第11話:月下の夜の日に

倒したサウンドドラゴンの解体を終えた尉達は先へと進む。

 そして最下層に着いた尉達は夢の国ドリーム・ワールドの門の前に着く。


「さてと。ようやく、ここが最下層の宝物庫だ」


 尉がそう言うとマーズが両手で扉を押すが、びくともせず溜め息を吐く。


「ダメよパパ。この扉、全然動かないわ」


 すると尉はナイフ型に変形した銀の鞭で自分の右の手の平を少し切る。


 そして自分とほぼ同じ身の丈の位置に刻まれた魔法陣に切った右の手の平を当てて、目を閉じ超古代語で呪文を唱える。


イセヴィア神々の王・アザトース・アンデュオ神々の副王・ヨグ=ソトース・セビャムン神々の神官・ニャルラトホテプ・ビュフェア我こそマグナディン神器をジュクスレ受け取りしイージャッツ勇者なり


 尉の呪文が終えれと扉に描かれた模様が白銀に輝き出し、ゆっくりと扉が奥へと動き出す。


 扉が開くと宝物庫内には超古代文字で書かれた本の山と様々な形をした未知の機械類が大量に置かれていた。


 財宝で埋め尽くされていた第一の宝物庫とは違い、旧支配者達の残した未知の知識に思わずウラノスが言葉を漏らす。


「うわぁ!凄い‼最下層の宝物庫はまさに知識の保管庫ね」


 すると尉は山の様に積まれた書物の一つを手に取り、ページを開く。


「ほぉーーーーーっ‼これは⁉プラズマ駆動の原理と設計図だ!やったぞ!これで宇宙工学が飛躍的に上がるぞ‼」


 子供の様にはしゃぎ興奮する尉、そしてジュピターは肩に付けるであろう小型キャノン型の武器、折り畳み式の合金の槍、ナイフ、シュリケン、さらに腕に付ける収納式のブレイドに興味深々に見る。


