第4話【ドッペルゲンガー】【1】
入って来たのは同じクラスのギャルだった。派手な奴らとたまに連んでいるのを見るが彼女はその特殊すぎる見た目からかクラスから少し浮いていた、特定の誰かと一緒にいるのはあまり見た事ない
名前は確か、
「超解部に来てくれてありがとう。確か同じクラスの川岸菊子さんだよね?そこの椅子に座って良いよ」
「そーだよ。噂の鏡本圭じゃん、マジでイケメンだね。タイプじゃないけど〜 てか、もう名前覚えてんの?やば天才じゃん」
「まあ流石に他のクラス全員は把握してないけどね、もう知ってくれてるみたいだけど改めて、僕は鏡本圭。よろしく」
「俺は麻倉肇」
「私は娃川栞っていうんだ!よろしくね川岸さん」
「鏡本に麻倉ね、りょ。えっめっちゃカワイイ子いんじゃん!ねえねえしおりんって呼んでいい?」
「え、いいよ!私も菊子ちゃんって呼んでいい?」
「全然いいし!連絡先交換しよ!SNS何やってる?」
何か俺達と栞への態度違いすぎじゃないか?
スマホ片手に会話をする二人、栞も嬉しそうに川岸と話している。前は女子とそんなに仲良くしてるのを見なかったから、俺を助ける為に必死になってくれてたんだな…
まあ、そうは言っても俺が何回も死んでるって実感無いんだよな…
連絡先の交換が終わった様子の川岸が椅子に座ると、圭は話を切り出す
「早速だけど、もう一人の川岸さんって?」
「何かー、最近友達がウチを街で見かけたって言ってたんだけど、ウチその日は家でのんびりしてて外に何か出てないんだよねー」
「その友達の見間違いじゃねえの?」
「ウチもそう思ったんだけどー、何かその日だけじゃない感じで?よく分かんないんだけど別の日にも街でウチに会ったって子がいてさ、でもウチその日も街に行ってないしー」
「何だそりゃ…よく似た別人とかじゃないのか?」
「は?だってウチだよ?こんなオーラばちばちのカワイイ女の子のウチみたいな子が二人もいる訳ないじゃん」
「なんつー自己肯定感」
「あと街だけじゃないんだよねー、違う日にもウチ確かに学校休んだ筈なのにその日ちゃんとウチは学校来てたらしいし」
川岸の話によると出掛けていない筈の日に外で目撃されていて、他の場所にいる筈が別の場所で見つかっているらしい。
普通ならただその友達が誰かと見間違えているだけだとは思うが、学校を休んだ日に何故か出席してるってなると明らかにおかしい。
それに今時珍しいこの姿見間違えるのか?会話を続けていると圭がぽつりと一言放った
「…ドッペルゲンガーか、本当にいるんだね」
「ドッペルゲンガーってもう一人の自分で、会うと死ぬって奴か?本当にいる訳ないだろ」
「そう、そのドッペルゲンガー。どうだろう?意外といるかもよ?」
「何か、怖いね会ったら死んじゃうなんて」
「ウチ死ぬの?ヤバいじゃん」
「会ったらだろ。てか本当にいるかも分かんねえのに怖がってどうすんだよ…」
「肇、こういうのは分からないから怖いんだよ。それよりも、会ったら死ぬは何を意味するのかな」
「鏡本くん、それってどういう事?」
「だってそうだろう?もう一人の自分に出会ったら死んでしまう。じゃあ出会うは何に該当するのか、目が合ったら?それとも近くに寄った時点でアウトなのか、それに残ったもう一人の自分はどうなるの?」
「そっちが本当の自分になるとかじゃないのか?」
「まあ、そうなるよね」
「そういえば確かに、会った後の事は考えたことないかも」
「よく分かんないけど、どうなの?捕まえてくれんの?」
「捕まえてどうすんだよ」
「え、ウチがもう一人いるとか双子じゃん?ウチお姉ちゃんしかいないから妹欲しかったんだよねー」
「ドッペルゲンガーを妹にする気かよ…」
「いいよ。探してみよう」
「おいマジか…」
川岸は良い事を思いついたかの様に、指を立てて言う。
俺の周り、
何か自己主張の強い奴しかいなくないか…
圭は川岸のドッペルゲンガーを捕まえてほしいと言う話を軽く快諾した。そんな圭に俺は目の前の川岸に聞こえないように小声で話しかける
「おい圭、OKしてどうすんだよ。俺らのループと何も関係ねえじゃねえか」
「肇はそう思う?僕は少しは関係あると思うよ」
「何処がだよ?」
「もう一人の自分。それがもし、並行世界のもう一人の自分だとしたら」
「ループの事が何か分かる可能性がある…?」
「そういう事」
「ねえ二人で何コソコソ話してんの?」
「何もねえよ」
「作戦会議をちょっとね」
手に持った紙パックのミルクティーを飲みながら川岸が小声で話す俺達に訝しげに声をかけてきてくる。それを適当に誤魔化し、これからどうするのかを決める
まあ実際見てみねえ事にはな…街に行くか
「とりあえず、現場検証かな実際に見てみない事には分からないし」
「そうなるよな」
「でも菊子ちゃんが会っちゃったらどうするの?」
「ウチまだ死にたくないんだけど?」
「川岸、俺らにも連絡先教えてくれ。何かあったら連絡できるように」
街中を探すとして、はぐれたら連絡できないため本当にドッペルゲンガーが存在するかは不明だが万が一に備えて連絡先を交換し合う事にした俺はポケットからスマホを取り出す
「えー、しょうがないなぁ、良いよ」
「僕は教えてくれるのはメールアドレスだけで良いよ」
