第9話【宇宙人】【1】
ドッペルゲンガーの事件から数日
俺達は今日もまた部室に集まっている
最近は川岸も良く入り浸るようになった
「麻倉〜!今日も何もなくて暇そうだねー」
「川岸来たのか、この前みたいな事が頻繁にあってたまるかよ」
「まっそりゃそうだよねー」
「菊子ちゃんはあれからどう?また変な事とか起きてない?」
「ぜんっぜん!元気だよ〜」
川岸が来るようになってからはループの話が部室内でし辛くなってしまい最近は特に調べられてはいない
まあ何も知らない川岸は悪くないから家帰ってから調べればいいだけだが
ほぼ毎日のように来るため超解部に入る気なのかと聞いてみたが、川岸は特に部活に入る気は無いらしい。
部に用が無いなら何しに来てんだか
「ま、無事解決して良かったな」
「うん!皆ほんとありがとね!今日はさ
やっと完成したから、この前のお礼持ってきたんだ」
「え!?別にお礼なんて良かったのに!」
「じゃあ栞は貰わなくて良いんだな。俺は貰えるもんは貰っとくわ」
「肇、少しくらい遠慮しなよ!」
「いーの!気にしないで貰って!はい!」
「わあ!可愛いって、え!?っこれって…!クリサンセマム・ロゼ!?」
川岸が鞄から取り出し、差し出してきたのはネットや雑誌でよく見る人気急上昇中のブランドのポーチだった
その名もクリサンセマム・ロゼ
菊と薔薇の花をモチーフにした柄が特徴的で、一見レディース物が多く見えるがメンズ物も幅広く展開していて、芸能人がこのブランドの物を身に付けているのをよく見かける
「うっわ、よく見る柄してる」
「凄いブランド物だね、本当に良いの?」
「うん?だってこれ試作品だし、ママが高校生ならこれが良いでしょって言ってくれたから」
「…まさか川岸の母さんって」
「デザイナーだけど?」
「ただのデザイナーじゃねえだろうが…」
「クリロゼの非売品のポーチ…勿体無くて使えないよ」
「ええ!?ウチがデザインしたやつなんだから使ってよー!」
「これ菊子ちゃんがデザインしたの!?」
「へえ、凄いね川岸さん」
「え、川岸がこれ作ったのか?マジかすげーじゃん」
「えへ、いつかはママのお仕事をウチが継ぐんだー」
「そうなんだ!菊子ちゃんならできるよ。こんなに可愛いポーチ作れるんだもん!」
「本当に良いデザインだよ、大事に使わせてもらうね。川岸さんの事応援しているよ」
「そう?んふふ、嬉しい!ウチ頑張るね!」
「おー頑張れ、センスあるしいけんだろ。
目薬とか入れんのにでも使うわ、サンキュ」
鞄に入れた目薬って行方不明になりやすいのってなんでだろうな
「ポーチ大事に使うね!ありがとう!」
「もー!そんなに喜んでもらえると嬉しすぎるよー!…もっと褒めてもいいよ?」
「ポーチも確かに可愛いけど菊子ちゃんはもっと可愛い!!可愛いの天才!」
「んふふ!ウチ天才?カワイイ?」
川岸はそう言われ髪の先を指で巻きながら嬉しそうに笑っていて、栞はそんな川岸にほぼ可愛いしか言ってない語彙力の少ない褒め言葉で褒め倒している
可愛いの天才ってなんだよ
会話をしていると栞が俺の持っているポーチを見て何かに気づく
「あれ?肇のポーチだけ何か柄多くない?
ほら、この浴衣でよく見る柄」
「あ?本当だ。川岸、何で俺のだけ少し違うんだ?」
「え!?あ、いや深い意味は無くて、ちょっと良いデザイン思いついちゃったからたまたま一つだけ柄が違うっていうか本当にそんな意味なくて、えっと!」
「突然慌ててどうした?」
「…菊と麻の葉柄」
「? 何か言った?鏡本くん」
「何も言ってないよ」
何慌ててんだこいつ?
そんな話をしていると突如
部室の入り口から物凄い音がした
ノックもせずにドアをぶち破る勢いで
誰かが入って来る
「超常現象を募集してるってポスターを見たんすが!!ここが超解部っすか!!?」
「うお?!…いきなり何だよ?」
「元気な人が来たね」
「良かった、助かった…」
「よく分かんないけど大丈夫?菊子ちゃん」
部室全体に響き渡るような声で入って来たのは前髪をピンでとめた大きな猫目が特徴的の身長の低い男子だ
こいつ、前の時クラスの奴にふざけて宇宙人って言われてた奴じゃねえか?たしか俺が、二年の時に一緒のクラスだった筈。といっても今は初対面って事になるけど
名前は…何だっけか
あだ名のせいで名前が思い出せねえ…
「あ、日向くん」
「あー!栞ちゃんさんじゃないすか!!」
そうだ、
って栞ちゃんさん?何だその呼び方
「栞ちゃんさんも超常現象解明部の部員だったんすか!ええー!ずるいっす!
