第11話【宇宙人】【3】




《次のニュースです。先日未明、行方不明になっていた滝たかしさん53歳が何者かによって内臓を全て取り出された遺体となって発見された事件ですが、今日の午前1時半頃の通報により現場付近に不審人物が目撃され、警察はその人物を事件の重要参考人とし……》




「…は?」



見かけたばかりの顔がテレビに映っている




「肇!ほら見なさい!夜中あんたが家出てた時間に不審者がいたってニュースでやってるわよ!まったく…!何もなかったから良かったものの、もし事件の犯人に会ってたらどうするつもりだったの!!…ちょっと?聞いてるの肇?」


「このおっさん…あの時の」


「それにしても怖いわねー、内臓が全部抜かれてたって!本当に肇に何も無くて良かったわ。もう夜中に外になんて出るんじゃないわよ?電車が無いからってタクシーで帰って来たりなんかして!良くお金があったわね?」


「内臓が無いぞうってか!ガハハ!」


「何言ってんのアンタは!会社遅刻するわよ!肇も早く家出ちゃいなさい!」



テレビの音が遠くなる

母さんと父さんの話も良く聞こえない





あのおっさんはずっと行方不明だった…?


しかも会った前日にはもう死んでいた…?



じゃああのおっさんは





何者だったんだ…?







放課後

部室に俺は日向を呼び、全員が集合した


集まった俺達は悔しそうな日向を除き、三人困惑した顔をしていた。何も知らない栞は一人、良く分かってなさそうだったため、詳しく説明をしてから話し始める



「朝のニュース見たか」


「見たよ。衝撃的だったね」


「ウチも見た…あのおじさん、もう亡くなってたって…じゃあ会ったあのおじさんは誰だったの?」


「ずびっ…まさか宇宙人様ご本人だったとは…!サイン貰っておけば良かった…!ううっ」


「まだ宇宙人本人って決まった訳じゃないだろ。つかお前顔きったねえな拭けよ、おらティッシュ」


「でも、やっぱり宇宙人だったんじゃない?」


「ニュースの人物と瓜二つだったしね」


「って事は日向は宇宙人相手に凄んだって事になるぞ?」


「伝説になるね」



顔の穴という穴から汁をだし悔しがる日向にティッシュを差し出し拭かせる


本当に何だったんだあのおっさん



「ていうか菊子ちゃん!何で一人で行っちゃうの!危ないでしょ?」


「危ないのは分かってたって!もう麻倉に散々言われたよー!」


「栞、もっと言ってやれ」


「っでも!今回はオレのために宇宙人探しをして頂いてありがとうございましたっす!」


「お、日向が復活した」


「苗字呼びなんて今更水臭いっすねー!オレ達の仲じゃないっすかー!篤って呼んでくださいっす!オレもさん付けやめるんで!」


「まあそれなら篤って呼ぶけど、さん付けやめんのはマジでそうしろ」


「菊子ちゃんさんはもうマジでやめて」


「はい!菊子ちゃん!」


「…何かその呼び方もやだ」


「そんな!じゃあどうすれば!?」


「名前呼びムカつくからウチも篤って呼ぶ」


「なんすかそれ!?でも嬉しいっす!」



川岸に理不尽な事を言われショックを受ける篤。…いつのまにか親友枠にされた気がするが気のせいだろう


つうか何か大事な事忘れてるような…



「兎にも角にも終わって良かったよ」


「まあ、そうだな。謎しか残ってねえけど」


「本当に宇宙人はいたりしてね!」


「しおりんってそういうの信じるんだ?」


「栞ちゃんも宇宙人の事を信じてくれるんすね…!」


「ちょーしのんなよ篤」


「菊子ちゃん、何かオレに当たりキツくないっすか?!」


「別に麻倉に迷惑かけたからアンタにキツイ訳じゃないし!」


「そうだとは思ってたよ、川岸さん」


「なんで肇くんに迷惑かけたらオレに冷たくなるんすかーー!」



変な言い合いをする二人を眺めながら考える


何だ?何を忘れてる?




「そうだ。話は変わるんすけど、いっすか?」


「何だよ?」


「ある知り合いの兄妹がいるんすけど。その兄妹が何か、何かが戻ってくるらしくて」


「はあ?何だそりゃ、何かって何だよ?」


「まずはその兄妹が誰かを言いなよ、篤」


「…いや、やっぱまだ良いっす」


「そこまで言っといて、お前な」


「ちゃんと話して良いって許可貰ってくるっす!」


「あそ、ならいいわ」



本当に突拍子も無いやつだな




俺は最近、毎日が楽しかった


前はいつもと変わらない毎日をただダラダラと適当に過ごしていた。

それなりに楽しかったとは思っていたが、

何処か退屈していたから


過去に来てからこんなにも楽しい。



そのせいなのか、

大事な事を忘れてしまっていた。



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