昔いじめていた幼馴染が魔王に覚醒して、歪んだ感情をぶつけられる
かなえ@お友達ください
プロローグ
「待ってたよぉ……」
黒くて禍々しい色のデカい椅子に座っているのは、その椅子が全く似合わない普通の少女だった。
少なくとも、見た目は。
「……」
剣の先を少女に向けながら、少し後退る。
見た目に似合わない威圧感。背筋に嫌な汗が走っている。それは彼女が「魔王」であることをひしひしと伝えていた。
しかし、それとは別の感情が先程から頭の中に渦巻いている。
『ねえ、待ってよぉ……』
記憶が蘇る。成長しているからか、少し違うものの顔、声、喋り方。
信じたくない。信じたくはないが、認めざるを得ないほどそれは一致していた。
『なんで、そんなこと言うの……?』
死んだと思っていた。俺はその仇を取るためにここまで戦ってきた。
「ノエル!? 大丈夫!?」
隣の仲間の声が耳に入るが、思考でいっぱいの頭には届かない。
「ルシェ……?」
まるで溢れるように口から出た名前。
目の前ですさまじい威圧感を出しながら不敵な笑みを見せる少女。
彼女の特徴は、俺の幼馴染……
そして、魔物の襲撃で命を落とした、
「はず」の……
「そうだよ……ふふ、びっくりしたぁ?」
そうして目を細める少女を見て、俺の頰に涙が伝った。
「あっ!」
大きな声を上げながら俺は飛び起きる。次の瞬間に俺は自分の奇行にびっくりしつつ、辺りを見渡す。
そこには見慣れた質素な壁や窓がある。いつもの宿だ。
夢……いや、あれは記憶だ。
「ルシェか……」
あれは初めてのことではなかった。定期的にあの時の記憶を思い出しては、朝悪夢から目覚めるように飛び起きるのだ。
前に会った時、これの犯人はルシェだということを教えてもらった。
ルシェは俺に定期的に記憶を見せてくる。きっと俺のしたこと、するべきことを忘れないようにしているのだろう。
……そうであってほしい。愉快犯とかだったら笑えない。
「分かってるよ。ルシェ」
そうポツリと呟き、汗で濡れている服を着替えてドアの前に置いてある剣を取りドアを開ける。
今日もいつも通り経験値集め。無意味だと思ってしまいそうになっても俺はやるしかない。
「次は本気を出させられるといいんだが」
再び呟きながら、俺は宿の廊下を歩くのだった。
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