第24話 天才と友情
テレビでは日本列島に近づいている台風のニュースが流れている。
「木村、須藤。ちょっといい?」
僕はミクに聞こえないところで二人と話をすることにした。
「えっとー、ミクの話どう思う?」
二人ともまだ気持ちの整理がついていないようで、言葉を発せずにいる。RPGとかしたことないから想像力が足りないんだと思う。
僕の考えをゆっくり話して二人に考える時間を与えることにした。
「じゃあ、何か話す気になったらでいいから、俺の考えを聞いて欲しいんだけど、」
僕は念の為、健二郎のチェンジリング説を噛み砕いて話したり、本気で調査するとなれば学校側に協力者が必要になるだろうということを話した。
「その上で、ミクって学校でどういう扱いになってるか分かったりしないか?」
「さすが、ハッシー。やっぱ数学満点は違うわ」と須藤が言った。
「いや、全然、妄想っていうか、考えてるだけで」
「うちらバカだから全然わかんないけど、できることは何でもするから。ね?なっち」と木村が言ってくれた。
「当たり前じゃん!」
なっちとは須藤のことらしい。
何か重要な情報が得られたわけではないけど、二人が本来の明るさを取り戻してくれることが何より大事なことだと思った。
ここで木村がさらに口を開いた。
「うちらが今まで仲良くしてたのって、本当のミサじゃないってことなのかな?」
僕もそれは不思議に思っていた。二人が何も違和感なく仲良くしていたということは、ミクが中に入っている状態でも、林田ミサに感情はあったということだ。
「俺もそれは、気になってる。でも、林田って別に普通にしゃべるし、笑ったり泣いたりしてたんだよな?」
「そうだよ。確かにうちらみたいにわーわーするタイプじゃないけど、うちらのバカみたいな話、笑いながら聞いてたし、勉強教えてくれたりしてたし、あのミサが嘘なんて思えない」
須藤も続く。
「マジそれだよ。確かにクールビューティだけど、そこがミサの魅力っていうか、でも、友達思いだったよ。ゼッタイ」
この二人は小学生から仲が良かったはずだ。そういう意味では疑いようのない情報ではあるが、そうなると林田の一つの体にミサとミクの二つの感情が入っていたということになるのか?それだとミクの体だけが宙ぶらりんになりはしないか?正直、僕なんかは見た目がミサだった場合中身がミクでもわからないんじゃないかと思ってしまう。それぐらい他人の中に他人の精神が入るなんてことは考えられない。何かもっと大きな勘違いをしているんだろうか。
「えっとー、違うと思ったら聞かなかったことにしてほしいんだけど、ミクがミサのフリをするって、」
「ちょっとハッシー!!ミクがいない!!」
しまった。目を離してしまった。
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