第15話【電車、記憶】【2】
「今日の1時間目は前回話し合いが終わらなかった来週の宿泊研修の最終班決めをするぞ。お前らー、今日こそは班を決めてくれよな」
「えー。私、鏡本くんと同じ班が良い…」
「私らだって鏡本くんと一緒の班が良いし!」
「本来だったら今回は最終確認と注意事項を話す予定だったんだ…。頼むぞお前ら、これ以上は先生困るからな…」
流石の人気だな、圭…
結局、朝の電車は無事に終わった。
昨日の圭が考えた回避方法とは…
『線路側から離れてしゃがめば良い。椅子に座っているだけでも良いね』
『は?それだけか?』
『それだけだよ。単純な話だろ?ホームから落ちなければ良いんだから』
『…今までの私ってどうやって肇を助けてたんだっけ、こんな簡単な事思いついてたよね…?』
『俺らに聞くなよ。思い出せない以上、圭が言った通りにしようぜ』
『回避したか分からないってこの事だったんだね』
『そうだよ。事故が起こらないようにしてしまうから事故が起こる筈だったのかが判別できなくなってしまう』
『事故が起こったか起こってないかが分からない…大丈夫…なのかな』
『しょうがねえよ、事故が起こるのが今年なのかも分からねえんだ。この方法にしよう』
『うん…』
と、いう方法だ。
確かに単純だが、確実に回避する事ができる思いつきそうで思いつかなかったな…
その代わりのリスクはちょっと不安だが、記憶が薄れている事に気づくのが遅すぎたせいで他の方法を考えてる時間が無かった
それでも上手く回避できている…筈
後は帰りの電車だけだ
っと、考えてる間に班決めが始まってたな
班は五人一組。俺、圭、川岸はすぐに決まったが女子達の圭争いが凄くて未だ班決めが終わらずいる
「でもとりあえずは無事で良かったよ肇」
「まあな。後は帰りだけ気をつければ」
「なに?何の話?」
「いや何もない」
「…とりあえず僕達三人は決まってるから後は二人だね」
「鏡本って人気だから女子の争いまじでヤバめだもんねー」
「本当どうすんだよ?誰選んでも恨まれそうじゃねえか?川岸入れた時も視線が痛かったし」
「ウチ、鏡本にはそういうの無いのにぃ…」
「仲良いから固まっただけなのにガタガタいうのが悪いんだから気にすんな」
周りの争いを全く気にせず涼しげな顔をして手元の宿泊研修のプリントを見ている圭
腹立つくらい顔良いよな、本当…
『この女男』
そういえばあの時のドッペルゲンガー
圭に女男って言ってたな。別にそんなに女顔してる訳じゃないのに
「なあ川岸。圭って女顔か?」
「え、なにその質問。うーん…ザ・男って感じじゃないけど、別に女顔って訳じゃなくない?身長も高いし客観的に見ると王子って感じ」
「だよな…」
そんな話をしていると女子が周りから集まってきた。どうやら圭の事しか見えていないようで圭にのみ話しかける
「ねー鏡本くんアタシらもこの班に入れて?」
「私達も鏡本くんと仲良くしたかったの」
「…どうしようか肇」
「俺に聞くなよ」
「僕としては誰でも良いんだけど」
「お前なあ…」
「あ、女顔といえば。ねえ加藤ウチらと同じ班なんない?」
「ぅえ!?ぼっボク?」
「加藤か、いいじゃん俺らと組もうぜ」
「へあ〜…よりによってこの班かあ…」
そうだ女顔といえば加藤がいたか
彼は
正真正銘男だが女にしか見えないレベルのかなりの女顔、髪の毛が短いのもボーイッシュな女の子と思ってしまうくらいだ。…声聞くと普通に男だが。
加藤ってなるともう一人はあいつで決まりだな
「依田、俺らの班に入らねえか?」
「え、私ですか?…良いんでしょうか?」
「全然良い。むしろ入ってくれ他の女子は班に入れにくい」
「そういう事ならいいですよ」
「あー!依田ちゃんがいたじゃん!」
「よろしくお願いします。川岸さんに麻倉さん鏡本さん、加藤さんも」
「依田さん、よろしくね」
「う、うん。ボクも…皆、よろしく…」
「よっしゃ決まったな。依田と加藤マジで入ってくれてありがとな」
「ねえねえ!依田ちゃん舞也ちって呼んで良い?てか、別に敬語じゃなくても良いよ?」
「お好きに呼んで頂いて構いませんよ。…大丈夫です、敬語の方が喋りやすいので」
「そ?なら良いや!よろしくねー舞也ち!」
依田ならあんまし女子って感じしないからそんな文句言われねえだろ
「ええー?!舞也様までこの班なの?クラスの美形集めましたって班じゃん!麻倉アタシと班代われし」
「代わんねえわ、つか舞也様って」
「舞也様はアタシらの王子だから!…しょーがない。まーいっか、変に他の班にバラけてもやだし」
「そだねー鏡本くんと同じ班が良かったけど別に鏡本くんがいる所に行けばいいだけだし」
「いや自分の班の仕事しろよな」
「知ってますぅー終わったら行きますしぃー」
良かった、何とか穏便に班決めできたな
まさか依田が舞也様って呼ばれるほど人気とは思わなかったが何とかなった
「五人無事に決まって良かったね肇」
「圭…お前も真面目に班決めしてればこの前で班決まってたわ」
「僕も真面目に決めてたよ」
「真面目にねえ…」
「麻倉ぁ!俺らの衣孤眞たそを取りやがって!」
「そうだそうだ!お前には川岸さんいんだろ!!」
「つうか女子ども。俺らの班にも入ってくれよ、男しかいねえぞ!俺らの班は!どうなってんだ!」
「そうだそうだ!五人全員男だぞ!!」
「って事は加藤に代わっても結局男だけじゃねえか」
「見た目は女子だから問題ない」
「喋ったら普通に男だろうが」
「喋らせないからノープロブレム」
「いや無理があるだろ」
「じゃあアタシらは女子だけで班組もうよ」
「いいねー!そうしよそうしよ」
「できるのかそれ…?」
男だけ、女だけの班とか流石に駄目だろ
それでOKなら俺らの苦労は何だったんだ
すると何やら紙を切って何かしていた担任が小さい箱にそれを入れクラス全体に聞こえるように声を出した
「お前らー、もうそろそろ時間だから班が決まらなかった奴らとそこの男子だけで固まった班はこのくじ引きで班決めろー」
「えー?!くじ引きぃ?」
「先生もな、お前らの為を思って生徒自身で班決めさせる事にしたんだ。言っただろこれ以上は先生困るって」
結局、班が決まりきらなかったやつらは次の授業が始まる時間になるギリギリで担任が即席で作ったくじを引いて決める事になりブーイングが凄い中くじ引きが行われた
最初からくじ引きにしてれば早かったんじゃねえのか
くじ引きが終わり班が決まった瞬間、チャイムがなり担任が全てをやりきった疲れた顔で班決めの紙を持って教室を出て行った
……先生、お疲れ
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