レベル5)
一般技能:瞑想(レベル10)疾走(レベル1)
称号:無し
―――――――――――――――――――――
結果、レベル7に上がった。
この世界に来て一カ月――ゲームの主人公ならとっくに魔王を倒しているくらい強くなっているが、現実ではこんなものか。
でも、かなり強くなったと思う。
いまでは、投石でスライムを倒せるまでに成長した。
瞑想レベル10で手に入れた自動回復は体力や魔力の自然治癒速度を上げる能力。
農業レベル5で手に入れた天の恵みⅠは畑の状態を一段階上げる能力だ。
そろそろこの場所での成長もきつくなってきたし、飲料水が少なくなってきた。
「そろそろ人里を目指すか」
さすがに人恋しい、野宿辛い、まともな食事欲しい、風呂入りたい、着替えの服が欲しい、最低限度文化的な生活がしたいと、人間らしい欲求が溢れている。
それにしても、水辺だというのにスライムしか出てこない場所だったな。
この世界って魔物は少ないのだろうか?
等と考えながら、とりあえず東に向かって走った。
身体が軽い。
俊敏が15に増えたおかげか、脚がかなり速くなった。
これなら陸上大会に出たら短距離走、長距離走ともに優勝できそうだ。
思えば、この世界に来たときの俊敏の値って1だったから、ざっと15倍だもんな。
単純に15倍速くなったわけではないだろうが、それでもこの成長を肌で感じる。
スタミナ切れになるまで走らないので疾走技能経験値はたまらなかったが、一日でかなり進んだと思う。
だから、見えてきたのだ。
地図で確認すると、白いマークがいくつか見える。
NPCがいる村だ。
だが――
「え?」
その白いマークの周囲を赤いマークが囲っていた。
近付いてわかった。
どうやら、俺が目指している村は、ゴブリンの襲撃に合っている最中らしい。
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