「ほへぇーーーーーーっ!この武器、見た事もない合金で作られているわ‼」


 そんな宝物庫の奥にある祭壇には宝石を入れる程の小さな美しい装飾で作られた箱が置かれていた。


 それに気付いた尉はすぐに駆け足で箱まで近づき目を輝かせながら、その箱を手に取る。


「これだ‼聖遺物!神器!アーク契約の箱だ‼」


 尉はじっくりとアークを調べていると、フッとある事を思い出しマーキュリー達に言う。


「そう言えば、ヴィーナスが自分の血が付いた手でマナを触ったら神器と同化したよな。皆!試しにアークに自分の血を付けてくれ」


 突然、尉からの提案にマーキュリー達はキョトンとする。


「え⁉今、ここで?」


 マーキュリーからの問いに尉は真面目な表情で頷く。


「ああ、またゾディアックの襲撃に備えて誰かと同化させた方がいいと思って。無論、まだ未知な所はあるが、何かあればパパが対処するから」


 尉の勇者として父親としての眼差しにマーキュリー達は真剣な表情で頷く。


「「「「「「「「「分かったわ!パパ」」」」」」」」」


 そして、すでに神器と同化しているヴィーナスを除いて全員が人差し指の先を針で刺し、滲み出た血をアークに付けて行った。


 一人一人、血を付けて行ったが、誰もヴィーナスの様に神器と同化する現状は起きず、最後に残ったプルトは生唾を飲む。


「わらわが最後か。ではパパ上、行きます!」

「ああ」


 尉が見守る中でプルトがアークに自分の血を付けるとヴィーナスの時と同じ様に神々しく光り出す。


 そして光が消えるとプルトはヨグ=ソトースの様な異形の姿に変身する。変身した姿にプルトは少し驚くが、瞬時に底から湧き上がる魔力に笑顔で興奮する。


「凄い!凄いのだ‼パパ上‼今まで感じた事もない底なしの魔力量にわらわは興奮しとる‼」


 尉達は変身したプルトの姿に関心する一方でセトラはプルトの姿に驚いていた。


「ねぇ、尉!あれって何なの?」


 尉は笑顔で両肩を軽く上げ、さぁっと言う雰囲気を出して答える。


「まだ憶測だが、恐らく神器は未知の力を秘めた遺物じゃない。特定の人間、義娘むすめ達に力を与えるアイテムだろぉ」


 尉からの答えにセトラは右手で下顎を触りながら納得する。


「なるほどね。じゃ尉から聞いた他の神器も?」

「かもな」


 その後、尉達は書物と機械類をマジックボックスやマジックバックにしまう。そして祭壇に刻まれた超古代文字の暗号を解読し、上に戻る抜け穴を見付け地上に戻るのであった。



 神器の一つ、契約の箱アークと旧支配者達の残した遺物を回収した尉達は見付けた抜け穴を使い第一の宝物庫まで戻る。


 そしてネプチューンは早速、財宝の吟味をしていた。


「ふーーーん、この腕輪はいいわね♪あ!この指輪もいいわね♪」


 ネプチューンは色々な財宝を手に取りウキウキで眺めている隣でセトラもウキウキで財宝を吟味していた。


「うーーーん、このネックレスもいいわね♪あら!こっちのティアラもいいわね♪」


 一方の尉達は見付けた書物の解読と翻訳をしていた。


「なるほど!このプラズマ駆動は核融合を必要としない水素と窒素、マグネシウム、炭素、へリュームを錬金術と融合魔法で掛け合わせる事でエネルギー反応を起こしてプラズマを生み出すのか」


 尉は興奮した表情で禁呪、『イースの大いなる種族の知識眼ワッティア・ラルナッイン』を使い書物を読んでいた。


 またマーキュリーはは巻物の形をした五つの縦式ダイヤルを付けた旧支配者の遺物をいじっていた。


「ふぅーーーーーむ。この遺物は何に使うのかしら?」


 そう言いながらマーキュリーは右腰にあるベルトと一体化したマジックバックから世各国から発掘された旧支配者達の遺物が記録された図鑑を開き調べる。


 マーキュリーはページをサーっと流す様に開いてとイレムにあるエル・ナッティ遺跡で1859年に壁の隠し空間で発見された壊れた『多次元物理移動装置テレポートシステム』の写真を見て、自分が手に持っている物と酷似している事にマーキュリーは驚く。


「ねぇ!ねぇ!パパ‼この遺物、完全なテレポート装置よ!」


 そう興奮しながらマーキュリーは尉に本の写真と手に持ってる遺物を尉に見せる。


 尉は今、やっている解読の手を止めてマーキュリーが見せる物を見て、驚愕する。


「なっ‼まさか!・・・これは⁉・・・テレポートシステムか⁉」

「やっぱり!パパ‼これってテレポートシステムよね?」


 すぐさま尉はマーキュリーから遺物を受け取り、じっくりと調べる。


「んーーーーーーーっ確かに図鑑に載っている写真と似ているが、調べてみないとまだ断言できないぁ。もし本当ほんとうにテレポートシステムだと、これは大発見だ‼」


 それを聞いたマーキュリーは目を輝かせ大喜びする。するとネプチューンとセトラが満足した笑顔でゆっくりと現れる。


「ごめんなさい、皆!ママと夢中になっちゃって♪財宝選びが終わったわよ♪」


 笑顔でネプチューンが声を掛けると尉達はハッとなり、一同に返事をし遺物と書物をマジックボックスとマジックバックに入れ、立ち上がる。


「よし!じゃ行くとしますか」


 尉がそう言うとマーキュリー達は笑顔で頷き、上へと目指さすのであった。 



 地上に戻った尉達はピラミッドの外に出る。


 外は既に夕暮れで天井にあいた穴から射す赤オレンジ色の太陽光が黒いピラミッドを幻想的に輝かせていた。


「ほほぉ!昼間と違って夕暮れのピラミッドは美しいなぁ」


 尉はそう言うと皆や野営道具をジープに乗せ、ピラミッドを後にするのであった。


 時は経ち青白い満月と星々が輝く満点の夜、尉達は一日滞在したオアシスの町に着き、再び休息の為に一日滞在する事となった。


 長老が用意された宿のキッチンでウラノスがおたまで煮立っている大きな鍋の中を笑顔で鼻歌を歌いながらゆっくりと回していた。


「よし、いい感じ♪さてと味は?」


 ウラノスは小さな皿を手に取り、シュールズ・アッズヒラマメのスープを少しおとまで入れて口にする。


「うん♪よし。こっちはどうかな?」


 そしてウラノスは下にあるオーブを開けると大きなオーブン皿に乗ったヒラメを使ったコズバレイヤ魚のオーブ料理が白い湯気を立てていた。


「うん♪こっちもOKっと♬パパーーっ!皆ぁーーっ!夕ご飯が出来たわよぉーーーっ!」


 ウラノスの呼び声で二階から尉達が笑顔で降りて来る。そして皆は夕食の用意を行い、それぞれの席に座る。


「それじゃ、いただきます」


 尉が手を合わせて言うとマーキュリー達も続く様に手を合わせて笑顔で言う。


「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」


 その後、尉達は食事を終えマーキュリー達は使った食器を片付け風呂に入り、疲れを取るとパジャマに着替えて眠り入るのであった。


 一方の尉は一人、マーキュリー達とは違いタオルと替えの下着を持って外に出る。そして誰もいないオアシスの畔で着ていた服とズボンを脱ぎ、綺麗に折り畳みカウボーイハットを置く。そしてオアシスへと入った。