「何で?」
「あまりスマホ見ないんだ。調べ物をする時くらいしか使わないから」
「圭は連絡しても返ってくんのマジで遅いからな」
「マジ?意外」
「電話も出ないで終わるから二人にもメールアドレスしか教えてないしね、SNSもやってないし」
「やば、お爺ちゃんじゃん」
「鏡本くん、流石に2日以上返事が来ないのは気になるから気をつけてほしいな…」
いや、ほんとにな。前から思ってたけど万が一のためにも電話番号くらい教えといてくれよ
川岸が圭のスマホをチラ見すると驚く
「うわ!壁紙も初期設定のまんまとか本当にいるんだ」
「はは、善処するよ。恥ずかしいからあんまり見ないでね」
「全然照れてなくない?」
「だからお前顔にでてねーんだって」
そんな会話をしながら連絡先を交換し終えた俺らは早速、ドッペルゲンガーが現れたとされる街へ行ってみる事に。
学校からそう遠くない街はまだ夕方という事もあって、まだ人通りがあり人で溢れていた。
ドッペルゲンガーを目撃したとされる現場に着いた俺たちは辺りを見渡すが、川岸の様な人影は何処にも見当たらず探し回っていたが時間だけが過ぎ、探し疲れてしまい近くのカフェに入っていた
「収穫ゼロじゃねーか」
「まあそんな簡単には見つからないよね」
「お、これ美味しそう。しおりん、これ一緒にたのも!」
「うん!あ、でもこれも美味しそうだよ!」
「ほんとだ!じゃあ二つ頼んでシェアしよ!」
「お前ら自由だな…」
何のために来てると思ってんだよ、まったく…
俺は飲み物を飲みながら、届いたスイーツを嬉しそうに食べる二人を見ながら呆れる
まだ明るいけど、じきに暗くなるよな。
二人共楽しそうだしどうすっか…
そう思っていると圭も同じ事を考えたのか女子の二人に帰宅する事を促した
「僕達は良いとしても女の子の二人はこれ以上遅くなると危ないから、今日はこの位にしとこうか」
「えー?まだそんな遅くなくない?」
「暗くなったら危ないから、少し休憩したら帰ろうね」
「鏡本お父さんみたーい」
「まあまあ菊子ちゃん、鏡本くんは心配してくれてるだけだから。…あ、じゃあまた明日集まって探そうよ!」
「僕もそう思ってたよ」
「今日はこの位にして明日また待ち合わせようぜ」
「…わかったぁ」
カフェで休憩した俺達は、楽しんでいたのか少し残念そうにする川岸をなだめ、明日の休みに待ち合わせをする約束をしてそのまま解散した。
その夜、家に居た俺は疑問に思っていたことを聞くため栞に電話をした
「なあ栞、川岸って前にも会ったか?」
『ううん初めて。菊子ちゃんとは一度もクラス被らなかったし、そもそも部室に私達以外の人なんて一回も来たことないよ。やっぱり今回は本当に何かが違うのかも』
俺が知らないだけかと思ってたけど、やっぱり栞も会った事無かったんだな。
って事はマジで今回は何かが起こるかもしれないって事か…
「じゃあマジでドッペルゲンガーが居る可能性があるかもしれねえのか」
『そうかもしれないね、明日頑張って捕まえようね』
「そうだな、圭の言ってた通りこれからは前には無かった事が起こるって事だ。もしかしたら栞、お前も何か危ない事があるかもしれない」
『そう、だよね。何か実感わかないなあ』
「何にせよ気を引き締めねえと」
といっても何も起きないかもしれねえけど
そんな事を考えてた時
『…ねえ肇、もしも何かがあったら。
何かが起きたら、私の事…守ってくれる?
私もこれからも肇を助けるから…だから』
「っ…!」
普通に会話をしていた栞の声色が急に変わり震えた声で栞は話す
『私、頑張ったんだよ。何度止めても肇は死んじゃうから、私頑張って助けてたの…ごめん、何も覚えてない肇にこんな事言ったって意味ないよね。…肇は気にしないで』
栞は何も変わらず笑ってたから、俺は気にせず過ごしてた。でも何度も、何度も時を繰り返していて、栞の心が無事な訳がなかった。そんな事も気づかずに前と変わらず接してしまっていた。
俺の事を何度も救おうとしてくれた栞に
何も気にしない。なんて
そんな事できる訳ないだろ。
「っそんな事ねえよ!」
『っ、でも』
「栞、俺を何度も助けてくれて本当にありがとう」
『!』
「だから今度は、俺も栞を守るから」
俺に何ができるかなんて分からない。
でも
何でもすぐ我慢して、人に頼らないで
それでも笑おうとする栞が初めて
自分から人に守ってほしいと頼った
俺はそんな栞を守りたい
『…何があっても助けてくれるの?』
「おうよ、俺の体育の成績良いの知ってんだろ。すっ飛んで行くわ」
『っふふ、そうだね…ありがとう。肇』
大袈裟に茶化す俺に穏やかになった声はいつものように笑うから、俺は胸を撫で下ろした
これからどうなるか、なんて分からねえ
分からないけど、俺達…いや、栞の為に
このループ現象を絶対終わらせてやる
『ねえ、肇。頑張ろうね』
「それは明日の事と俺らの事どっちの事だ?」
『どっちも!』
そのまま暫く雑談をした俺らは
会話を終わらせ電話を切り、
明日に備え早めに眠りにつく。
明日またあの街に行く、果たして
本当にドッペルゲンガーは存在するのだろうか
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