クリストファーの怒り
時は少し遡る。
クリストファーはフィオナと共にディアマン王国へ向かっていた。イーサンは後から合流するらしい。
まだ日差しが強い時間帯なので、クリストファーは黒いフード被り太陽光を遮断している。
「王宮までもうすぐです!」
フィオナの言葉にクリストファーは強く拳を握る。
(オフィーリア……! 待ってろ! 絶対に救い出してやるからな!)
ディアマン王宮は騎士達で固められていた。
「奴が来たぞ!」
1人の騎士の声により、皆一斉に魔力でクリストファーを攻撃する。しかし、クリストファーは自身の炎の魔力でそれらを全て打ち消した。
「無駄だ! オフィーリアはどこだ!?」
低く冷たいその声には怒りが込もっている。
「さあ? どこだろうね?」
クリストファーにとって聞き覚えのある声がした。
「ダンフォース……!」
眉間に皺を寄せ、冷たい目のクリストファー。怒りを露わにしている。
「まあどのみち2人揃って死ねるのだから、今会えなくともいいじゃないか」
冷たく蔑んだように笑うダンフォース。
「貴様!」
クリストファーの目は赤く光、炎をダンフォース目掛けて繰り出す。ダンフォースも負けじと水を繰り出して何とかクリストファーの炎を打ち消す。
「まあそう怒るなよ。2人仲良く一緒に死ねるんだ。悪い話ではないだろう? 1人無惨に殺されたジュリアナとは違って……」
スッと冷たく水色の目を細めるダンフォース。クィンシーとその息子であるクリストファーへの恨みを隠そうともしない。
「それに、他の奴らももお前の相手をしたがっているんだ」
ダンフォースの後ろから現れた者達を見て、クリストファーの眉間の皺が更に深くなる。
「過激派が集結したわけか」
忌々しげに吐き捨てるクリストファー。
「フィオナ、お前は下がっていろ。奴らの魔力は人間の比ではない」
「……分かりました」
クリストファーはフィオナを下がらせ、目を赤く光らせる。
「過激派も今ここで全員粛清だ!」
クリストファーはダンフォースや過激派のヴァンパイア達目掛けて大きな炎を放った。しかし、いかんせん敵の数が多いのできりがない。更にディアマン王国の騎士達の相手もしなければならず、苦戦を強いられていた。
その時だ。
「クリストファー様!」
「イーサン……!」
イーサンが王宮に到着した。彼もクリストファー同様、太陽光を遮断する為に黒いフードを被っている。そしてイーサンは大量の軍を引き連れていた。
「アメーティスト王国軍及び、サフィール帝国軍、そして穏健派のヴァンパイアの方々の協力が得られております! クリストファー様からのお手紙の内容も上手く伝達出来ていたようです!」
「そうか……!」
クリストファーはフッと笑う。
クリストファーは腐っているディアマン王国を何とかしようと、アメーティスト王国とサフィール帝国に協力を持ちかけていたのだ。この2国はディアマン王国の軍事圧力の被害に遭っており、ディアマン王国への恨みは強い。更にヴァンパイアと友好的な国なので、穏健派も協力してくれることになったのだ。
「クリストファー様、ご安心ください。ディアマン王国の民に手を掛けるようなことはありません。あくまでディアマンの王族及び過激派を粛清する為の軍でございますから」
「ああ。……イーサン、お前はフィオナを頼む。俺は今からオフィーリアの元へ向かう」
クリストファーは真剣な目である。
「あの、オフィーリア殿下の居場所は分かるのですか?」
フィオナは少し心配そうである。
「何となく気配がするからな」
「左様でございますか。……オフィーリア殿下のことをよろしくお願いします」
「ああ」
クリストファーはそのまま気配を頼りにオフィーリアの元へ向かった。
(オフィーリア……! それに他に3人の気配もする! 恐らく継母と異母姉達だろう! ……こっちか!)
クリストファーは迷うことなく地下倉庫へ向かっていた。そして倉庫の扉を開ける。
「オフィーリア!」
「なっ! ヴァンパイア!」
クリストファーの姿を見たドロシーはギョッと目を見開く。ブリジットとキャロラインも忌々しげにクリストファーを見る。しかし今はそんなことを気にしている暇はない。
地下倉庫は既に水没しており、オフィーリアが沈んでいるのが見えた。クリストファーは迷うことなく飛び込む。
「オフィーリア!」
「クリス……トファー……様」
苦しそうなオフィーリアである。彼女は身体中傷だらけであった。
(待ってろ! 今助けるから!)
クリストファーは炎の魔力でオフィーリアの足枷を焼き切る。そして腕を縛られている縄と魔封じの腕輪を軽々と外した。
(こんなボロボロになるまで……!)
クリストファーはオフィーリアを横抱きにして水面まで上がり顔を出す。
「オフィーリア、もう大丈夫だ」
「クリストファー様……」
泣きそうになるオフィーリアを見て、クリストファーは抱き締める力を強めた。
「オフィーリア、大変な時に側にいてやれず、こんなことになってすまない」
「気にしないでください。私は……もう大丈夫ですから」
そう言うオフィーリアの表情は、どこかスッキリとしていた。
そしてすぐにフィオナの無事を聞かれ、フッと笑う。
(そうだ、オフィーリアはそういう奴だったな)
そしてクリストファーはドロシー達3人に冷たい目を向ける。
(オフィーリアこんな目に遭わせた奴ら……どう始末してやろう……)
その目には怒りが込もっていた。
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