第7話 天才と図書室
そうか。準備室か。
わかった。アイツの目的は準備室だ。移動教室の時に使う特別な教室には大体準備室がある。理科の実験道具を片付けるのも、提出物を運び込むのも準備室だ。しかし、肝心の準備室の中がどうなっているかということは僕にはわからない。何があるんだろうか。普通に考えたら、理科なら実験道具、学年全体の提出物ぐらいか。
いや、待てよ。
もしかするとテストの問題があるんじゃないか?僕たちが今やっているように、いや、それよりもより正確にテストの問題を知ることができる。それをアイツが狙って何度も準備室に出入りする機会を探しているということか。なんてヤツだ。どうりで毎回テストで満点取れるわけだ。動機はそんなところか。
しかし、動機があっても被害が報告されていない以上、事件にもなっていない。先生と一緒に入っているわけだし、テストの問題を探したりもできなさそうだ。アイツならうまく先生をだましたりもできるんだろうか。
何より重要なのは証拠だ。どれだけ推理をしても証拠がなければ、とぼけられて終わりだ。きっと先生と仲良くしているのは保険の役割もあるんだろう。しかし、逆にいえば証拠さえ見つければアイツをギャフンと言わせられるのは間違いない。こういう時に証拠になりそうな物はなんだろう。殺人をしてるわけでもないから凶器があるわけでもないし、なにか道具を使うような犯行でもないか。
とりあえず現場の参考になりそうだし、見てみよう。図書準備室では全然参考にならないとは思うが、準備室の感じだけでも見ておいて損はなさそうだ。
僕は立ち上がってドアに向かって静かに歩き出した。一応図書委員の生徒が貸し出しカウンターに座っているし、テスト前だから普通に勉強している生徒も何人かいる。怪しまれてもめんどくさそうなので、ここは慎重にいかなければ。ここから確認した感じ、どうやら図書委員は居眠りをしているようだ。
「ちょっと、ハッシー?」
「しーー」
「何してんの?」
健二郎なら僕を止めるふりをして一緒に来るだろうという僕の予想は見事に的中した。男子の秘密の扉に対する好奇心を止められるヤツなどいない。仮に怒られることになっても健二郎も共犯だ。
ドアの前までたどり着いた。こういうドアは鍵が閉まっているのが普通かもしれないが、なんとなく、鍵が開いてそうな気配がした。中に先生がいたりすると怒られるかもしれないので、ここからはより慎重にいかなければ。
ドアノブに手をかけ、ドアノブを回す時のキュルキュルという音が鳴らないように、静かにドアノブを右に回した。うまく九〇度ぐらい回せた。やはり鍵がかかっていないようだ。後ろに健二郎の息遣いを感じる。それに押されるように、ゆっくりと、まずは少しだけドアを押し開ける。
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