第17話【ひとりかくれんぼ】【1】




あれから数日が経ち、その後は何も起きず21日を無事に迎えた今日は宿泊研修当日、キャンプをする施設へとやって来ていた。


荷物を下ろし終わりこれからやる事の説明を受けた俺達は各班分かれて各自やる事を始めている


俺と圭、川岸は先に薪割りをやる事にして他の班らが薪を割る為に集まっている場所へ向かった


加藤、依田には夕食のカレーを作る為の調理準備をしてもらっている



《パキッ》


「っし」


「何か麻倉達、薪割るの上手くない?」


「キャンプやった事あっからな」


「僕も経験があるからね」


「薪割り終わった?」


「お、加藤。今終わった」


「こちらも調理をする為の準備は終わりました、ではテントを貼りましょう」


「そうだね舞也ち」


「ちゃっちゃと終わらせっか」


「そうしよう」



一緒に薪を割っていた他の班も終わったのかテントを張るため各班行動を始めた


一班に一つテントを張る事になっている。ちなみに行動するのは班ではあるが就寝時は男女別のテントで寝る事になっている。当然だが


無事にテント張りも終わらせ

カレーを作る為の準備を始める


…そういや、こいつら料理できんのか?



「まずは野菜を切ろうか」


「…まて圭なんか危なくねえか?」


「何がだい?」


「切り方だよ!手ぇ切るぞお前」


「大丈夫だよ。まあ見てて」


「見てらんねえから言ってんだよ!ああもうピーラーしてろ!」


「玉ねぎってどこまで剥けばいいの?」


「ちょ、加藤!待って」


「あ?って加藤お前玉ねぎ皮剥きすぎだ!」


「私はどうすれば?」


「じゃあ依田は皮剥き終わった野菜切っといてくれ」


「分かりました」


「肇、人参はどこまでが皮なんだい?」


「お前…!人参のつま作ってんじゃねえんだぞ!どうやったらそんな細くできんだよ!」


「肇は大袈裟だね。ちょっとピーラーの使い方を間違えただけだよ」


「はあ…圭が料理できないなんて思わなかった」


「舞也ち?何か野菜デカくない?」


「今度は何だ」


「そうですか?歯ごたえがあっていいじゃないですか」


「おい待てそれじゃ歯ごたえしかねえわ」


「…すみません。あまり料理しないもので」


「舞也ち、せめてそれのもう半分にしよう」


「…俺は米といでくる、川岸見張り頼んだ」


「うん任された…!」



やべえ川岸しかまともなのがいねえ…!

圭が予想外すぎた、そういや圭って料理できなかったか…クソッ前の事覚えてりゃ人参は犠牲にならなかったのに…!


アイツらに米とがせたら米全て流す気しかしない。とりあえずさっさとといで終わらせるぞ



「あれ?肇くんじゃないっすか」


「お、篤」


「いやーびっくりっすよ!まさか栞ちゃんが料理苦手なんて」


「ああ…あいつもだったな」


「料理得意そうだと思ってたのに人参のつま作ってたっす。これじゃオレらの班だけ人参が激細っすよ」


「そっちもかよ」


「え?まさかそっちもヤバいのいるんすか?」


「ヤバいのしかいねえよ川岸以外」


「うわあ大丈夫っすか…?」


「お前は料理できんのか?」


「人並みっすね得意ではないっす。肇くんは?」


「割と得意だ」


「お!意外っす!!」


「…昔、俺の家族と一緒に栞の家族もいれてキャンプした事があるんだよ」


「へえ良いっすね」


「んでそん時BBQやるのに栞が手伝ったら、近くに親達がいたのにもかかわらず」


「かかわらず?」


「炭ができた」


「ん?」


「それから俺はこいつに任せたら終わりだと分かって必死に料理を覚えた」


「ちょっと待ってくださいっす」


「何だ?」


「BBQで焦がしちゃうのって良くあるっすよね?炭って」


「…一個二個焦がすくらいだったら良かったんだけどな」


「…まさか」


「全滅だ。あの時食ったカップラーメンの味は忘れない」


「ええぇ…」



そう話してるうちにとぎ終わり、篤と別れ

自由な三人に困り果てている川岸の助けに入った






「よーし、一組全班終わったな。飯の時間までにテントに荷物を運んでおけよー」


「はーい」


「二組もお疲れ様!荷物運び終わったらここに集合ね」


「三組!まだ終わらないのか!…すみませんお二人とも」


「いやー、まだ時間は少しあるし大丈夫ですよ」


「そうですよ原先生。生徒達も頑張ってやってるんですから…」


「今年は特に自由な生徒が多くて…困ったものです」


「三組は特に目立ちますからね…見た目からして派手な子が多いですし」


「いやいや二組の子には負けますよ。この前、宇宙の波動を感じるっていって飛び出していったの三組まで聞こえてましたよ」


「ははは…」



先生達の会話を尻目にテントへ荷物を運ぶ

こうして見るとこんだけのテント張れるほどの敷地すげえな


さっきまで無かったはずのテントは俺らが料理してる間に先生達が張ったのか


テントの入り口に名前が書いた紙が貼られてる、どうやら一つのテントに四、五人寝れるみたいだ。自分の名前が書いてあるテントに向かう


っと、俺のテントはこれか


誰と一緒だ?



