犠牲無くして明日はない

ゆづ

プロローグ

2月10日金曜日、天気は晴れ。


退屈な日常を繰り返すだけ...それだけのはずだった日々。


あと1ヶ月とほんの少しで華の高校二年生、平凡な日常を過ごす一般人、銀鏡雪しろみゆきは...


「ッ!!はぁ...はぁ...!...」


ただ走っていた。


恥も外聞もなく全力で、ただ必死に息を荒げながら。


喉から血の味が口いっぱいに広がってくる。


足が重く今すぐ止まり歩道だろうがお構いなしに倒れ込んでしまいたい欲求にかられるが....


それは許されないし、絶対にしてはいけない。


相模さがみ高校に通うための通学路を走り抜けたその先には、脳裏に焼き付いて離れないあの時と全く変わらない信号が在った。



―その信号は赤を告げる警告音を響かせる。



「ッ!!」


止まれッ!と脳が警告を響かせる、人としての理性が足を一段と重くする。


それでもッ!止まってはいけないッと止まればもう二度と...


―確実に会えないんだ。


右足を強く地面に叩きつけるように踏み込んで、脳内の警告をぶち壊すように歩道に飛び出した。


「......ッ!」


苦し紛れ、苛立ちまじりに叫んだその言葉は、トラックの音にかき消され.....ー



銀鏡雪の体は、軽々とトラックに弾き飛ばされた。




(空....青ッ....)




―今日銀鏡雪は、人生二度目の自殺を行った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る