早く言ってくれれば良かったっすのに!!」
「何だこいつ…声でけえな」
「私、日向くんとそんなに話した事ないよね?」
「テニス部の日向じゃん。宇宙人って言われてる」
「え日向くんってそんな事言われてるの?」
「んー、別に悪口とかじゃないっぽいよ?
本人が宇宙人宇宙人ってうるさいらしくて。そこからのあだ名らしーよ?本人も喜んでるみたいだし」
「変わった人なんだね」
「あー!鏡本圭くんさんに、川岸菊子ちゃんさんじゃないすか!ここって美形の人しかいないんすか?!どっちみちオレはこの部活動には入れないって訳っすね!」
「…本当に変わった人だね」
「てか、菊子ちゃんさんやめろし」
「あれ?でもキミは普通っすね?」
「急に失礼だなおい」
「いや!変な意味じゃないっすよ!ご不快にさせてしまったのなら申し訳ないっす」
マジで何だこいつ…
丁寧なのか雑なのか分かんねえ口調だし
テンションについていけねーわ…
栞は同じクラスみたいだし、まだ分かるけど
よく圭の奴平然としてられるな…
「二組の日向篤くんだよね?とりあえず座って。ここに来た理由を聞きたいな」
「お言葉に甘えて失礼するっす!率直に言うんすけど、皆さんは宇宙人って信じるっすか?!オレこの前宇宙人を見たんすよ!」
「宇宙人だあ?胡散臭え…」
「信じてないんすか!?!超常現象解明部の部員なのに?!」
「だから声でけーよ」
「肇ってそういうの信じないよね」
「信じないっつうか見てみねーと分からねえだけだよ。宇宙人なんか見た事ねえし」
「麻倉って現実主義なんだ?」
「そうでもねえよ」
「信じないなんて勿体無い!!宇宙は凄いんすよ!太陽系ですら未だ解明しきれない謎があって、もしかしたら太陽系外惑星にはオレ達とは違う生命体が存在するかもしれないのに何でそんなに平然としていられるんすか!!もっとこう、そわそわとしてじっとしては居られなくならないんすか!!?くそっ!スポーツ推薦で入学さえしていなければオレがこの素晴らしい部活動に入っていたというっすのに…!!」
日向は信じられないといった顔で俺に宇宙の話をしてくるが早口で捲し立てるように話すために聞き取る事ができない。
とりあえず何か悔しそうなのは伝わった
なるほど、こりゃあだ名は確かだわ
「早口で何言ってっか分かんねーよ」
「マジやばいじゃんこいつ」
「…話を戻してもいいかな?宇宙人を見たって言ってたけど、何処で見たの?」
「いや一人で騒いで申し訳ないっす…えっと
この前いつもの様に夜にUFOウォッチングをしてたんすけど、駅から少し歩いた所のIT系っぽい会社の近くに公園あるじゃないっすか、あそこで宇宙人を見たんすよ!」
「お前いつもそんな事してんのかよ」
「しっ!麻倉、また話飛ぶから黙ってたほうがいいって」
「成程、もう少し詳しく話せる?」
「っす!えっと大体夜中の1時頃だったと思うんすけど」
「んな夜中にウロチョロすんなよな…」
「気づいたら何でか遅くなってるんすよ!」
「たしかに深夜に歩くのは危ない。あまり遅くなるのは気をつけるべきだね…日向くん、
続けていいよ」
「その時その公園の側を通ったんすけど
ドーム型の遊具の近くで何かが光ってて凄い目立ってたんすよ!それが気になってわくわくしながら近づいたら、突然光が消えて何か人影が走って行ったんすよ!!」
「そんな変な現象に嬉々として近づくなよ」
「私もそういうのは危ないと思う…」
「それで走り去っていった姿が宇宙人のグレイに良く似てたんすよ!ほら、これ急いで撮ったからブレてるっすけど証拠っす!」
そう言って日向が見せてきたスマホの画面には銀色の人の形をしたものが走っているようにも見える。
だけど、これは…
写真撮るの下手すぎんだろ
「ブレすぎじゃね?指の影入ってるし」
「暗い所撮ろうとするとこうなるよね」
「これは…、確かに人の形はしているけど」
「日向、お前写真撮んの下手だろ?」
「し、失礼っすね!!急いで撮ったからこうなってるだけで普段はもう少し上手く撮れるっすよ!ほら!」
「いやブレてんじゃねえか」
全員に写真の事を指摘され、図星を突かれた様子の日向が顔を真っ赤にしながら他の写真を見せてくる、多少マシになったようにも見えるがそんなに変わらないブレ具合だった
「っそれより!どうっすか!宇宙人は
やっぱり実在するんすかね!?」
「現場を見てみない事にはなんともね」
「じゃあ今日見に行かないっすか!?」
「いいよ」
「ほんとっすか!?やったー!!」
「またこのパターンかよ…」
この前のドッペルゲンガーの事ならまだしも宇宙人とか絶対ループに関係ないだろ…
圭のやつ、ただ自分の気になった事を調べたいだけじゃねえか。
俺は何を考えてるか分からない圭と
快諾されて喜ぶ日向をただ見ていた。
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