第2話【わたしに比べてケィちゃんは、】
——に、比べてケィちゃんは、いえ、こんなことで感じる優越感なんてわたし、人として失格よね。ケィちゃんはまだ25なんだし、わたしの歳になるまであと4年あるし。
この思いは、『この悦楽をぜひともその身体で味わって欲しい』という思いやりあふれる布教活動なの!
そう、ケィちゃんはまだ処女。それに比べてわたしはすでに経験者。くふふふふふ。そんなケィちゃんはいまもツンとした表情のまま。その表情がたまらない!
『どんな〝感じ〟になるか、〝ご経験〟をわたしにしてくださらなくてけっこうです』なんてカワイイこと言っちゃってもうっ。なんていうのか言うことが処女っぽい。いえ、それは失礼ね、女の子っぽい。
そんなケィちゃんにわたしからのアドバイス。まずはこのコの性格に合わせて真面目に。
「わたしたちには身分の違いがあることになってるけど、その〝身分〟って、どうやって見分けるの?」
「身分は身分です。妃殿下は妃殿下で、わたしはお世話がお役目、『侍女』と呼ばれる使用人です」
「いまひとつ伝わらなかったかな? それはわたしが妃殿下に見える服を身にまとっていて、あなたがいかにも使用人という感じのメイド服を身にまとっているから見分けがつくのではなくて?」
「それは、そうですが……」
「着ている服を全部脱ぎ捨て裸になっちゃったら、どちらが妃殿下でどちらが使用人かなんて見分けがつかなくなるって思わないかしら? わたしたちが身につけているものが一切無くなっている状態のお話しをしているんだけどな、」
それを言うと上手く無難に切り返せるような〝反論的なこと〟が思いつかなかったのかケィちゃんは黙り込んでしまった。よぉし、じゃ、次だ。
「——まぁ、どんなカンジになるか、〝感じ方〟はなかなかことばにして伝えられないものだけど、そうね、今日は少し趣向を変えてのお話し。きっと近い将来あなたのためにもなる」
「そんなお話しを続けていてわたしが日常的におかしな妄想の
「
「どういうことでしょうか?」
「〝心構え〟くらいはね、ってことなんだよねっ!」と、そう言ってあげる。
「〝心構え〟、ですか?」といかにも嫌〜そうなオーラを発散させつつ一応お話しは聞いてくれるみたい。〝立場〟を使っちゃってごめんね〜。わたしは〝妃殿下〟、そんなヒトと日常的に話しをしなきゃなケィちゃんは、どちらかと言えば聞き役の立場になっちゃうよね。だけど女としてこのお話にはいやおうなく引きずり込まれるのよ、ケィちゃんっ。
わたしは始める。
「そっ。わたしたちは〝女〟。少し気取った言い方をすれば〝女性〟。〝性は女〟ってこと。
「……確かに、そうかもしれませんけど……、でも女としてのお話しは解るとしてどうして妃殿下に殿方の身体の、その……」
「いーから続けて続けて」
「え?、その、」
「こうしてことばにして表す行為がもう〝わたしたちの興奮〟につながっていく。妄想も
「あの、その……」
もーっ、ケィちゃんったら顔真っ赤っか。ここはこのコの背中を押しちゃえ。
「言いたいことはなんでも言ってみてっ」
「では、」とケィちゃんは前置きする。その決心が僅かも鈍らないようわたし、大げさにうなづく。「——妃殿下のおっしゃる〝
そう来たの⁈ その発想は無かったな、けどそのほっぺの色は正直だよ。いったいケィちゃんのその妄想の中身はなんなのかな?
……たしかに、厳粛なる階級社会の中、身分の高い
それと、もうひとつは厳粛なる階級社会で少し気の弱い身分の高い
ハッ、と我に返り〝でもそこまで口にしたらさすがにわたしという人間の人格が〟——という思考が。
「まさか、妃殿下はお
はぃ?
「なんでそういう方向性なの⁈」
「いま、妃殿下が、あのその、『誰であっても自然に興奮できる』とかなんとか、
「あっ、違う違う。わたしが訊くから殿下がしょうがなく答えただけ」
正直わたしの身体で
いまから振り返ると〝どの女の裸でも勃ちます〟と言ってるってことで、すこしひどいけど、わたしがおかしなことを訊くからこういう返事になるだけで、逆に『あなた以外の女性では勃ちません』とか言ってたら完全にペテン師決定だ。
「えっ⁉ 殿下にそんな失礼なことを?」
「ケィちゃん、〝夫婦の夜の生活〟って、身体に一糸もまとわないだけじゃなくて心にも一糸もまとわないってことなんだよ。そこにはただ赤裸々があるだけ。〝失礼〟なんてことばが入り込む余地は無いの」
「そ、そうなんですかっ、」
ふふ——、ケィちゃん否定して来ない。真面目なのに。間違いなく興奮してきてる。もちろんソレを指摘してケィちゃんを辱めるような真似はしない。わたしが待っていたのはこのノリなんだから。よぉし、もっとジラそう。ジラせばジラすほど興奮はもうとめられなくなるんだからね——
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