Cグループ

麻倉肇、加藤衣孤眞、日向篤、宇宙洸うちゅうこう



Cグループって何だ?


圭とは離れちまったか、二人は知ってるやつで良かったけど宇宙って誰だ。こんな苗字いるんだな篤が騒ぎそうだ



「宇宙?」


「な、何や…」


「あ!お前この前の関西弁」


「アッ…この前はドウモ…確か自分、麻倉とか言ってた…」


「お前が宇宙?」


「そうやけど…やっぱ珍しいん?」


「まあな」


「まあせやろな……これ、自分の?」


「?いやそのリュック二つは俺のじゃねえよ。多分加藤のやつ」


「…さよか。ならええわ」


「肇くん!さっきぶりっすねえ!オレのテントってここっすか?」


「おー。ここ俺と一緒」


「!マジすか!?嬉しいっす!あれ?キミは誰っすか?」


「アッ…陽の者や…」



何故か灰になりかけている宇宙

…篤に名前教えたら何か面倒臭そうだな



「?名前なんていうんすか?まあ良いっす。この紙…見れ…ば…!!!!」


「篤。いいか、気持ちは分かるけど落ち着けよ」


「あ、麻倉くん」


「加藤まだいたのか。リュックあったからもう戻ったのかと思ったわ」


「ちょっと忘れ物しちゃって」


「つうかリュック二つもいるか?」


「へへっ荷物が入りきらなくて」


「ッッキミ!!宇宙くんっていうんすか!!!!」


「ヒエッ!!」


「ひょあぁ!?びっくりした…!」


「やっぱりな…」


「ハイ…宇宙洸いいます…」


「何て素晴らしい名前…!やっぱり宇宙は好きなんすか!?洸くん!!」


「もう下呼び…!これが陽キャ…!」


「宇宙人の事はどう思うっすか!?あっ最近オレ宇宙人様本人に会ったんすよ!ふっふっふ…!羨ましいっすか?よければ今度一緒にUFOウォッチングとかどうすか?いい場所知ってんすよ。何故か偶にしか辿り着かないっすけど」


「え…ナンパ…?俺ナンパされとるん…?」


「篤どうどう。悪い、こいつの事はこういう生物だと思ってくれ」


「オレ馬じゃないっすよ!」


「そういうアレか…理解したわ……それより自分」


「ん?どうした」


「ちゃう麻倉やないそこのお前。自分や自分」


「え?ボク?」


「…あれに何入れとる?」


「何って…タオルと変えのパンツとか」


「そういうのちゃうわ。何か入れとるやろ」


「…別に変なのじゃないよただのぬいぐるみ!ほら」



そういって加藤がリュックから取り出したのは30センチ程の大きさの犬のぬいぐるみ。しかしそのぬいぐるみの腹は一度切り開いたのか不恰好に縫われており異様に感じる


加藤には悪いが何だかとても不気味だ。縫い目もそうだが何かが酷く恐ろしい



「…自分、持ってて何もないんか?」


「…何だこのぬいぐるみ腹縫い目凄いな」


「可愛いわんちゃんすねえ。でもお腹可哀想っす」


「えへへ可愛いでしょ?ボクの大切な子なんだ」


「二人はいらうんやないで…なんで平気なんや自分。…というより何に使うたんやそれ」


「ひとりかくれんぼ。ボク降霊術するのが趣味で、この子のお腹縫うの難しかったけど不器用なりに上手く縫えたと思うんだ!」


「っはー。信じられへんわ……原センにテント変えてもらえへんか言うてみよ…」


「…やっぱり何かヤバいのか?このぬいぐるみ」


「いらうってなんすか?」


「…すまん気にせんでええわ。二人はそれ触らんようにな、ほな俺はもう行くわ」


「あ!待ってくださいっす!まださっきの話の続きが…!」


「っア、聞く、聞くからあんま寄んといて…!うっ眩しい…!これが陽の者のオーラ…!」



そう言って荷物を置きテントから離れる宇宙。それをリュックを投げるように置いてから追いかけて行く篤に大袈裟に反応しながら歩いて行った



「酷いなあこの子が何か悪い事するみたいに」


「…なあ加藤そのぬいぐるみっ…て、ッは…?」


「?どうしたの麻倉くん」


「今、そいつ」



気のせいか?…気のせい、だよな


する訳がないのに



ぬいぐるみが瞬きをした気がした



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る