「んぐぅーーーーーーーーーーーーーーーっ。義娘むすめ達は悪いが、パパは一人で水浴びだ。しかし、久しぶりだなぁ、オアシスで水浴びをするなんて」


 座禅をして腰まで水に浸かる尉は満天の夜空を眺めながら笑顔で言っていると後ろから誰かの気配を感じ振り向く。


「あら、尉。私も水浴びだけど、背中を流しましょうか?」


 尉の後ろに現れたセトラが笑顔で問うと尉は少し顔を赤くしながら頷く。


「あ、ああ。勿論、頼むよ」


 セトラはクスっと笑い、着ているビキニのドレスと装飾品などを全て脱ぎ裸になる。そしてドレスと装飾品などを綺麗に畳みオアシスへと入る。


 そしてセトラは正座をする様に身を低くし持っていたタオルを濡らし彼の背中を洗い始めるのであった。


 セトラに自身の背中を洗われている尉は初めて若い女性と裸の付き合いに心臓の鼓動を高めるが、ゆっくりと深呼吸をして彼女に日常的な問いをする。


「なぁセトラ、お前って趣味はあるか?俺は釣りが好きでね」


 尉の問いにセトラは笑顔で答える。


「私は果物を育てるのが趣味で教育係だった乳母がよく私に色んな果物の育て方を教えてくれて。最初は育てるのが難しかったけど、育てた果物を収穫した時の達成感が嬉しくて、それがきっかけで趣味なったの」


 彼女の趣味を聞いた尉は笑顔で関心する。


「へぇーーっ意外だな。王族って何か豪勢な遊びをしていると思っていた」

「そうね。私以外の親族や友達の貴族達はセネトやなぞなぞ、それにタロット占いをしていたわ」

「タロットか・・・うっ‼」


 すると尉はタロットの言葉によって脳裏に何か嫌な記憶がフラッシュバックし、頭を抱える。


 そんな尉にセトラは少し心配する。


「尉、大丈夫?何か嫌な事でもあったの?」


 尉はハッとなり振り向き、右手で軽く左右に振る。


「あ、ああ。大丈夫だ。心配してくれて、ありがとうセトラ」


 尉の背中を洗い終えたセトラは笑顔で彼の右隣に座り直す。そして尉と共に満天の夜空を眺める。


「ねぇ尉、水浴びの後はどうするの?」

「そうだな・・・」


 すると尉は夜空を見上げるのやめ、ゆっくりとセトラの方を向く。


「なぁ、セトラ」

「ん、何?」


 セトラは笑顔で尉の方を向くと突然、尉が彼女にキスをするのであった。


 キスが終わると突然の事にセトラは少し放心状態となるが、すぐにハッとなり顔を赤くしながら尉に問う。


「じょッ!尉‼一体何でいきなりキスを⁉」


 尉は明るく爽やかな笑顔で答える。


「ああ、すまないセトラ。でも、この後はお前と一緒に寝たいんだ」

「えぇ⁉それって私を抱きたいって事を?」

「ああ。やっぱり、いきなり過ぎてダメか?」


 尉は少し困った表情で問うが、セトラは目をウルウルとさせながら満面の笑みで首を横に振る。


「うんうん。そんなことはないわ。好きよ尉」

「俺もだよセトラ」


 そして二人は美しい月明かりの下、濃厚なディープキスをしながら熱く激しい夜を過ごすのであった。 



あとがき

本作の恋愛描写は自分なりにストレートに描いています。これはハリウッド映画の冒険作品をイメージモデルにしていますのでサクサクと行きます。

第一章は映画「インディ・ジョーンズ:失われたアーク聖櫃」と「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」がモデルとなっていまして、また今回の話に登場した旧支配者達の遺物はSF映画「プレデター」に登場する異星人ハンター、プレデターが使う武器やアイテムをモデルにしています。

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