強くなったオフィーリア
(うう……ここは……?)
真っ暗な場所でオフィーリアは目を覚ます。
(そうだ、フィオナは無事!?)
オフィーリアは起こった出来事を思い出し、周囲を見渡すがフィオナはいない。今いる場所がどこかの地下倉庫だということだけは何となく分かる。階段の上に扉があるからだ。
(とにかくここを出ないと)
オフィーリアは立ち上がり動こうとするが、手は後ろに縛られ足枷もつけられていることに気付く。更に足枷は大男でする持ち上げるのが困難だと思われる大きくて重そうな石に繋がれていた。
(一体何なの!?)
その時、倉庫の扉がゆっくりと開く。オフィーリアは入って来た人物を見て銀色の目を大きく見開く。
「あら、もう目を覚ましていたのね。そのまま死んでくれたら良かったのに」
「随分とマシな見た目になってるじゃない。
「随分と分不相応な良い生活をしていたみたいね。でもそれも今日で終わりよ」
入って来たのはドロシー、ブリジット、キャロラインの3人だった。
(どうしてお
オフィーリアの呼吸は浅くなる。背中には冷や汗が伝う。
ドロシー達はゆっくりと階段を降り、オフィーリアの元へやって来る。
一瞬、かつて3人から受けていた陰湿な嫌がらせを思い出すオフィーリア。しかし、その直後にクリストファーの姿が思い浮かぶ。それにより、落ち着きを取り戻すオフィーリア。
「
オフィーリアは真っ直ぐ3人を見据える。もうディアマン王国にいた頃の、ただ嵐が過ぎるのを待っているだけのオフィーリアではない。
「何て生意気な女なの!?」
「きゃっ」
ドロシーはオフィーリアの態度が気に入らなかったらしく、彼女を扇子で力いっぱい殴った。それによりオフィーリアは倒れてしまう。
「地べたに這いつくばっている方がお似合いよ!」
「くっ!」
ブリジットはオフィーリアの腹部を執拗に蹴る。
「闇の魔力を持っていたとしても、魔封じの腕輪を着けられていたら意味ないわね!」
「あっ!」
キャロラインは後ろに縛られているオフィーリアの手を思いっきり踏みつける。
「何で……ぐっ……闇の……魔力のことを……?」
オフィーリアはドロシー達の暴力に耐えながら聞く。
「ダンフォース・アンフェールとかいう
ドロシーは心底蔑んだ目である。
(何故……ダンフォース様が私に闇の魔力があることを知っているの!? まさかあの時!)
オフィーリアはダンフォースの手を振り払った時のことを思い出した。
(つまり、ディアマン王国と組んでクリストファー様を排除しようとしているのね)
「忌々しいあの女の娘である貴女と共にあの
ドロシーはこれでもかというほど目を吊り上げてオフィーリアを扇子で殴り続ける。
「あんたもヴァンパイアと暮らしていたのだから人間以下の獣と同然よ!」
「あんたもヴァンパイアもみんな死んでしまえばいいのよ!」
ブリジットとキャロラインもオフィーリアに暴力を振い続けた。
次第にオフィーリアの心が冷めていく。
(この人達は……何なの? 一方的にクリストファー様やヴァンパイアのことを侮辱して……。お母様が気に入らないからと私にこんなことをして……。今までは我慢していたけれど……許せない! こんな人達、家族でも何でもない!)
オフィーリアの銀色の目は鋭くなる。
「何も……知らない癖に……クリストファー様を侮辱するなんて許せない! 貴女達の方が……醜悪な下等生物よ!」
臆することなくドロシー達を見据える銀色の目。
「何ですって!?」
ドロシーはキンキン声でオフィーリアを力一杯扇子で殴る。
「お母様、もう終わらせましょう」
ブリジットが冷たく低い声でそう言う。
「……そうね」
ドロシーも少し冷静になったようだ。そして3人は階段の上まで登る。
(あの3人……出ていくのね)
オフィーリアはほんの少しホッとする。
しかし……。
「貴女はここで死になさい!」
ドロシーがそう叫ぶ。そして水魔法を持つドロシーとキャロラインが勢いよく水を繰り出す。
(え……!)
地下倉庫を浸水させてオフィーリアを溺死させるつもりなのだ。足枷が大きな岩に繋がれているのは確実に溺死させる為。
(でも……こんなところで死ぬわけにはいかない!)
オフィーリアは必死に足枷を外そうとする。しかし水位はどんどん上がっていく。
「醜いほど抗うのね! 無駄な抵抗はやめなさい!」
ドロシーは蔑んだ笑みでオフィーリアを見る。
そしてついに水位はオフィーリアの背丈を超える。
(う……! 苦しい……! クリストファー様……!)
苦しみもがくオフィーリア。その時、ザバーンと大きな音がして、何かが水の中に飛び込んで来た。
「オフィーリア!」
何と飛び込んで来たのはクリストファーだった。
「クリス……トファー……様」
水の中で上手く話せないオフィーリア。
クリストファーの目が赤く光る。そして彼の手からは炎が発せられる。炎の魔力は水の魔力と相性が悪いが、クリストファーはヴァンパイアなので元々魔力が高い。
クリストファーは炎でオフィーリアの足枷を焼き切る。そしてオフィーリアの腕を縛っている縄を解いた。魔封じの腕輪も軽々と外す。そしてオフィーリアを横抱きにして水面に顔を出す。
「オフィーリア、もう大丈夫だ」
フッと微笑むクリストファー。
「クリストファー様……」
オフィーリアはほんの少し泣きそうになっていた。
「オフィーリア、大変な時に側にいてやれず、こんなことになってすまない」
クリストファーはオフィーリアを抱き締める力を強めた。
「気にしないでください。私は……もう大丈夫ですから」
少しスッキリした表情のオフィーリア。
「そうだ、フィオナは? フィオナは無事ですか?」
オフィーリアはハッとフィオナのことを思い出した。
「ああ、イーサンと一緒だから大丈夫だ」
「良かった……」
クリストファーの言葉を聞き、オフィーリアはホッとする。
(クリストファー様も来てくれたし、フィオナも無事。大丈夫、もう大丈夫だわ)
オフィーリアは深呼吸をして反撃モードに入った。
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