第11章

第104話 お別れ会

「マリカル。わたしたちは帰るけど、あなたはどうする?」


 プランガル王国のことはティナが聞いてくれ、雑ではあるけど結構書き写しててくれた。あとは帰ってから纏めたらいいわ。


「……わたしは……」


 どうやら決めかねているみたい。まあ、頼りは自分の占い(ダウジング)だけ。そんなあやふやな道標に頼るのは自分でも不安なんでしょうよ。


 ……やらせるほうも鬼よね。それだけ切羽詰まってんのかしら……?


「じゃあ、一緒に来ない? まず拠点を決めて聖女の情報を集めたらいいんじゃない? 見落とさないための人員なら余計にそうしたほうがいいと思うよ」


 マリカルの占い(ダウジング)も気になる。もう少し一緒にいたいわ。


「い、いいの?」


「構わないわよ。ねぇ、ティナ?」


「いいんじゃない。マリカル、山菜とか獣を探すの出来るって言うし」


 占い(ダウジング)、そんな使い方があるんだ。探し物屋とかやったら儲かりそうね。


「じゃ、じゃあ、一緒に行かせて」


 ってことでマリカルを連れて帰ることをルクスさんに伝えた。


「そうですか。帰りはルーグに送らせますね。あれにもいろいろ経験させたいですから」


 出張ってことかな? まあ、商人は移動が多いとかマルケルさんが言ってたっけ。ほんと、大変よね。


 それから三日後、用意が出来たとのことでお別れ会をすることにした。


「キャロが見送られる立場なのに何で料理してるのよ?」


 それは何でかしら? まあ、好きな食材使っていうし、好きなもの作って楽しみましょうよ。


 お世話になったマリーレさんやラレア様(お弟子さんも)、ルーランさんたちも呼んでもらい、お別れ会を楽しんだ。


「キャロルさん。ありがとうございました。いろいろ学べて楽しい時間でした」


「わたしこそたくさん学べて楽しかったです。いつかコンミンドにも来てください。発表会でも開きましょう」


「発表会?」


「皆が作った服を発表する会です。技術発展するにはやはり見てもらうのが一番ですからね。優秀作品には賞とか与えてもいいかもです」


 もっと女性服が広がるならお洒落も発展するでしょうよ。わたしもいろんな服を着てみたいしね。


「……発表会ね……」


「まあ、あくまでもわたしの勝手な妄想なんで流してくれて構いませんよ。やろうとしたらいろいろ大変でしょうからね。やるんならまず内部でやってみるといいですよ。問題点が出て来るでしょうからね」


 競争はいいことばかりじゃない。嫉妬や不正を生むこともある、って聞くしね。まずはルクゼック商会内でやってみるといい。それで価値があると判断したなら発表会に移ったほうがいいと思うわ。


「キャロル。これを」


 ラレア様がやって来て本を差し出してきた。なんです?


「医学書よ。人体に興味があるなら読んでみなさい」


「あ、いや、医学書って貴重なものですよね? わたしに渡していいんですか?」


 これ、きっと高額よ。金貨うん十枚もするものだわ。知らないけど。


「貸すだけよ。あなたの魔法で写したら返しに来なさい。あと、あなたの見解も書いてくれると助かるわ。ゴブリンの解体書、とても興味深かったからね。でも、無闇に人を解剖したりしないようにね」


「さすがに人は解剖したくないですよ」


 わたしは別に解体新書を作りたいわけじゃない。健康に長生きしたいだけ。病気や怪我に備えたいだけなのよ。


「でも、人の解剖は医学の発展には必要だと思いますよ。人なんて簡単に死んじゃいますからね。人を知り、怪我を知り、病気を知れば人は百年は生きれると思います。あ、食事も大切ですね。食べすぎ飲みすぎは健康の大敵ですから」


 わたしもよく食べてよく動かなくちゃならないわね。今生は長生きしたいし。


「あなたは本当に変わっているわね」


「そうですか? わたしとしてはやりたいことをやっているだけなんですけどね」


 いや、前世の常識が出ちゃえば変わり者に見えても仕方がないか。前世の記憶があるってのも面倒よね。


 カルブラで出会った人らと最後のおしゃべりをし、次の日は朝早く出発する。


 馬車は四台も列なり、護衛のサナリクスが引き受けてくれたみたい。


「今回は儲けられるほどの仕事だったんですか?」


 銀星ともなればもっと高額な依頼を受けられたんじゃないの?


「儲けられる仕事だったし、楽な仕事だったな」


「美味しい仕事すぎて太っちゃったわ。コンミンドまで歩かないとね」


 ナルティアさん、確かに太ったような気がする。どんだけ食べたのかしら?


 旅はこれと言ったトラブルもなし。この世界、どんだけ平和なのかしら? 冒険者、何で廃業にならないのかしらね? 謎だわ。


 道もよく馬車移動なので歩いて五、六日の距離も三日でコンミンドに到着してしまった。案外、近いものね。確かにお使いクエストとしては手頃だったわね。


「お帰りなさい。結構長い旅になりましたね」


 コンミンドのバイバナル商会に着くと、マルケルさんが迎えてくれた。


「長旅じゃなくて長居でした。クルスさんたちにはお世話になりました」


「ふふ。困惑するクルスの顔が見れなくて残念です」


 困惑してたか、クルスさん? いつも平常心でいたけど。


「まあ、なんにせよ。無事、帰って来れて何よりです。依頼、完了です」


 あ、依頼を報告して本当の終了だったわ。


「はい。ありがとうございます。また何かあったら依頼してください!」


 わたしたちの初依頼、完了です!

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